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毎日夜9時更新です。
話途中で、三人称視点からヒロイン視点に変わります。
ロゼリッタが足を踏み入れた衣装部屋は、まるで宝物庫のようだった。壁一面を埋め尽くす色彩豊かなドレス、引き出しから溢れんばかりの宝飾品。それらすべてが自分のものだと言われ、ロゼリッタは眩暈を覚える。
「……これ、全部私のものなの? サラ」
「ええ! 閣下が王都中の最高級品を買い漁ったんです。でも、正直言って閣下のセンスは少し……いえ、かなり微妙ですので。せっかくロゼリッタ様が元気になられたんですもの。近々仕立て屋を呼んで、全部一新させますからね!」
サラの宣言に、ロゼリッタはさらに眩暈を覚えた。
並んだ豪華な衣装の端に、一着の簡素なワンピースがある。それは、春の芽吹きを思わせる淡い若草色の生地。詰襟には柔らかな白いフリルが施され、派手さはないが、ロゼリッタは一目見て「これにするわ」と決めた。
「……最高です、ロゼリッタ様!」
サラは弾んだ声で同意し、足元には動きやすい茶色の編み上げのブーツを選んだ。
ロゼリッタが鏡の前に座ると、サラの腕の見せ所だ。髪を緩やかに下ろし、ハーフアップにまとめていく。仕上げに、薄い桃色の紅をひと差し。
鏡の中にいたのは、春の妖精を思わせる可憐な姿だった。ヘーゼルの瞳は春の暖かな光のように輝き、蜂蜜色の髪が軽やかに舞う。ふっくらとした唇が微笑めば、部屋の空気までふわりと明るくなるような――。長く震える睫毛が瞬くたび、見る者に幸せの魔法をかけるような、手折るのもためらわれるほど瑞々しい少女だった。
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ゆっくりと階段を降りると、ロビーで兄様が待っていた。
私を見た瞬間、兄様は息を呑み、相好を崩して駆け寄ってくる。
「……なんて可愛いんだ、ロゼリッタ。私の自慢の妹だよ」
兄様は愛おしげに目を細め、私の額に優しく口づけを落とした。
その瞬間、背後で「……あ」という低い声が聞こえた。振り返ると、そこにはヴィオレル様が立ち尽くしていた。まるですべての骨を抜かれたかのように脱力し、傍らのバルトを支えにして辛うじて立っている。
(ヴィオレル様、体調が悪いのかしら……? バルトがすごく嫌そうな顔をしてる……早く出掛けた方がいいみたい。でも……)
私は気恥ずかしさを抑えてヴィオレル様に向き直り、くるんと一回りした。どうしても聞きたかった言葉が、口からするすると溢れ出す。
「あの……どうでしょうか。似合っていますか……?」
恐る恐る尋ねると、ヴィオレル様の顔が耳の付け根まで真っ赤に染まった。
「あ、う……あ、あ……う……」
もごもごと口を動かしているけれど、何を言っているのかさっぱり分からない。ただ、瞳を激しく泳がせ、視線を宙に彷徨わせている。
(……やっぱり、変かしら? 派手なドレスの方がヴィオレル様はお好きなのね……)
私がもたもたしていると、兄様が私の手をしっかりと握った。
「さあ行こう、ロゼリッタ。日が暮れる前に、お祭りを全部見て回るんだ」
「……はい! 皆様、行ってまいりますね」
繋いだ手に引かれ、私は笑顔で馬車に乗り込んだ。
走り去る馬車の窓から振り返ると、そこにはまだ、彫刻のように固まったまま真っ赤な顔で立ち尽くすヴィオレル様の姿があった。
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