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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
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9/17

#009

 御者台を直して、体感で1時間。ボロい御者台は、俺の手によって、見違える程の変貌を遂げた。

 サーラの方も、探し物が終わったらしく、これで外に出られる。


「さてと。これで探し物は終了! これを全てポーチに片さなきゃね」

「この鞄に入りきるのか?」

「私のポーチに仕舞うよ。私が言い出した事だし」

「そうして貰おう。馬車だけは無理だから、牽いていこう。サーラも手伝って」

「はーい。馬車が通れないから、裏口から出よう。案内するね」


 ポーチに全て仕舞っていき、馬車を牽きながら、不要品広場を後にした。

 外の景色は、オレンジに変わり、影も長くなっている。


「夕日が眩しいね」

「1時間だと思っていたら、数時間経過してたとは。取り敢えず、今日は原野には行かない」

「市場に戻ろうか。その方が良いよね」

「ところで、サーラは情報収集能力高いな?」

KOH(コウ)より早く、この世界に来たからね。市場で、たくさん聞き込みしたんだよ」


 それで、ある程度の知識はあるのか。それなら、冒険に出発したら良かったのに。


「寝泊まりは、この中で寝れば良いよね。寝袋は無かったけど、フカフカな布団? みたいな物があったよ」

「この中って、荷台で? サーラ。キミは、危機感とか無いのか?」

「何で? 私、フカフカな布団で寝れるよ?」

「そうじゃなくて! 俺、男なわけ。キミは女でしょ! しかも夜だなんて、」

「あー、そういうことね。それは大丈夫だよ。衝立(ついたて)になりそうな、仕切り板を見つけてあるから!」


 おいおいおい! 危機感無さすぎる! 襲われたらどうするつもりなんだ。


「そんなんで、安心しない方が良い!」

「そもそも。KOH(コウ)は、襲うつもりでいるの?」

「襲うわけないだろ! 俺はそんなに軽い男じゃない!」

「じゃあ、安心だ」


 どうして、そうなるのか。俺は理解出来ない。

 そんなことを考えていると、目の前の視界に、土壁の建物が幾つも見えてきた。


「市場だ! 夜まで時間あるし、どうする?」

「この辺に温泉ある? 俺は今すぐ、温泉に入りたい」

「無料の天然温泉が、市場の外れにあるよ。言うなれば、テルマエ!」

「はいはい。古代ローマ人が転移する、アレね」

「露天風呂でね、とっても、気持ちいいんだよ」


 露天風呂か。日帰り温泉ですら、何年ぶりだろう。旅行だって、基本的に無縁な生活をしてたからな。


「そうなると、この馬車、どうするかだな」

「交代で、見張っとく?」

「湯冷めしたら、大変でしょ。停めておく場所だって、無いだろうし」

「じゃあ、どうするの?」

「小さく出来たらなぁ」


 馬車を小さくする。そんな魔法があるから、誰だって魔法使いに憧れを抱く。


 ん? 魔法使い?


「俺、魔法使いじゃん。ウィザードじゃん!」

「そっか。KOH(コウ)魔法使い(ウィザード)だったね」

「小さくする魔法で、馬車を小さくすれば、俺の鞄に入る」


 馬車を牽くのを止め、杖を出して、呪文を……。

 呪文を唱えれば。


「サーラ。物を小さくする呪文、知ってる?」

「知らないよ。小さくするイメージを、頭の中で思い浮かべて、杖を振ってみたら?」

「無口頭呪文か。それなら、イケるかも」


 かなり大きめの馬車だから、ラジコンサイズくらいに、なってくれたら良いな。


「い、いくぞ」


 手首を少し動かすと、杖の先端から火花のような、赤い光りが出てきた。

 馬車に当たった光りは、馬車全体を包み込んでいく。


「おぉ! 凄い!」

「これで、小さくなってくれれば!」


 みるみるうちに、馬車は収縮していき、最終的にはラジコンサイズ!


「やった! 小さくなった!」

KOH(コウ)凄いよ!」

「じゃあ、これは俺の鞄は中に」

「これで、安心して温泉に行けるね」

「今日はもう、疲れた。普段の数倍は、疲れてる」

「温泉入って、ゆっくり休もう!」

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