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婚約破棄された令嬢、辺境で「半分を見捨てる決断」をする 〜全員を救えない世界で、彼女は最善を選ぶ〜  作者: 結城ヒナ


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第15話 それでも、私は

 その日の作業が終わった後も、私はその場に残っていた。


 人々は帰っていく。


 道具を担ぎ、言葉を交わし、笑いながら。


 昨日とは違う空気。


 完全ではないが。


 少なくとも。


 動いている。


 私はそれを見送る。


 何も言わずに。


 ただ、観察する。


 やがて。


 最後の一人が去り。


 その場に残るのは。


 私と、あの男だけになる。


「……帰らねえのか」


 彼が言う。


「もう終わりだぞ」


「分かっている」


 私は答える。


 だが、動かない。


 彼は少しだけ眉を寄せる。


「なら、なんだ」


 問い。


 私は、少しだけ考える。


 そして。


 言う。


「確認している」


「何を」


 短い問い。


 私は視線を川に向ける。


「自分の誤りを」


 その言葉。


 彼は一瞬、沈黙する。


 そして。


「……そうか」


 それだけ言う。


 否定も、肯定もない。


 私は続ける。


「私は、これまで正しい判断をしてきた」


 事実。


「それは、今も変わらない」


 私はそう思っている。


 だが。


「それでも、結果が伴っていない」


 言葉にする。


 明確に。


「つまり」


 一度、言葉を切る。


 思考を整理する。


「私は、“何か”を見落としている」


 結論。


 それは。


 認めたくないものだった。


 だが。


 否定できない。


 彼は腕を組む。


「で?」


 促す。


 私は彼を見る。


 そして。


 初めて。


 自分から、言う。


「教えてほしい」


 その一言。


 空気が、少しだけ変わる。


 彼の目が、わずかに細くなる。


「……は?」


 短い声。


 疑い。


 当然だ。


 私は続ける。


「あなたのやり方を」


 明確に。


「観察し、理解し、再現する」


 それが目的。


 合理的な手順。


 だが。


 彼はしばらく黙る。


 そして。


「……ずいぶんと上からだな」


 呆れたように言う。


 私は考える。


 その言葉の意味を。


 だが。


 完全には理解できない。


「必要な工程だ」


 私は答える。


 正確に。


 だが。


 彼はため息をつく。


「違うだろ」


 短く言う。


「教えてください、だろ」


 その指摘。


 私は受け取る。


 意味を分析する。


 言葉の形。


 態度。


 関係性。


 ——不足している。


 それを理解する。


 私は一度、目を閉じる。


 呼吸を整える。


 そして。


 再度、口を開く。


「……教えてください」


 言う。


 言葉を、変える。


 その瞬間。


 胸の奥で。


 何かが、わずかに軋む。


 小さく。


 だが、確かに。


 それは。


 これまで感じたことのない感覚。


 だが。


 私は続ける。


「私は、理解したい」


 正直に。


 初めて。


 そう言った。


 彼は、しばらく私を見る。


 評価するように。


 測るように。


 やがて。


「……まあ、いい」


 そう言った。


「最初は誰だってそんなもんだ」


 その言葉。


 それは。


 受け入れだった。


 完全ではない。


 だが。


 拒絶でもない。


 私はそれを理解する。


「明日も来い」


 彼は言う。


「今度は、手も動かせ」


 指示。


 私は頷く。


「承知した」


 だが。


 彼は眉をひそめる。


「だからそれやめろ」


 短く言う。


「……分かった」


 私は言い直す。


 それでいい。


 そう判断する。


 彼は背を向ける。


「じゃあな」


 それだけ言って、去る。


 私は一人、残る。


 川の前で。


 流れを見つめる。


 昨日と同じ景色。


 だが。


 見え方が、違う。


 私はゆっくりと息を吸う。


 そして。


 静かに。


 思う。


 ——私は、変わる必要がある。


 それは。


 敗北ではない。


 修正だ。


 最適化だ。


 そう、定義する。


 だが。


 その定義の奥で。


 別の何かが。


 わずかに、動いている。


 それはまだ。


 形を持たない。


 だが。


 確かに、そこにある。


 私はそれを認識する。


 そして。


 ゆっくりと。


 言葉にする。


 誰にも聞かれない場所で。


「……私は」


 一度、止まる。


 そして。


 続ける。


「何を、間違えたのだろう」


 その問いは。


 これまでで一番。


 深く。


 そして。


 初めて。


 “答えを求める形”で。


 胸の中に、残った。

第1章ラストまでお読みいただきありがとうございます。


ここまでで、主人公は初めて「自分の正しさ」を疑い、

そして「学ぶ」という選択をしました。


この物語は、ここから本当の意味で始まります。


次章では、

・現場での実践

・価値観の衝突

・そして少しずつ変わっていく主人公


が描かれていきます。


もしここまで読んで「この先を見てみたい」と思っていただけたら、

ブックマークや評価をいただけるととても励みになります。


次章から、物語はさらに“面白く”なります。

ぜひ引き続きお付き合いください。

明日からは1日1話の投稿予定です。

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