第92話 鬼が居ぬ間に……えっ!
「ところで当日出す料理って、もう決まっているんですか」
この中で現役学生会最高学年にして副会長の、ソフィー先輩に尋ねる。
「とりあえず例年は刺し身がメインで、あと赤身の一部を適当に揚げ物に回していた位です。あとはあら汁を作る位しか決めていませんわ」
「なら、今のうちに作る料理を決めて、ルイス先輩達が帰ってきてからの作業等を決めておいた方がいいですね。その方が処理が早くなりますし」
本音を言うと、ここでこっちのペースに持って行って、作業を少しでも効率的かつ楽にしたいのだ。
「それならある程度、決めていただいて宜しいでしょうか。一応希望は今年も刺し身メインで、あと揚げ物、そして出来れば煮物や焼き物もしたいという事で」
よし、ソフィー先輩の返事、予定通りだ。
それ位いい加減な状態なら何にでも決められる。
というか、食でプレッシャーをかけるのは詩織先輩くらいだし。
詩織先輩は既に準備した材料で色々主張をしているようだけれども。
僕は工房の奥からホワイトボード一式を引っ張り出してくる。
奥に埋もれていた割には埃等が一切ついていない。
時々魔法で清掃をしているからだろうか。
僕はホワイトボードに思いついた料理をだっと書く。
○ 刺身盛り合わせ
・ 各魚の各種部位の切身
・ 脂の少ない部分等の漬け
・ ドレッシング和え(カルパッチョ風味)
※ 当日は巨大魚の解体ショー有り。
解体後の身は刺し身へ、頭は兜焼きへ、アラは内臓を除き廃棄
○ 揚げ物
・ 白身・赤身の普通のかつ風
・ 赤身・白身の中が生の状態のレアかつ(刺し身用のサクを使用)
いずれもドレッシング、東南アジア風あんかけ、タルタルソースの選択可
○ 煮物
・ あら汁(味噌仕立て)
・ ブリ大根(頭、身、肝等使用)
○ 焼き物
・ 照り焼き
・ 兜焼き(兜は縦に半分に割る)
「とりあえず無難なのはこんなところですが、他に何か意見がありますか」
出ないだろうなと思いつつ、そう聞いてみる。
なにせ常に危険な発言をしている詩織先輩、理奈先輩、沙知先輩がそろってこの場にいない。
強いて言えばソフィー先輩だけれど、副会長だし食については麺類以外に文句は言わないようだ。
だから今ならいける、そう思っていたのだが……
「うーん、無難だけれど外連味に欠けるわね」
「ネタになるようなメニューが欲しいですわ」
え、今の声は幻聴か……
では無かった。
よりにもよって排除していたはずの先輩3人が、何故かホワイトボードの真ん前に陣取っている。
あとは一緒に漁に出ていたエイダ先輩まで。
何だ、何があったんだ。
「大漁で舟が重くなったので、操縦担当のルイスを除いて先に帰ってきたのですよ」
そう言えば詩織先輩にはそんな魔法があった。
でもあの舟で重くなったって、一体どれくらい捕ってきたのだろう。
僕のそんな思いに関係なく詩織先輩は口を開く。
「とりあえず目玉になるような、派手派手で目立つのが欲しいのですよ」
「兜焼きくらいじゃ駄目ですか」
「悪くはないけれどあと一押しなのです」
わかった。
しょうがない。
一応こうなる場合のことも考えてはいた。
本当はやりたくなかったのだが、でも仕方ない。
先輩のご命令だ。
一応前提条件を尋ねる。
「今回はギンガメアジ類は釣ってありますね」
「巨大なのを4匹、いずれもシガテラ毒は確認済みですわ」
よし、仕方ない。
美味しく全部食べられるか自信は無いけれど、これも追加だ。
僕はホワイトボードの揚げ物の間に次のメニューを追加する。
・ アジフライ(ただし巨大・1匹のみ。あんかけ風味)
「この辺でいいですか」
3人で相談を始めたけれど、大丈夫だろうか。
おっ、結論が出たようだ。
「まあその辺で妥協してあげるのです」
良かった。お許しが出た。
「あとあら汁の他、東南アジア風味の魚のスープもプリーズなのです」
あ、更に追加も来た。




