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婚約破棄された令嬢、辺境で「半分を見捨てる決断」をする 〜全員を救えない世界で、彼女は最善を選ぶ〜  作者: 結城ヒナ


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第17話 できない女

 翌日も、私は同じ場所に立っていた。


 同じ時間。

 同じ川。

 同じ作業。


 だが。


 同じではない。


 ——視線。


 それが、変わっている。


 私はそれを認識する。


 昨日までは、拒絶か無関心。

 今は。


 観察。


 測られている。


 私はスコップを手に取る。


 構える。


 掘る。


 昨日と同じ動き。


 体重を乗せる。


 角度を調整する。


 ——入る。


 土が崩れる。


 量も増える。


 改善されている。


 私はそれを確認する。


 だが。


 遅い。


 周囲と比べて。


 明確に。


 私は理解する。


 それでも、続ける。


 繰り返す。


 動作を。


 修正を。


 その時。


「……随分と遅いな」


 声がする。


 横から。


 振り向く。


 男が一人。


 昨日もいた顔。


 腕を組み、こちらを見ている。


 表情は、軽く笑っている。


 だが。


 そこにあるのは。


 明確な評価。


 私はそれを受け取る。


「効率が悪い」


 彼は言う。


「それでよく来る気になったな」


 言葉。


 軽い。


 だが、刺さる。


 私はそれを分析する。


 事実か、否か。


 ——事実だ。


 私は遅い。


 それは否定できない。


「改善している」


 私は答える。


 正確に。


 彼は笑う。


「昨日よりはな」


 その通り。


 私は頷く。


「継続すれば、最適化される」


 予測を述べる。


 だが。


 彼は肩をすくめる。


「その前に、使えねえって判断されるぞ」


 その言葉。


 私は受け取る。


 意味を理解する。


 評価の問題。


 結果が出る前に、切られる。


 それは。


 合理的ではない。


 だが。


 現実には起こる。


 私は黙る。


 その間に。


 カインが近づく。


「無駄口叩いてる暇あんなら手動かせ」


 短く言う。


 男は笑いながら離れる。


「へいへい」


 空気が戻る。


 作業が続く。


 私は再び掘る。


 動作を繰り返す。


 だが。


 先ほどの言葉が、残る。


 ——使えない。


 その評価。


 私はそれを検討する。


 現時点では、正しい。


 貢献度は低い。


 効率も悪い。


 ならば。


 改善するしかない。


 私は動きを変える。


 観察する。


 周囲の動きを。


 比較する。


 角度。

 力の入れ方。

 タイミング。


 真似る。


 試す。


 調整する。


 だが。


 完全には追いつかない。


 その事実。


 私は受け入れる。


 そして。


 続ける。


 やがて。


 昼になる。


 作業が止まる。


 人々が集まる。


 食事の時間。


 私は一歩下がる。


 どうするべきか。


 判断する。


 その時。


「……食うか」


 声。


 振り向く。


 中年の女性が立っていた。


 腕を組み、こちらを見ている。


 鋭い目。


 だが。


 どこか、落ち着いている。


 ——観察している。


 私はそう感じる。


「問題ない」


 私は答える。


「必要な栄養は摂取済み——」


「そういう話じゃない」


 即座に遮られる。


 私は止まる。


 彼女はため息をつく。


「いいから来い」


 それだけ言う。


 私は一瞬考える。


 そして。


 従う。


 それが適切だと判断する。


 彼女の後についていく。


 簡易な休憩所。


 人々が座り、食事をしている。


 私は端に立つ。


 どうするか。


 迷う。


 その時。


「座れ」


 彼女が言う。


 私は従う。


 座る。


 木の上に。


 硬い。


 だが、問題ではない。


 彼女が何かを差し出す。


 パンと、スープ。


「食え」


 短く言う。


 私は受け取る。


 観察する。


 簡素な食事。


 栄養としては十分。


 私は口に運ぶ。


 味を確認する。


 ——問題ない。


 だが。


 周囲の視線。


 それが、集まる。


 私はそれを感じる。


 評価。


 測定。


 そして。


 少しだけ。


 別の感情。


 それを、私は分析する。


 だが。


 完全には分からない。


「……あんた」


 女性が言う。


 私は顔を上げる。


「本気でやる気あんのか」


 問い。


 直球。


 私は答える。


「ある」


 事実として。


 彼女は少しだけ目を細める。


「じゃあ、続けな」


 短く言う。


「途中で逃げる奴は、いらねえ」


 その言葉。


 私は受け取る。


 意味を理解する。


 条件提示。


 私は頷く。


「逃げない」


 それだけ。


 彼女はそれを見て、少しだけ笑う。


「ならいい」


 それで会話は終わる。


 だが。


 その後。


 周囲の空気が、わずかに変わる。


 ほんの少し。


 だが、確かに。


 私はそれを感じる。


 そして。


 理解する。


 ——私は、まだ“できない女”だ。


 だが。


 ここにいてもいい存在にはなった。


 その差。


 それを。


 私は初めて、認識した。


 そして。


 静かに、思う。


 ——ならば。


 次は、“できる女”になる。


 その目標。


 それを。


 初めて、自分で設定した。

第17話までお読みいただきありがとうございます。


ここで主人公は初めて「評価される側」としての現実に立たされました。

そして同時に、“まだ受け入れられていないが、排除もされていない”という位置にいます。


この中間地点が、これからの成長の土台になります。


次話では、主人公が初めて「自分から工夫する」行動を取ります。

ここで小さなカタルシスが入ります。


少しでも続きが気になった方は、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


ここから、少しずつ“手応え”が生まれていきます。

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