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命を託す場所

 エルピスが城内に運ばれるとすぐに医療班とキョウがエルピスを診た。

 キョウはエルピスに注射された痲薬カヘンの成分分析をするため、血液を採取すると自身のラボに向かった。途中ですれ違ったディルにキョウは肩を叩く。


「この天才を待っていて下さいよ、兄上。オレがいるなら安心だ」

「……ああ。任せた」

「今晩中には解毒剤を作って見せるから。兄上はエルピスについていてあげてくれ」


 そう言うと足早にキョウは過ぎ去っていった。ディルは医務室に向かうと、薬品の匂いがする真っ白な空間に眉を寄せた。そういえば──白の大地、ノヴァーリス公爵の城へと赴いた時、言っていた。


 ──『この冷たさも、白く煙る景色も。しんと静まり返っていて……白っていう悪い色彩を塗り潰してくれる』。


 その白が、今のディルにとっては黒く滲み出す。

 ベッドに横たわったエルピスは、酷いものだった。顔は痲薬で火照り、薄く汗をかいている。呼吸は浅く速い。折られた腕は木のエレメンツで固定され、強く殴打された脚は水のエレメンツで常に冷やされていた。治療を受けたはずの頬は、強い殴打により青くなったままだ。


「あとは経過を見るだけです。キョウ様の解毒薬を待ちましょう」

「……ああ」


 それでは失礼します、と言って一旦医療班は医務室を後にした。

 二人きりになった室内で、ディルは苦しげに呼吸するエルピスの頬を撫でた。けれど、痲薬のもたらす効果は、それさえも鋭敏に刺激として受け取ってしまうようだった。ん、と甘やかなエルピスの声が漏れる。反射的にディルはエルピスから手を退いた。今のエルピスは、エルピス自身が誰にも見せたくないものだろうと思ったからだった。

 放っておくべきだろう。ディルは踵を返して医務室を出ようとした。

 だが、エルピスの手がそれを阻んだ。振り返ると、熱に浮かされたようにエルピスが、赤い舌でディルの指先から手の甲までを舐めていた。欲望に突き動かされるままに、ディル、と何度も名前を呼びながら手へ愛撫を繰り返す。もっとというように、性的に渇望していた。


「ディル、でぃる……触れて、私にも、ふれて……」


 その言葉がエルピスの本心ではないことくらい分かっている。ディルは盛大に溜息を吐き出し、椅子を引き寄せて座る。ディルはエルピスの手を取ると、指先を舌先で舐めた。ぁ、と甘い声がエルピスが上がったが、ディルは手を退いてエルピスの頭を撫でた。


「……お子様にはまだ早い。エルピス、安心しろ。キョウが薬を作っていてくれる、明日には全て元通りだ」


 それまでは耐えろ、とディルは言うとぎゅっと手を握りしめた。エルピスは淫らに身体を震わせ、涙を浮かべてディルの名前を呼ぶが、ディルはそれを「もう少しだ」と言うことでなだめた。同時にこんなにも苦しむエルピスに何も出来ないことが歯痒かった。酷い怪我を負ったエルピスを見て、痛む心にディルは自問する。

 これまで犠牲になっていったパートナーにも、こんな感情を抱いただろうか、と。

 返って自答は、冷酷な己の目だった。

 パートナーであっても、決して内側に立ち入れず、裏切りと分かれば容赦なく殺した。「正義」の為に血に濡れた手だ。

 そんな手が今、エルピスの髪を梳いて撫でている。大丈夫だ、と語りかけながら。

 一晩中、ディルはエルピスに付き合っていると、明け方頃、駆け足でこちらに来る音が聞こえた。医務室のドアを開いたのはキョウだった。キョウは解毒剤を手に、ディルに向かって笑った。


「これで第三量子課程への編入はナシだろ?」


 そう疲弊した顔で笑うキョウの頭を撫でてディルは笑う。


「ああ。二度と編入の話はナシだ」


 ディルはその薬剤を手に、医師を呼んだ。エルピスの中へと解毒薬ははあっという間に身体へと巡っていった。

 正常になった呼吸をするエルピスを見落としてディルは息を吐く。長い夜はこうして漸く、終わった。


 ディルは考える。

 眠るエルピスを見て、考える。心は揺れ動いていた。らしくもないと思った。

 思えばエルピスと出会ってからずっと、ディルは今までの感覚を、感情を、失いつつある。取り戻しつつあると言った方が正しいのかもしれない。いずれにせよ捨ててきたものが、エルピスと出会い、過ごす内にまた、拾ってしまった。

 ディルは拳を握る。

 決断するべきなのかもしれない。




***



 


 あれから一人でエルピスがベッドから下りられるようになった頃、エルピスはリハビリがてら広い城の中を歩いていた。痲薬に犯されていた時は正直言って、記憶があやふやだ。ディルに何か──欲しい、だの卑猥な事を言ったような気がするし、何も言っていないような気がする。ディルに問い質してみたこともあったのだが、ディルは「別に何も言っていない」と淡々と答えるだけだった。

 だがもし、エルピスのあやふやな記憶が正しかったのなら、とんでもないことを言っていたのではないか。エルピスは中庭のガゼボの中にあるベンチに座り、ぼうっと空を見上げる。


 ──ディルを求めたのだろうか? あんなに強く、求めてしまったのだろうか?


