第225話 今年もトドからはじまった
店内のフードコートで、うどんを食べながら作戦会議。
ちなみに僕は、ぶっかけうどん並にかしわ天となす天。
2人はぶっかけうどん大に天ぷらを山ほどつけ、更におにぎりといなりを追加。
テーブルに着くと、詩織先輩はどこからともなくノートパソコンを取り出した。
うどんの汁が跳ねないか心配になる状況で操作し、1枚の図面を表示させる。
「これが現在の、露天風呂の平面図なのです」
きっちり製図した物では無い。
表計算のスプレッドシートに大雑把に描かれた図だ。
「これでぬる湯とあつ湯を、東西に長い状態から南北に長い状態にして、ついでに歩行湯を1メートル南にずらすのです。そうすると、かなり空間が生まれるのです」
今の状態で余っている南北方向の空間を使う訳か。
確かにそうすれば、結構スペースが出来るだろう。
「ならここに今までの寝湯を移して、更にここに寝湯を追加して。あと寝湯の半分は、下半身に暖かめのミストシャワーが当たる構造にしたいな」
詩織先輩はパッド操作で、器用に図面を変更。
「なかなかいい感じなのです。ついでにロビーに占拠されている、ジェット水流のダイエットバスも増やすのです」
「あとこの歩く浴槽を、こっちにずらすのは出来るかな」
「可能なのですが、何を?」
「ここにデッキを作って、上から冷水のミストを流すコーナーを作ったらいいなと思って。そうすれば暑いときに涼めるし」
「ナイスなのです。ならこれで完成形という事で、材料を計算するのです」
2人で盛り上がっている。
ただ話の最中にも、天ぷらとうどんは着実に減っている。
どういうメカニズムなのだろう。
見ててもよくわからない。
「割と追加資材は必要ないのです。寝湯の部分の素材とデッキ部分の木材、あとはダイエットバス増築用素材だけなのです。そんな訳で、善は急げなのです」
気がついた時には、もう2人とも食べ終えていた。
僕の倍以上の量があったはずなのに。
早すぎるだろう。
僕はあわてて残りのうどんを食べる。
◇◇◇
そんな訳で、木材やら敷石やら自然石タイルやらコンクリやらレジンやらを、詩織先輩曰く綿密な計算の元に買い出す。
「ここは玉砂利を敷いたらどうなるのかな、気持ちいいかな」
「やってみる価値はあるのです」
こんな会話で、余分な資材も色々追加。
レジを通した後駐車場の影で、台車ごと保養所の露天風呂へ運んで、台車だけ戻して。
買い出しが終わって最終的に保養所に着いたのは午後1時。
僕は既に疲れ切っている。
しかしまだ、1日は終わっていなかった。
「詩織先輩、忘れていると思いますけれど、お昼御飯はどうでしょうか?」
風遊美先輩、ジェニー先輩、理奈先輩、沙知先輩という、実家に帰らなかった面子が腹をすかせて待っている。
状況は理解した。
お昼までに着くはずの僕と愛希先輩の様子を見に、詩織先輩が移動。
そしてこの4人が昼食を待っていたという訳か。
しかしもう僕には、昼食を作る気力は無い。
「よし朗人。適当な食べ放題の店を案内するのです。今日は私のおごりなのです!」
詩織先輩も僕の状況がわかったらしい。
でも一介の高校1年生相当の僕は、それほど色々店を知っている訳では無い。
そしてお題は『食べ放題』との限定付き。
そんな訳で、仕方なく案内したのは、実家から車で5分の食べ放題の店だ。
さっきのホームセンターからなら、国道沿いに歩いて20分。
つまりまた実家方面に逆戻りだ。
店はまあ、1人2,000円ちょいでドリンクバーまでついて90分食べ放題の、典型的で大衆的食べ放題系焼肉店。
安っぽい寿司から綿菓子まで何でもある系統だ。
しかし島には、そういう系統の店は当然存在しない。
だから結構、皆さん喜んで食べていた様だ。
具体的に言うと、肉を焼いてカレー食べてアイスと綿菓子食べてと、やりたい放題。
そんな訳で、制限時間より20分早く、僕以外の全員がトド状態と化した。
店を出た後、他人からの死角を探して魔法移動して、何とか保養所へと帰還。
今日の結論。詩織先輩も20人前以上食べれば、トドになる。
そんな感じで、新年が始まった。




