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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第5章 夏休みが来る前に

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第94話 メインの魚は大漁です

 漁船帰還前に、詩織先輩は魚用と書いたトロ舟をだっと前に並べる。

 20個以上のトロ舟が工房前のコンクリートのたたき部分だけでなく、アスファルト部分まで広がった。


「愛希、全部とりあえず清掃お願い」


「あらよっと」


 愛希先輩は杖を構え、そして大きく杖を振るう。

 一瞬感じる強烈な熱気。


「やっぱりこれが使えると便利よね。朗人にも頑張って習得してもらいましょう」


 沙知先輩がそんなことを言っているけれど、こんな魔力は僕には無い。

 そして飛行漁船は、今日は少しだけ校門側の方へ着陸する。

 工房前を目一杯使えるようにという事だろう。


 いつものように漁船から人力で魚を下ろすのでは無く、詩織先輩が片っ端から魔法でトロ舟へと魚を移動させていく。

 えっ、えっ、えっ、えええええええ……


 どれだけ捕ってきたんだよ、と言いたくなる。

 丸々としたでっかカンパチやらマグロやらが、トロ舟10台に並んでいる。

 これは完全に漁業だろう。漁業権はどうした大丈夫か?


 どう見ても通常の魚釣り大会の3倍近くは捕っている。

 これが本気モードの先輩達の実力なのか。

 洒落にならない。


「これから捌きますが、刺し身以外の料理に使う際の希望はありますか?」


 美雨先輩が聞いてくる。


「頭、内臓、骨を含む他のあらと、サク以外を3つにわけていただけると助かります。頭は縦に半分割りで。あと巨大アジのうち1匹だけは腹開きで背を付けたままで。あえて頭もそのままで願います」


「わかりました。アジフライ用ですね。」


 そして巨大な作業台を前に出し、魚を捌く作業が始まる。

 ルイス先輩の魚捌きは動きがなかなか綺麗だ。 

 まるで武芸者のように、刃の長さと尖りを使って切り刻むという感じ。

 魚捌きであっても何か正当な武芸を感じさせる。


 一方、美雨先輩の魚捌きはきっと魔法だ。

 無造作に刃を滑らせているようにしか見えない。

 それでもうろこは全てギリギリかつ確実に取れているし、骨部分に残っている身は冗談みたいに薄い。

 ルイス先輩のが”肉塊を斬っている”感じなら、美雨先輩のは”組み立てられているのを分けている”感じだ。


 それなのに切り口は冗談みたいに綺麗。

 普通じゃない。

 やはりきっと何かの魔法なのだろう。

 魔法を使っている感じもするし。


 僕も見ているだけではない。

 出たアラを水につけて血を抜いたり、血を抜き終わった頭に塩と酒を振ったり、内臓部分をちまちま洗ったりとまあそこそこ忙しい。

 1人では忙しいので典明に下請け作業をやってもらっている。


 あと、3年の愛希先輩と理奈先輩にもガンガンに手伝って貰っている。

 下ゆでしていた大根の水を替えてもらったり。

 ブリの切り身をさっと湯通ししてもらったり。

 この2人が居ると水を入れる、水を抜く、茹でる煮る、冷ます全てが出来て強烈に便利だ。


 夢中になって動いているうちに、大量にあった魚類の下処理は全て終わっていた。


「とりあえずきりのいいところで昼食にするですよ」


 詩織先輩がそう宣言する。

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