 それは痲薬の所為で、誰でも良かったのか。

 それともディルだから、ディルと溺れたかったのか。


 分からない。

 そもそもエルピスは恋というものが分からない。

 ただディルが他の女性と親密なのは、嫌だ。触れ合っているのを見るのも、嫌だ。これは恋といって良いのだろうか。単にパートナーを奪われたことに対する苛立ち、なのか。中庭の木々に止まっていた小鳥が仲睦まじく囀る。あれは、愛と呼ぶのだろう。恋とも呼ぶのだろう。

 自分はディルが、好きなのだろうか。

 繰り返し考えていると、

 

「エルピス」


 不意に背後からディルに声をかけられる。丁度考えていたところだったのでエルピスはびくりと身体を震わせ驚く。


「ディ、ディル。びっくりした……」

「……今日も気の抜けた顔をしているな」


 いつも通りの辛辣な言葉。けれど、ディルの表情は鬱々としている気がした。満月色の双眸が悲しげに見えるのは気のせいだろうか。そんな目をして、ディルは声の色だけはいつもと同じようにエルピスを呼ぶ。

 

「応接間に来い。話しがある」

「はい……分かりました」


 立ち上がって、エルピスは歩き出す。

 まだ少し痛む足を引きずるように歩くと、ディルはゆっくりと歩調を合わせる。そのさりげない優しさが嬉しい、と思ってしまう。小さく笑えば、ディルが「なんだ?」と訝しげに見下ろす。エルピスは目を細め、ディルの金の瞳を見詰めて言う。


「ディルは優しいなと思ったんです」

「……何を狙っている」

「狙ってないですよ。ただ──ディルは私に自由をくれたので」


 ぴたりとディルの足が止まり、エルピスもまた止まる。エルピスはディルを見上げて言った。


「99回の呪縛から解き放ってくれたのはディル。あなたなんです。他人から見て優しくなくても、私から見たら、ディルは──」

「やめろ」

「え?」


 ディルは冷たい目でエルピスを見た。いや、わざと冷たい目をしている気がした、


「行くぞ。感傷に浸る必要などない」

「はい……」


 黙ったまま、二人歩く。歩幅は合わせてくれているのに、いつもより距離が遠く感じる。それが不安だ。歩く度に不安感は肥大していく。応接間にに辿り着くと、テーブルの上に書類があった。


「座れ」


 命じられたままにエルピスは座る。重い静寂が落ちた。

 ディルは金の瞳で書類を見返す。それから、溜息をついてから漸く、エルピスを見た。


「単刀直入に言おう」


 嫌な予感がエルピスの胸を過った。

 けれどディルの言葉は止まらなかった。



「お前とのパートナーを解消する」



「…………ッ!」


 胸を、激しく鈍器で打つような痛みが襲う。


 これまで色々な傷を負ってきた。けれどこれは。その99回の人生の中でも、酷く重い痛みだった。脳がぐらぐらと揺れて何も考えられなくなる。どうして。思考が真っ白になる。喘ぐように、必死に呼吸を整える。

 ディルの前で無様な姿はこれ以上、晒したくは無い。


「……それは……今回、私が失態を犯したからですか?」


 ディルは沈黙の後、答えた。


「……それもある」

「それもある……というのは、私は他に、間違ってしまったのでしょうか……?」


 パートナーの解消。信じられなかった。信じたく無かった。けれど、もしかしたら驕っていたのかもしれないとも思った。ディルの隣にいるのは常にエルピスなのだと。だとしたら何と滑稽な存在だ。

 ディルは黄金色の瞳を彷徨わせ、答えた。


「……俺の問題だ」

「ディルの問題って……何ですか? 私は、それを聞くまで納得できません。立ち去れても殴られても、動きません」


 内心、焦っていた。縋っていた。もしもパートナーという糸が切れてしまったら、ディルと二度と会えなくなってしまう。


 ──嫌だ。


 嫌だ、と心の中で叫ぶ。

 こんなにも鋭く哀しみが胸を刺す感情を知らない。苦しい。痛い。怖い。嫌だ。

 ディルは黙ったまま答えを待つエルピスに、小さく溜息を吐いた。


「お前がいることで俺はいつも通り仕事ができなくなるからだ」

「……それは、どういう」

「個人的な感情に振り回されてしまうんだ。以前だったら簡単に切り捨てられたことも、お前だと……違ってくる。これが理由だ」


 ディルの返答に、エルピスは言葉を失った。

 これ以上、どうしていいか、分からなかった。何と言葉を返してディルと一緒にいられるのか、分からなかった。ディルはエルピスを思って、こう言ってくれているのだ。切り捨てることができないからこそ、もう二度とエルピスが傷つかないようにしたいのだ。


