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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第11話 間違っているのは僕じゃない

「何かもう、ここへ来ただけで常識が数回壊れたな。向こうには全金属素材対応型の超高級大型3Dプリンタも見えるし」


「なかなか良く知っているのです。あれは私の誕生日祝いに買って貰ったのです」


 また緑山が壊れた音が聞こえた気がした。


「あれって確か1千万円超、ですよね」


 詩織ちゃん先輩は何でも無い事のように頷く。


「まあそれくらいのものなのです。ロビーもバイクのフレームをチタンで作るのに使ったです。一体成形で強度も軽さも最高なのです。次はエンジンを作り替えると言っているのです」


 僕はその世界に詳しくはない。

 でも、とんでもない話をしているのだけは理解できる。


「ところでここは何の研究会なんですか? こんな異常に高度な技術を使って何をしているんですか?」


 緑山がようやく、本題ともいえるその疑問を口にした。

 当然僕も同じように思っている。

 刀の製作愛好会だと思っていたら、どうもそれだけではなさそうな感じだし。


「厳密には、ここは研究会では無いのです」


 詩織ちゃん先輩はそう言って言葉を濁す。


「研究会ではないという事は、非公式な愛好会ですか。それとも何か秘密結社的な……」


「正真正銘で公明かつ明白に、学校公認な組織なのですよ」


 その言い方からして、既に怪しい。


「何なんですか。それは」


 そう聞いた僕を、詩織ちゃん先輩は見つめる。


「朗人君は入ってくれるですか。入ってくれるなら教えるです」


「今更入らないとは言いませんよ。刀作りも面白いですし」


 一応、本音だ。


「本当ですね、本当なのですね」


 詩織ちゃん先輩は笑顔になる。

 魔女の微笑みと言うには無邪気すぎる笑顔。


「なら教えるのです。ここは学生会なのです」


 がくせいかい?

 学生会以外の適当な同音異義語は思いつかない。


「学生会所属の何かの研究会ですか?」


 緑山が俺の疑問を代弁してくれる。


「だから単なる学生会なのです。学生会幹部会、または学生会執行部とも言うのです」


 その意味を理解するのに、僕は10秒以上を必要とした。

 でも理解はしても、納得は出来ていない。


「それってオリエンテーションを企画したり、研究会を案内したあの学生会ですか?」


 緑山も俺と同じように今ひとつ信じられないらしい。

 聞き方が微妙にくどくなっている。


「その学生会なのですよ。私は行事では裏方担当なので表には出なかったのですが。学生会執行部監査役、それが私の役職なのです」


「何故学生会が、あんな高度な工房を持っていたり、日本刀をつくったりしているんですか」


 僕は更に聞いてみる。

 どうにも納得がいかないから。


「その辺は成り行きなので、深く追求してはいけないのです」


 詩織ちゃん先輩はきっぱりとそう言い切った。

 成り行きとは便利な言葉だ。

 その一言で全てを流してしまえる。

 だからもう僕も緑山もこれ以上何も言えない。


「という訳で、学生会にようこそなのです。大歓迎なのです」


 その笑顔を見ながら僕は思う。

 どこで何を間違ったのだろう。


 とりあえず考えてみたがわからない。

 何回考え直しても間違っているのは僕や緑山ではなく詩織ちゃん先輩や学生会、この魔技高専やこの特区の方のような気がする。

 残念ながらそういう平凡かつ役に立たない結論しか、僕には導き出せなかった。

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