茸
緑の茸が銀色の胞子を飛ばすので私は喉から血を吐いてしまった。胞子は鋭く尖っているのです。その刺で私を中から切り裂いた。私は成す術なくその場に倒れてしまった。やっとの思いで顔を上げると茸がその菌糸を私に伸ばしているのが分かります。奴らは胞子で獲物を弱らせ菌糸でその養分を吸うのです。こうなればもう助かりはしないでしょう。私はそのまま目を閉じた―せめて苦しまないようにと。
次に目が覚めた時には私は暗い繭―菌糸の―の中に居た。やはり苦しまずに死ぬのは無理なのでしょうか。私は戦慄しました。なにせこれから栄養を少しずつ奪われながら死ぬのですから。逃げ出そうとするけれど体が動きません。恐らく胞子には麻酔のような役割もあるのでしょう。私に残された選択肢は死を待つだけになりました。
外界と断絶しておりますから何時間経ったのかわかりませんが少し体に力が入るようになってきた。手を握り締めて麻酔が抜けたのを確認したその時、勢い良く菌糸の塊が私の腹を貫いた。あっと言う間も無く菌糸は私の血管に入り込み、遂に脳にまで達しました。その時に私の体から痛みは無くなりました。




