俺の心の支えは150センチ
母ちゃん…
起きてよ…
母ちゃん…
ちゃんとお手伝いもするし
ちゃんと宿題もするから…
でも、どんなに願っても
母が目を覚ますことはなかった
「はい、ハンカチ」
うるさい…うるさい…
可哀想に…
まだ小学生なのに…
可哀想に…
なんて
もう聞きたくない…
「こういう時はね、我慢しないで思いっきり泣いた方がいいよ」
〔え…?〕
「大丈夫 誰もいないから…ね?」
〔…うわーーーぁ!…〕
小さい頃の、記憶ーー
【静香point of view】
「お父さん、お店開けるねー…って、うわぁ!!」
目の前に…ぬりかべがいる…
顔がいかついけど…地元の高校の制服を着てる…
わたし、小さいから 余計にぬりかべに見え…
「あ、お客さん…よね?ごめんなさい、どうぞー
1人かな?」
〔っす…〕
「こちらどうぞーはい、お水とおしぼりね
メニューは壁に貼ってあるから!」
〔あの…ラーメン、ネギとメンマとなると抜きで〕
「はーい!ネギとメンマとなると抜き…ね…ふふっ」
〔…なんすか〕
「あ、ごめんなさいね!昔ね、お客さんの子で同じ頼み方してた子がいたのよー」
…そうそう、懐かしいなぁ
えーっと…あ、まーくんだ!
目がクリクリで小さくて
しーちゃん、しーちゃんって
〔それ、俺…ひさしぶり、しーちゃん〕
「え?」
〔…〕
「えーーーー!?まーくん!?」
〔ちょっと…まーくんは…やめて…〕
「あ!ごめん…まさきくん、だったよね?
えー!元気にしてたの?お父さんは?」
〔転勤でまたこっちに帰ってきたっす…元気っす〕
「そうなの!高校生…だよね?」
〔っす…〕
「…足りる?ラーメンだけで」
〔足りない チャーハンと餃子も…あと、ラーメン大盛り…〕
「はーい!お父さーん、まーく…じゃなかった
大崎さんとこのまさきくんが来てくれたよ!
チャーハン、餃子、ラーメン大盛りーネギとメンマとなると抜きー!」
{おー!?大崎んとこの坊主か!!久しいなぁ
もう、7年か…たくさん食ってけよー}
〔っす…〕
それにしても…面影がなんにも残ってない…
〔なんすか〕
「あ、ううん 大きくなったねぇー何cm?」
〔去年20センチ伸びた 183〕
「ひゃあー…わたし小さいから、見上げるようだね」
〔しーちゃんは、変わらないね〕
「それ!身長のことでしょ…」
〔ふ…〕
「もぉー!まーくんって呼ぶよ!?」
〔それは…やめて…〕
「冗談よ!あ、できたみたい!今持ってくるね」
〔っす〕
「はーい、お待ちどうさまーゆっくり召し上がれ」
〔いただきます…〕
この時間はそんなにお客さんも来ないし、
ゆっくり食べてもらってる間に
夜のピークのために野菜切っとこーっと
わたしの家はラーメン屋である
小学生の頃からお手伝いでお店を手伝っていたから
今も続けている
毎日、とても楽しい!
「はい、お水おかわりどうぞー」
〔あの、しーちゃん〕
「ん?」
〔今度さ…〕
「うん」
〔お店、手伝っていい?〕
「え?」
〔バイトとか、募集してない?〕
「一応募集はしてるんだけどーなかなか来なくて…
え?まさきくん、うちでバイトしたいの?」
〔うん〕
「お父さーん!まさきくん、バイトしたいって」
{いいぞーいつから来れる?}
「話が早い…」
〔今からでも、いいっす〕
{じゃあ、頼むわー}
「…決まったね」
〔よろしくお願いしますっ!〕
「わっ びっくりした…」
さっきまで、小さな声でボソボソ話してたから
急に大きな声で話し出したからびっくりしてしまった
{おーいい声だ!その調子で頼むぞ
静香、一から教えてやれ}
「はーい」
とりあえず、昌樹くんが来れる日に来てもらうことになった
…まさか毎日来るようになるとは思ってなかったけど
【昌樹point of view】
1ヶ月、毎日通った 土日は朝から晩までいたし
少しずつ接客になれてきた
早く仕事覚えたかったし…
しーちゃんのそばにいたかったから
開店前の準備中にデート…に誘ってみることにした
〔しーちゃん〕
「ん?どうしたのー?」
〔今度、どっかでかけないっすか?〕
「…わたしと?ってこと?」
〔うん〕
「いや、出かけるのはいいけど…わたしでいいの?」
〔うん〕
「…うん 来週の休みにしようか」
〔っす あの、Rile教えて欲しい〕
「あ、うん いいよ」
よかった…
嫌そうな顔されたらどうしようかと思った
あの日から…
ずっと好きだった ずっと忘れられなくて
親父の転勤でこっちに戻ってくることが決まって
あと1年で卒業だったのに
学校が変わるのはきつかったけど
しーちゃんに会えるかもって 嬉しかった
商店街は、閉店したお店も多かったけど
この店は残ってたから
見つけたとき、嬉しくて
夕方の開店まで待ってた
しーちゃん、
あの頃は中学生だったけど今は23歳くらい?かな
大人の女性になってた
背はちびだけど
あの頃と同じように
優しくて、近寄るとふわっといい匂いがする
毎週木曜は店が休みで
俺も来週はGWの休み中だから
ちょうど良かった
休憩中にどこ行くか計画して
明日はついに、デート…だ
しーちゃんはデートとは思ってないみたいだけど
どーしたら意識してくれるんだろう
年下過ぎるのかな
俺、高3だし…
【静香point of view】
ちょっと早く着いちゃいそうだなぁ
ま、いいか 遅れるよりは…
それにしても…
どうしてわたしとでかけたかったんだろう
あ!転校してきて、まだお友達が出来てないのかな…
学校が終わればうちの店に来ちゃうし、
土日も朝から来てくれるもんねぇ
うちは助かるけど…
あれ!?
