第204話 魔眼の名
中央ダンジョン・中層、魔境の塔・最奥。
戦いは終わった。重く張り詰めていた空気は消え、静けさが戻っている。
「ほんとに動ける!」リーナがその場で軽く跳ねた。
「石化、完全解除」ヒカリも確認する。
「はぁ……最悪な相手だったわね」キキが肩を回す。
母は二人の無事を確かめて、ほっと息をついた。「本当によかった……」
カイルは崩れたボスの残骸を見つめていた。黒い欠片がゆっくりと消えていく。
「……あれは何だったんだ」
その問いに、ナルサが静かに答えた。
「冒険者ギルドの本に書いてあったと思う」
全員がナルサを見る。
「……メデューサ」
空気が少しだけ変わった。
「名称認識」ヒカリが反応する。
「聞いたことあるわね……」キキが眉をひそめる。
「石化の魔眼を持つ魔物」ナルサは頷いた。「目を見た相手を石にする。完全に石像に変えるまで時間差があるタイプもいるけど……さっきのはそれ」
「段階的石化現象」ヒカリが補足する。
「厄介すぎるな」カイルが低く言う。
「直視できないって時点で、戦いにくいのよ」キキが腕を組んだ。
「本来は単体でも危険だけど……ダンジョンの中だと、さらに強化される」ナルサが続ける。
「環境補正」ヒカリが言う。
「こわいね……」リーナがぽつりと呟いた。
「でも、勝ったでしょ?」母が優しく頭を撫でる。
「うん!」リーナは笑った。
カイルはもう一度、消えていく残骸を見る。「メデューサ、か」
「記録に追加」ヒカリが言った。
「普通は、名前知ってても勝てないけどね」ナルサが少しだけ苦笑する。
「普通じゃないから勝てたのよ」キキが笑った。
父のディスプレイが光る。【討伐対象:メデューサ】。
「ちゃんと意思疎通が出来るんだ……」ナルサが少し驚いた。
「さぁ、探索だ」カイルが振り返った。
長居する理由はない。しかしこの塔で起きていたこと石像たち、メデューサ、すべてが繋がっている。まだ完全には終わっていない。
それでも今は勝利と安堵を感じたカイル一行であった。




