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#1 完璧な欠陥品

西暦不明。

大文化統合戦争と呼ばれる戦争が起きた。

文化、言語、宗教、信念――

【全ての文化は、争いの種になる。】


そう仮定した者たちは、

認証された唯一の文化へ

世界を"統合"することで

真の平和に到達できると信じた。


その思想が生んだ戦争の中で、

完璧な生物兵器として造られた子供と、

何もかもを信じられなくなった元兵士の男が、

ネオン街で出会ってしまう。


ーそれは、

既に回り始めていた破滅の歯車を

決定的に動かす“鍵”だった。

()()()の逃亡を回転灯が大袈裟に叫んでいる。

風を切る黒い髪が靡き、

涙を堪える紫の瞳はただひたすらに前を捉えている。


ー逃げなきゃ僕は死ぬ。

そう思った理由は、やっと自我を取り戻したから。

試行3度目。

1度目は研究所内の構造の把握不足。

行き止まりに追いやられ頭をぶち抜かれた。

2度目は外が見えてた。

でも、間に合わずに扉が閉まって足が止まる…

またまた頭をぶち抜かれた。

今回は違う。ルートも知っているし、体力の温存も

射撃特化型のドローンを()()でだいぶ減らすことが出来た。

銃弾もそんなに食らっていない。

「ベータの逃走!繰り返す!ベータの逃走!

3回目だぞ?!早く無力化して濃縮神経毒を

撃ち込め!逃がすな!

そいつには100億掛かってんだぞ!!」

研究所内に響く、所長の声。

怒りを抑えきれずにいる、権力に溺れた猿。


外が見えた。

…3秒後、5時の方向から神経毒の入った銃弾。

避けなきゃまたやり直しだ!

セキュリティも1回目に比べて厳重になった。

…今度はチャンスが無いかもしれない。

扉が下がっている!

滑り込む。 阿呆なドローンで助かった。

炎が上がって、神経毒を撃つ寸前だったドローンは

扉に潰された。


ベータはネオン街に出た。

ネオンに照らされて、派手に飾られた高い建物。

偽りの幸福で飾られた街。

彼、または彼女の眼に刺さるネオン。

それがベータには自由の象徴に見えた。

だが、ベータは人混みに紛れ込む事を恐れた。

半分が化け物の僕を見て、

(人々が僕を研究所へと連れ戻してしまったら?)

そんな考えが頭を駆け巡る。

路地裏に独り。

ネオンの逆光で強調される建物の裏、薄暗い

シャッターまみれの光景に寄りかかった。

撃たれた数を抑えられても、ベータには痛覚がある。

血が滲んだ赤い拘束衣。

元々は白紙のように白かった。

流れ出る血が暖かい。

視界がぼやけてきた。

どうやら出血量が多すぎるらしい。

ー最期に少しだけでも自由になれた。

戦場ではなく、研究所でもなく、人のように街で

死ねる。

ベータにとってはそれだけでも救いだった。


一方、表のネオン街では

整った銀の髪の男がタバコを吹かしながら

ダラダラと歩いていた。

ネオン街の住人で、兵士だった男。

沢山の仲間を失って、

護ってきた地区(ネオン街)を信じられなくなった

ジェイス・ローレンス

だった。

売店でそれなりの値段の夕飯を買って、

その紙袋を手に持っていた。

…落とした。

中を確認する。

深海のような青の眼が覗き込む袋の中身は

ぐちゃぐちゃで綺麗とは言えなくなってしまった。

「…食えればいいか」

そう言って、家のある路地裏にと入り込もうとした。

...咄嗟に手を銃のホルスターにかけた。

違和感が彼を襲った。

それは用心深い訳でもなく、怖い訳でもない。

兵時代の名残。

路地裏に入り、銃を構える。

曲がり角で壁に寄りかかり、確認した後に銃を向ける。

銃口の先に、それは居た。

拘束衣を真っ赤に染めて、血の水溜まりに

倒れている子供。

ジェイスはホルスターに銃を仕舞い、近づく。

「…ガキんちょ。生きてる?」

…返事はない。死んでるのか?

スマホのライトを眼に向ける。

対光反射が見られた。

ジェイスは面倒くさそうに舌打ちをした。

「追われてんの?逃げてんの?お友達と鬼ごっこ?」

返事は無い。する余裕が無いのだろう。

「もー…寒ぃのによぉ…」

ジェイスは上着を掛けてやった。

「名前は?」

すると子供は枯れている小さな声で言った。

「…ベー...タ...」と。

「ダッセェ名前だな、お前。新しいのつけてやろっか?」

ベータの目が少し動いたように見えた。

「フィーリア…いや...」

「フィーリ…オ。うん。フィーリオ。

俺は勝手にフィーリオって呼ぶ。」

フィーリオの意識はもうなかった。

ジェイスは片手でフィーリオを担ぐ。

「軽っ」

そしてジェイスは、フィーリオを担いだまま家へと帰り、治療して、革のソファに寝かせてやった。


「ガキが血まみれになって死にかけてるような世界で生きるぐらいなら…大人は皆死にゃいいんだ…」

ジェイスはタバコがまだ入ったままの箱を投げ捨てた。

この子供がいる間は、吸わないようにしてやろう。


それは彼なりの気遣いだった。

こんにちは。

寿限無です。暇なので小説を書いてみます。

よろしくお願いします。

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