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花と私
「薔薇を頂戴」
そう言うと彼女は笑って自分の左腕に棘を刺した。鮮やかに滲んだ血は次第に広がり薔薇の花弁になった。一枚食んでみると柔らかに甘い味が広がった。
「次は木蓮」
そう言うと彼女は大理石のような右太ももの皮膚を一枚一枚剥がしていった。むせかえるような香りの中で彼女は皮膚を組み合わせて一つの木蓮にした。私はその花を冷たい水飴の中に浸けた。
「最後は菫を」
そう言うと私は彼女の首を両手で強く絞め、殺した。その紫色になった頭はいつの間にか小さな菫になっていた。それを手折るとくすぐったがるような彼女の声が聞こえた。




