第199話 石の中の違和感
中央ダンジョン・中層、魔境の塔。
激闘の末、門番は崩れ落ちた。巨体が砕け、魔力となって消えていく。
静寂。
「かった……」リーナが息を吐く。
「門番、撃破」ヒカリも頷く。
「相変わらず重い相手ね……」キキが肩を回した。
父のディスプレイ【勝利】。
「行くぞ」カイルは短く言った。
巨大な扉の前。黒い石でできたそれがゆっくりと開く。
ゴゴゴ……
中は暗く、冷たい空気が流れてくる。
「……ここが」ナルサが小さく呟いた。
一行は足を踏み入れた。
塔内部。広い空間、高い天井、並ぶ柱。そして、それはあった。
「……え?」リーナが足を止める。
「……人型」ヒカリも視線を向けた。
無数の石像。人の形をした、様々な姿勢のものたちだ。苦しむような姿、逃げるような姿、戦う姿のまま固まったもの。
「なにこれ……」キキが眉をひそめる。
「……やだ」ナルサの顔が青くなった。
カイルはゆっくりと歩き、石像の一つに近づく。精巧すぎる。まるで――本物だ。
「これ……ほんとに石?」リーナが震える声で言う。
「外見上は石質。しかし……」ヒカリが分析を始め、言葉が止まった。違和感。
「……待って」ナルサが一歩前に出た。全員の視線が向く。
ナルサはローブ姿の石像に近づいた。魔法使いのような形をしている。じっと見て、手を伸ばし触れる。
「……あったかい」
沈黙。
「は?」キキが目を見開く。
「温度異常」ヒカリが即座に反応した。
「……ただの石じゃないな」カイルの目が細まる。
ナルサはさらに観察する。石像の顔、苦しそうな表情。
「これ……」震える声。「石化……かもしれない」
空気が一気に重くなった。
「じゃあ……」リーナが小さく言う。
「元は生物の可能性」ヒカリが続ける。
「最悪ね……」キキが低く呟いた。
ナルサの視線が揺れる。「……もしかして、《閃光の剣》も……」
その言葉で、全員が理解した。
ここはただの塔じゃない。"墓場"だ。
「まだ決まったわけじゃない」カイルは静かに言った。
ナルサが顔を上げる。
「進むぞ」
短い言葉だった。しかしその先にあるものは覚悟が必要だ。
石像の森を抜け、さらに奥へ向かうのだった。




