シャボン玉
いつからだろうか、気がついたら私はシャボン玉の中にいた。割れる気配はない。ただふわふわと浮かんで行く。
地面から結構離れた。その高さに驚いたがシャボン玉はまだまだ浮かんで行く。まだ割れる気配はない。
後ろから轟音が聞こえたので振り返ってみると巨大な蜂のだった。私を餌だと認識したのだろう。その顎でシャボン玉に喰らいつき、崩れた。蜂の体が―硝子細工が砕けるように。シャボン玉はまだまだ浮かんで行く。まだ割れる気配はない。
そのうち雲の中に入った。たくさんの尖った氷晶がシャボン玉に触れ、はらはらと砕けていった。まだ割れる気配はない。
シャボン玉は雲を越えてどんどん浮かんで行く。鋭い紫外線がシャボン玉を突き刺すたびに柔らかな赤外線がその穴を補修していく。まだ割れる気配はない。
何故このシャボン玉はこんなにも頑丈なのだろう。雲を見下ろしながらそんな事を思う。普通のシャボン玉ならもうとっくに割れててもおかしくないはずだ―私がそう呟いた瞬間。シャボン玉は割れて私の体は落ちていった。あまりの速度に私は気を失ってしまった。
気がついたら私はシャボン玉の中に居た。




