誰も何も知らないまま「わかりました~」と言った話
私が通っていた小学校は、グラウンドの先に未開発の林が残っていた。
そこは子どもたちの恰好の遊び場だった……のだが。
ある日、○○くんが首に謎の装具を付けて教室に入ってきた。
歩くことさえ辛そうにしていた。
クラスの中でも、明るく元気に走り回っている子だったのに。
先生は○○くんが林に入った際、ダニに刺されて脊髄?とやらに後遺症が残ったという話をした。
ダニ?
ダニというのが危険な生き物だということはわかった。
先生は、
「林に入るときはダニに注意してくださいね」
とだけ言った。
しかし、それ以上のことは教えてもらえなかった。
ダニとはどういう生き物なのか。
なぜ、○○くんがダニにやられたのか。
どうすればダニから身を守ることができるのか。
何も教えてくれなかった。
おそらくだが、先生も何も知らなかったのだと思う。
よくわからないが、注意すれば防げるものだと理解した。
誰も何も知らないまま、クラスのみんなはこう言った。
「「「わかりました~」」」
実に昭和っぽい話である。
体の機能に支障をきたすというのだ。
しかも、注意すれば防げるということだった。
さぞかしデカい生き物なのだろう……と思った。
カブトムシくらいの大きさの生き物だと、ずっと思い込んでいた。
そんな事件があったというのに、ダニがどういう生き物なのかを知ったのは、何十年も経ってからだった。
小学校で、クラスメイトが身をもって教えてくれていたのに、こんなに後になってしまったのは、なんとも情けない。
テレビの報道を見て知った。
ダニは動植物に引っ付いた状態で潜伏している。
草や動物に触れたときに、人の肌へ移る。
血を吸う。
危険な病原体を人に感染させるダニもいる。
……という話だったと思う。
危険な病原体に感染すると、38度以上の発熱、嘔吐、下痢、食欲低下などの症状を経て、体の機能に支障をきたす後遺症を残したり、死亡したりすることもある。
野良ネコや野鳥などに触れたときに、ダニが人肌に移ってしまうこともあるらしい。
私はネコに対して禁断症状をきたしている。
野良ネコにさわると、危ないと言われるが……。
それでも、みつけるとさわりたくてうずうずしてしまう。
さわりたい。でも、危ない。
さわりたい……。
う~ん、これでは、私が危ない人みたいではないか。