 ディルは優しい。


 優しい彼は自分を思って危険から遠ざけようとしてくれている。エルピスだってそんなことは理解できる。

 けれど、心配してくれて嬉しいと思うべきなのに、エルピスはこんなにも憎くて堪らない心配などないと思った。

 ディルは無言のままのエルピスの前に、いくつか書類を提示し、事務的に話し始めた。


「これまでパートナーとして働いてもらった礼だ。幾つか物件と一生困らない程の生活費を用意した。またもし何かあった場合に王室に直接連絡できる通信機も用意した。他にお前が望む何かあるなら────っ!?」


 エルピスは机に置いてあった水を、ディルに向けて投げつけた。ぴちゃん、とダークウッドの髪が濡れ、その先から水が滴る。その金の瞳が驚いたようにエルピスを見ていた。殴られても舞わない。罵られても構わない。

 ディルは、優しい。

 けれど。


「──あなたの『優しさ』を私に押しつけないで下さい」


 エルピスは痛む胸を堪え、言った。ただその目はまっすぐにディルを見ていた。

 ディルの金の瞳とまっすぐに向き合う。エルピスは静かに切り出した。


「黙れと言われても今日は黙りません。……約束したじゃないですか。私の命を貴方に預けると。そして貴方は言った。私の命をを預かること。そして預かるには覚悟すると……その約束、忘れていませんか?」


 エルピスは続ける。


「確かに今回私は失敗し、ディルに迷惑をかけてしまいました。けれど、元よりあなたに預けたこの命。たとえどのような尽き方をしても、構いません。そして貴方は、その死を持ち帰る……覚悟を、してくれた。……ディル。私はちゃんと聞きたいです。あなたを振り回すという、個人的な感情を」

「それは……」


 ディルは言いかけて口を噤む。

 水が、ディルの髪の先から落ちる。静けさの後、濡れた髪もそのままにディルは口を開いた。


「……俺はお前のことを、いつの間にか、外側の人間ではなく内側の人間として迎え入れてしまった」


 ディルは自嘲と共に答えた。


「それは俺にとって……大切な人間だ。大切な人間を作ることは、強さと同時に、弱みを作ることだ。俺は、いつどこで恨みを買うか分からない。白のエレメンツで身を隠そうとも、隙が生まれる可能性もある。……だから俺は、これ以上大切な人間を作りたくないと思った。だから……俺の傍から引き離したいと思った」


 金の目がエルピスを見て、言う。優しい満月色の瞳はどうしてと問いたいくらい悲しい。


「……エルピス。お前はもう、簡単に切り捨てられる存在じゃないんだ。だからこそ、エルピス。もうお前とパートナーでありたくないんだ。お前には穏やかな場所で、誰かと恋をして、幸せに──」

「そんなの嫌です」


 エルピスは遮るように言う。


「エルピス。理解しろ。その方がお前の幸せに」


 ディルが言いかけた言葉を、エルピスは机を叩き立ち上がることで、遮った。


「そんな仮初めの幸福なんかいりません……! 私は、私以外のパートナーがディルなんて、嫌です! 嫌なんです!」



 だって──、と。



 そう言いかけた言葉が分からずエルピスは飲み込む。

 何が言いたかったのだろう。声帯がこれ以上動かない。だって、どうしたかったのだろう。どうしてほしかったのだろう。

 

 ──分からない。



「どうした、痛むのか?」

 

 ディルが優しく骨折した腕に触れる。その優しい目が、苦しい。いつもだったら馬鹿者なんて言い飛ばして、冷淡な瞳で見るくせに、どうして、なんで。痲薬で苦しんでいる時も一晩中一緒にいてくれて、エルピスに手荒なことなんてひとつもしないで。


 なぜ、どうして。


 エルピスは分からない。


 ディルの気持ちも、なにより──エルピス自身の気持ちも。


「……エルピス?」


 どうしていいか分からない。ただじわりと勝手に目が潤み視界がぼやける。

 ディルに触れられていた痛む手を振り解いて、エルピスは立ち上がる。泣くつもりなんてなかったのに、涙が出た。


「おね、がいします……お願いします……私を、パートナーにして下さい……捨てないで、下さい……」


 ぽた、ぽた、と雨のように静かに。エルピスは涙を落とす。

 ディルの瞳が見開かれる。

 エルピスは涙を流しながら、言う。


「あなたに預けた命が失われるのではなく、捨てられるというのなら、私の命は何処へいけば良いんですか……? あなたに預けた命が、あなたの手の中でなく、違う場所で失われるというのは──地獄でしかない」