「まさきくん!?」
〔おはよ〕
「おはよう…早いね?」
〔早く……たくて〕
「ん?」
〔…なんでもない 行こ〕
「え?あ、うん!」
今日は海に行くんだ
まだ海には入れないけど、海辺の街には普段なかなか行けないから
電車で揺られながら、景色を楽しんだ
〔しーちゃん〕
「ん?」
〔手、つないでもいい?〕
「え?」
〔…混んでくるから〕
「あ、うん…じゃあ…」
GWだもんね、確かにさっきから駅に止まる度に
乗ってくる人が多い
わたし小さいから
まさきくんはわたしが潰れないように守ってくれている
申し訳ないな…
〔大丈夫?〕
「うん、ありがとう」
〔うん〕
やっと降りる駅に着いた
この駅で降りるのはわたしたちの他にはあまりいなかった
まだ海で遊ぶには早いもんね
まさきくんが日傘を差してくれている
大きいなぁ…本当に
まだ、手はつないだままなんだけど…
「あの、まさきくん?」
〔ん?〕
「手、つないだままだよ?」
〔うん〕
うん、って言われちゃった 離さないみたい
なんかちょっと照れるかも…
〔もう少し歩いたら着くよ〕
「あ、うん 楽しみ!」
〔…〕
「ん?なぁに?」
にこにこしながら、わたしの顔を覗き込んでいる
まさきくん、笑ってくれることが増えたなぁ
〔可愛いなぁって思って〕
「えっ!?」
…急にそんなこと…
あぁ、かっこよくて…眩しい
〔あ、見えてきた!ビニールシート持ってきたから、座ろうか〕
「あ、うん…」
準備いいなぁ…駅で飲み物まで買ってくれて
冷たいジュースを飲みながら、海を眺める
〔ねぇ、しーちゃん
俺のこと、男として見れない?〕
「え…?」
〔俺、いつまでも可愛いまーくんじゃ嫌なんだけど〕
「…そんなこと思ってないよ」
〔え〕
「あんなに可愛かったまーくんが、大人の男性みたいにかっこよくなって現れて…
いつも一緒にいるんだよ?意識しないほうが無理だよ…」
〔ほんと?しーちゃん〕
「でもね、考えないようにしてたの」
〔え?〕
「だって…わたしのこと好きなのかな?とか…
そんな事ばっかり考えて…わたしばっかり好きになっちゃって…」
〔しー…ちゃん…〕
「無理やり、違う理由考えて…自分の気持ち、
抑えてるんだよ…?」
〔気づかなかった…でもさ 俺の方が…好きだよ〕
「まさきくん…」
〔あの頃から、ずっと しーちゃんが好きだ〕
「そんなに前から!?」
〔覚えてる?7年前、しーちゃんが俺にハンカチを貸してくれたんだ〕
「…覚えてるよ」
〔あの時、思いっきり泣いた 叫んで、喚いて…
あの時から、俺 他の人の前で泣けないんだ〕
「え…」
〔しーちゃんの前じゃないと、きっと
自分の気持ち出せないんだと思う〕
「うん…出していいよ 楽しい気持ちも、つらいことがあったときも、イライラしたときも
受け止めるから」
〔そう言ってくれるのは、しーちゃんだけだ…〕
「…うん」
そう言って、彼はわたしに抱きついた
安心しているような…そんな風に見えた
〔しーちゃん〕
「うん?」
〔俺のそばにいてよ〕
「うん いるよ」
〔うん〕
そばにいてほしいのは…わたしの方だよ
だって…もう好きになっちゃったんだもん
【昌樹point of view】
後からわかったことだけど
俺たちは同じ境遇だった
しーちゃんも周りの大人に可哀想って言われ続けて
つらかったって…
みんな悪気はない、それはわかってるけど
だからこそ、つらかったって…
俺がそう言われてるのを見て
自分を見てるみたいだって思ったんだって
中学生なのに…人の気持ちを受け止めるなんて
きつかっただろうけど
寄り添ってくれた
元々、しーちゃんのことは
近所のお姉ちゃん以上には好きだったから
あの後、誰と付き合っても
誰にも本音が出せなくて
誰のことも好きになれなくて
あー…
しーちゃんじゃなきゃだめなのかもしれない
そんな風に思った
バイトを始めて
自然に笑えるようになった
好きな気持ちも…溢れるくらいに
〔しーちゃん〕
「ん?」
〔腹減ったぁ〕
「食べに行こ!」
〔うん!〕
「何食べる?あ、ラーメン屋さんあるね」
〔ラーメンはいい〕
「なんで?」
〔うちの店が1番うまいから〕
「…ありがとう!」
結局ハンバーガーショップで食べた
4つも食べてる俺を見て
しーちゃんが目を丸くしてた 可愛い
これからも
こうして、いろんなことしていきたいなー
しーちゃんのことも受け止められる男になりたいし
毎日、ちょっとしたことで笑えるような
そんな関係になれるといいな
『口にケチャップついてるよ』
しーちゃんが拭いてくれた
しーちゃん、もう少し待ってて
早く大人になるから
タイトル〘俺の心の支えは150センチ〙
Fin…
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再編集して投稿しております。




