第205話 戻る命、違うもの
中央ダンジョン・中層、魔境の塔・内部。
メデューサの消滅と同時に塔の中に満ちていた"呪い"がほどけていく。
パキン……パキパキ……
無数の石像にヒビが入り、砕け落ちた。
「……え?」
次の瞬間、中から"人"が現れた。倒れ込む者、息を荒げる者、状況が分からず混乱する者。
「……生きてる?」
「ここは……どこだ……?」
「戻った……!」ナルサが目を見開く。
「石化解除、全域に波及」ヒカリが淡々と分析する。
しかし、「うっ……!」と多くがその場に倒れ込んだ。
「重傷者が多いわ!」母がすぐに動く。
カイルも周囲を見渡した。骨折、裂傷、衰弱。「……数が多すぎるな」
「これ……全員助けられるの?」ナルサが青ざめる。
「助ける」カイルは即答した。振り返る。
「メイド、全機起動」
ガシャン!!
ゴーレム馬車が開き、大量のメイドゴーレムが一斉に展開された。
「負傷者確認」
「優先順位設定」
「治療開始」
まるで戦場の医療部隊だった。
「……すごい」ナルサが呆然と呟く。
ヒカリも動く。風で空間を整え、呼吸を補助する。父も周囲の安全を確保した。ディスプレイには【警戒】の文字。
その様子を見ながら、ナルサがふと違和感に気づく。
「……あれ?」
カイルを見る。「さっき……」少し迷ってから言った。「ヒカリと、あなたのお母さんと、お父さん。石化しなかったよね?」
空気が一瞬止まる。
「そういえば?」リーナが首をかしげる。
「言われてみれば」キキも腕を組んだ。
「普通は……見たら終わり。なのにあの人たちは平気だった」ナルサは真剣な目で言う。
カイルは少しだけ黙りぽつりと言った。
「……人間じゃないからな」
ナルサが固まる。「……え?」
ヒカリは何も言わない。母は優しく微笑むだけ。父のディスプレイが光った。【不問】。
「まぁ、そういうこと」キキが苦笑する。
「うち、いろいろいるよ!」リーナが元気に言った。
ナルサはしばらく言葉を失い。そして、どこか吹っ切れた顔で笑った。
「……なるほど」
納得したのか、諦めたのか。
その間にも「次、こっち!」「止血完了」「魔力供給開始」とメイドゴーレムたちがフル稼働していた。
「処理能力、限界近い」ヒカリが言う。
「優先順位を維持しろ」カイルが指示を出す。
「私も手伝う!」ナルサも動き出した。
「お願い」母が頷く。
塔の中は戦場から救護所へと変わっていた。
助ける命、多すぎる命。しかし誰も諦めない。
カイルはその中心に立っている。
「……生きてる奴、全員、連れて帰るぞ」
静かで絶対の言葉だった。
救出作戦は、まだ終わっていない。