 エルピスは不器用に笑った。


「私、怖いんです。ディルが私を自由にしてくれたから……ディルと、離れてしまったらまた、同じ運命を辿る気がして、本当はすごく、怖いんです。これは、身勝手な願いです。私をディルの内側の人間として認めてくれるのなら、私をパートナーとして、骨の髄まで使って良いので──どうか傍に、いさせてください。お願い、します」


 どうか。

 どうか、この人の傍に。


「……エルピス」


 ディルが立ち上がる。見上げると満月色の双眸が見下ろしていた。その綺麗な人は、エルピスをそっと抱きしめた。


「本当にお前は馬鹿だ……分かった。お前は、俺のパートナーでいろ。ずっとだ。だが……俺はお前が命を落とすことは許さない。死ぬとしたら──俺の腕の中で死ね」


 その声に慈しみの色があって、エルピスは目を見開いたあと、ディルの腕の中で笑った。


「それは……とても幸福なことですね。ディルとなら、どんな場所でもきっと、幸福に死ねる気がします。……貴方に命を預けて良かった」

「……馬鹿者。命を預けられる方の身にもなれ」


 そう言いながらもディルはエルピスの髪を梳く。エルピスはより一層強く、しがみつくようにディルの身体に抱きしめる。あたたかい。爽やかな香水の匂いがする。すりと頬を擦り付ける。安心する。けれど、胸の鼓動も早くなる。


 これは、何?



 誰か教えて。

 そうしたら──この胸の苦しさも、楽になれる気がするから。





***





「結局パートナー解消できなかったようですね」


 執務室でクレイがそう言い、ディルは「ああ」と頷く。クレイは資料に目を通しながら言う。


「……私刑にしたんですね」


 何もかもお見通しといったようにクレイは言う。


「そうだ」

「兄上がそれほど感情的になるのも珍しい。矢張り、エルピスさんだからですか?」

「……優秀なパートナーがあんな目にあったんだ。怒りもする」 


 ディルは煙草に火をつける。クレイはディルを見る。


「兄上はエルピスさんが好きなんですか?」

「……何を言っている」


 理解できずに眉根を寄せる。だがクレイは笑う。


「人を好きになったことのない兄上には、分からないでしょうね」

「クレイ……もしかして俺があいつに恋をしているとでも?」

「おや違うんですか?」


 楽しげに目を細めて笑うクレイに、煙草の煙を吐き出してディルは嘲るように笑う。


「馬鹿を言え。9つも年の差があるんだぞ。あって妹のような感情だ」

「妹、ねぇ……それなら兄上。私がエルピスさんのことを好きになっても構いませんよね?」


 ぴたりと煙草を吸う手が止まる。鋭い視線をクレイに向けるが、クレイは余裕に満ちた表情をしていた。 

 ディルは吸い殻を火のエレメンツで消し去ると、クレイへと言う。


「……お前があいつを好きだと?」

「ええ」

「……黒のエレメンツに恐怖していたというのにか?」

「彼女の本質はそうではありません。平凡ながら、ひたむきに何かに取り組む姿こそが、彼女の本来の姿ですから」


 そこまでクレイが言い、ディルは机を叩く。


「……お前にあいつの何が分かる」

「それでは兄上、反対に聞きます。兄上こそ、エルピスさんの何を知っているんですか?」


 クレイの問いに、答えを窮する。

 ディルが知っているエルピスは、エルピスが99回同じ人生を生きて死んでいるかで、詳しいことは知らない。断片的な情報だけで、ディルは──エルピスのことを何もかも、知った気でいた。

 どんな茨道をエルピスが歩んできたなど、ディルは全く知らないというのに。

 クレイの問いはディルの自信を揺るがすには的確だった。


「……まぁ安心して下さい。私がエルピスさんを好きだというのは冗談ですから」


 クレイはそう言うと立ち上がった。


「ただ兄上。兄上は皇子です。いつか──何か大切な物と天秤にかけられる日が、来るかもしれません。その時、どれほどその物を知っているか。自分の中でどれほど大切なのか。……そういったものが重要になってくると思います。それをお忘れ無く」


 執務室からクレイは出て行く。

 一人残った室内でディルは、してやられた、と舌打ちした。

 ディルは傲慢なやつを突き落とすのが好きだった。だが、今はクレイによって突き落とされたのはディルだった。


 エルピス。99回火刑にかけられ、死んだ女。魔女と呼ばれた女。黒いエレメンツ。

 「無」にする、力。


 そこまで考えてディルは一人笑った。

 何て己は傲慢な男だ、と。 


 自分はエルピスを知らない。何も、知らないのだ。





 

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