第78話 イケメンな彼女
「以上です。後はそれぞれご確認下さい」
やっと僕の発表が終わった。
よし、あとは傍観者として他を観察しよう。
典明や青葉をはじめ知り合い連中は、もう発表したか最後の日発表かだ。
だから落ち着いた気分で見ていられる。
やはり今日の発表では、浮上車椅子が段違いに面白い。
移動にはMJ管の細いものを多数纏めて使っている。
残念ながらMJ管は魔力感応タイプなので、魔法が使えない僕には使えない。
でも非常時に地上へ延ばすブレーキスティックなど、とにかく色々考えられている。
一方自転車のうち、片方は結構悲惨な代物だ。
ある程度速度を出した状態でないと安定して浮上出来ない。
重心が高い為、後輪の回転によるジャイロ効果を使わないと姿勢が安定しないから。
もう1台は浮力調整具をかなり上に設置して、バランスをとっている。
その分デザインと乗りやすさが今ひとつだ。
リアル空飛ぶ絨毯は、真ん中に座り姿勢を低くしないとひっくり返るそうだ。
この辺の重心やバランスの制御も実は課題の一つだったらしい。
僕は単にMJ管の位置を高くしてごまかしたのだが、まあそれはフレームをオリジナルで設計作成したから出来る事。
フレーム等に市販の別の製品を使った場合はそのあたりがネックになるようだ。
その意味であの電動車椅子は、やっぱり優れ物だ。
加速度センサーと傾きセンサーでバランスを自動制御しているとの事。
僕の全部手動です! とは違う、高度かつ賢いマシンだ。
さて、一通り発表が終わった。
ゼットンが解散を宣言した後も、何人かが残っている。
授業時間内は発表した実物の観察及び試乗をしていい事になっているから。
「おい三輪、あの空飛ぶ機械、ちょっと試してみていいか」
能ヶ谷である。
彼は既に発表が終わったので暇らしい。
他にも同類が何人かいる。
「いいぞ。ただ怪我はするなよ。結構バランスに神経質だから」
落下しても壊れない頑丈さには自信がある。
僕自身、何回も墜落させているから。
それでも典明の検定魔法では問題なしとのお墨付きだ。
早速能ヶ谷が乗り込み浮上。
そして直ぐに斜めに地上へ滑り落ちてくる。
僕も良くやった墜落パターンだ。
「何だこれ、乗りにくいぞ」
「よし、次は俺だ」
小野路がチャレンジ。
彼は言葉とは違い慎重派のようだ。
浮上もしたし前方にも動く。ターンも出来るが、とにかく遅い。
僕と同じで中央側のMJ管を怖くて使えないようだ。
そして最後はやはり斜めに落下。
一方、僕は気になった浮上車椅子の実機をもう一度確認しに行く。
と、先程僕に質問した小柄な女子学生が、車椅子をあれこれ確認していた。
小柄だし胸は無いけれど、可愛いというよりは綺麗な感じ。
詩織ちゃん先輩と顔立ち等は違うけれど、どこかしら何となく似た感じがする。
下を覗き込んだりセンサーを見たりして確認した後、彼女は制作者の女子学生に話しかけた。
「これは本当はきっと『飛ばない』車椅子として設計したんじゃ無いかな。違う?」
声だけ聞いていると男の子のような感じだ。
制作者の女の子が一瞬はっとした顔をして、そして頷く。
「ええ、そうです。わかりますか」
「何となくね。この車椅子は空を飛ぶことを目的としていない。空を飛べる機能を使う事でより快適かつ安全に乗車した人を保持する。そんな感じがしてね。だから実際は飛行しなくていいんだ。タイヤの方がブレーキ効くし効率良いしね。
でもシステムは非常に良く出来ている。フェイルセーフ的な心遣いも見事だ。きっとこれは何か具体的なものがあって、作りたいと思って作ったんじゃないかな。ただ課題の為じゃなくて。違うかな」
彼女は男の子のような声でそう言って、制作者の彼女に笑いかける。
うーん、小柄な女の子だけれど何かイケメンな感じだ、この人。
こういうのをハンサムな女の子というのかな。
と思った時、背後から声がした。
「これ上野毛、何故卒業生がこんなところにいる」




