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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第8話 僕には価値はわからない

「それで今日は、その日本刀って訳か」


 3時間後の僕の部屋。緑山が上がり込んでいる。

 緑山が見ているのは今日僕が作った作品。

 全長960ミリ刃長603ミリ。

 詩織ちゃん先輩は長脇差と言っていたけれど、要は完全に日本刀だ。


 緑山はそれこそ色々な角度で持ってみたりつまんでみたり、挙げ句の果てに振ってみたりまでして調べている。

 約10分調べて、彼は大きいため息をひとつついた。


「本当にこれをお前が作ったのか、本当に?」


 そう言われても困る。


「材料は貰ったけれど、今回はカットも打つのも全部僕がやった。鋼材の選定は先輩だし、カットに使う機械の操作と仕上げの磨き作業に使う機械の操作は先輩に教えて貰いながらだけれど。あと柄と鞘は取り敢えずのものをロビー先輩に作って貰った」


 奴はもう一度、深い深いため息をついた。


「まあ三輪は、これの価値をわかっていないようだから、嘘も言っていないんだろう。しかしこれって放課後にほい出来ましたというようなものじゃ無いぞ、本来は」


「何故それを緑山はわかるんだ?」


 奴は肩をすくめてみせる。


「刀は昔好きで色々見ているしな。美術館の特別展で触れる状態で展示してあるのを、魔法で解析してみた事もある」


「だったら明日、一緒に行ってみないか?」


「生憎自分の手先の不器用さについては、絶大なる自信を持っているんだ」


 彼はそう言ってふん、と鼻を鳴らす。


「だから我輩は、実作系はやるかもしれないけれど手作り系はやる気はない。やるなら既製品を組み合わせる方の制作だな。でも今は別の話、この刀の方だ」


 そこまでこだわる問題なのだろうか。


「そんなに凄いものなのか、ずぶの素人が作った2作目だぞ」


「だとしたらその工房のシステムかノウハウがとんでもないんだ。いいか、よく日本古来の製法で刀鍛冶とかが1年に数本刀を作ってうん十万円で売っていたりする。しかし今小生の前にあるのは、そんな刀より数段上の出来の製品だ。おそらく古刀とかも研究し尽くして、更に現代の工学の知識を動員して作っているんだろう。つまり値段付けしたら普通は3桁万円は下らない。少なくとも日本の本土では。それを今日の放課後作りました。お土産でただで貰ってきましたって。何の冗談だ、という話にもなるだろう、常考」


 そんなに凄いものなのだろうか。

 僕はそんな気負い無しに作ったし、詩織ちゃん先輩も中級者コースなのですよと言っていたしな。


「わかった。大変不本意だが、拙者も明日同行させて貰う。明日を逃すと月曜になるしな」


 明日は金曜日だ。

 土日は当然、学校は基本的にお休みである。


「いいよ。多分向こうも歓迎してくれると思うし」


 本当はあの空間は自分1人だけのものにしたい、という気持ちもある。

 でも人が足りないとも言っていたし、連れて行けば喜んで迎えてはくれるだろう。

 そして緑山は時計をちらりと見て付け加える。


「あと1つ頼みだ。ちょっとカフェテリアへ行く時間が遅くなってしまった。これから行くと大学の新歓とか企業の連中とかで混んでいて面倒だ。材料費は払うから晩飯を食わせてくれ」


 ここのカフェテリアは大学と共通だ。

 そして特区は僻地過ぎて、飲み屋が1軒しかない。

 たまから企業だの研究室だのも、このカフェテリアを結構使っている。

 結果、緑山の言うような状況になる訳だ。


「いいよ。どうせ1人分作るのも2人分作るのも手間は変わらない。ただここのスーパー、冷凍物ばかりで少し味は落ちるんで、それは勘弁してくれ」


 緑山は頷く。


「食に貴賎は無い。量さえ十分なら文句は言わない」


「飯は1合でいいか」


「十分だ」


 僕はカップでコメを計り、ふた付きホーロー鍋に入れる。

 炊飯器を買い忘れたのではなく、この方が早く炊けるからだ。


 後ろを見ると緑山はまた刀を調べ始めた。

 そんなに珍しいものなのだろうか。

 僕にはわからない。

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