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夜
それは夜のことだった。丁度雨が上がった後のように冷たく、静かだった。湖面に月が映る。蒼い三日月は何時に落ちるのだろうか。
――。高く澄んだ音が響いた。静かに波が立ち月が歪む。音のした方を見ると白い少女が居た。少女は私を見て微笑みながらもう一度高い声を発する。大きな波が立ち私に少し水がかかる。湖面の月は二つに分かれた。少女はそれを見て少し申し訳なさそうな顔をしたので、私は微笑んで大丈夫だと呟いた。少女はそれを見て嬉しそうに一際大きく、高く声を上げた。さすがに無理をしたのか湖に血を吐く。波は渦になりその血を撹拌する。そして混ざり合って紫になった三日月が落ちてきた。
少女はそれを見て何か言うが何も聞こえない。もう湖面も動かない。何分ここには最初からコンクリートの壁と窓しか無いのだから。




