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不思議な事件が起こる学校で【原作版】  作者: 楠木 翡翠 / 黒崎 由夜
第6章 9月 テレビ撮影で起きた悲劇〜バトルと映像と音声のハーモニー〜
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8話 覚悟〜すべてのものが失われる時〜

 紫苑を抱きかかえたベルモンドはある小部屋に辿り着いた。

 その部屋は彼女にとっては見慣れた部屋で普段吹奏楽部が使う楽器や譜面台がたくさん置いてある倉庫のような部屋である。


「んー……。ここはどこ?」


 紫苑は目を覚まし、自分の身体をよく見る。

 彼女はイスに座っており、身体にはロープで縛られ、さらには時限爆弾まで繋がれていた。

 その時限爆弾はご丁寧(ていねい)に4桁の暗証番号が打てるように電卓式の時限爆弾である。


「う、嘘……? 私、本当に、狙われてたんだ……」

「そうですよ。そのうち、あなたは私のスパイになるんですから」

「スパイ?」

「ええ。今から50分後に貴女(あなた)は洗脳される……。そして、私が与える任務をこなしてもらいます」

「ふーん……。その任務って何?」

「いい質問してくれましたね。それは……」

「それは?」

「謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン仮面(かめん)さんの正体を突き止めることです」

「……。ふーん……」


 紫苑はベルモンドの説明を訊いていたが、興味がなさそうな表情をしていた。



 *



 数分後……。


「暇だなぁ……。何かしたいけど手と脚が縛られてるから身動きが取れないんだよな……」


 数秒間、何をしようか考えた末……。


「歌でも歌って助けを待つか……」


 紫苑はすっと息を吸うと、彼女は好きな曲を1曲歌い始めた。

 その曲は『Jupiter』。

 高音と低音の音域が広くないと歌えない曲であり、彼女は我ながら歌が上手である。

 紫苑はその曲を歌いきり、ふぅーと息を吐く。

 黙ってその歌を聞いていたベルモンドが、


「……。貴女は意外と歌が上手なんですね」


とそっと口を開き、呟いていた。


「それはどうも」


 彼女はぼんやりと楽器ケースが置いてある倉庫を眺めた。



 *



 その頃、授業中の3年5組の教室は……。


「みんな、荷物や貴重品を持って避難しろ!」


 秋山は教室にいる生徒達に避難を促す。

 1人の生徒が彼に、


「先生、なんか歌が聞こえますよ?」


と首を傾げながら秋山に言う。


「ん? 本当だ」

「これって、紫苑のいる場所が分かる手がかりになると思うよ! 先生」

「でも、夏川さん大丈夫かな……?」

「大丈夫だよ! いざとなったらニャンニャン仮面さん達が助けてくれるからさ!」

「そうだな。いざという時はあの3人に任せるとしよう。みんなは早く避難しろよ!」

「ハーイ」



 *



 一方の化学室は……。


「みんな、避難して! ん? なんか歌が聞こえるけど……」

「本当ですね」

「どこから聞こえてくるんだろう……」

「先生、それって、先生のクラスの人がいる手がかりになるんじゃないですか?」

「そうだね! みんなは早く避難してね! 私はちょっと様子を見てからくるから」

「ハイ」

「分かりました」

「先生、気をつけてね?」

「うん、分かった」



 *



 春原は化学室から出て行く生徒達に紛れて生物室に向かう。

 誰にもばれていないことを確認し、生物室のドアを静かに閉めた。


「Please give your dream!」


 右手の指を鳴らし、いろいろと変身する。

 ちなみに、短縮バージョンである。


「変身終了! 私は謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサ!」


 彼女は黒シャツと白いスカート、半袖の無駄に長い白衣を着用し、試験管を両方の手に1本ずつ持ち、ポーズを取った。



 *



 一方の秋山は教室棟と管理棟を繋ぐ1階の渡り廊下にいた。


「All your start story. Please tell your history!」


 彼にも変身するコールが存在した!

 ミサやニャンニャン刑事(でか)に比べて長いコールである。

 刀を出し、一瞬で脱衣する。

 そして、刀をしまう時には一瞬で着衣完了される。

 これは通常なのか短縮なのかは分からないが、こんな風に変身するようだ。


「変身終了! オレはニャンニャン仮面! 今日も頑張っちゃうぞ!」


 彼はネコ耳で仮面をくっつけており、何やら変なポーズを取っていた。



 *



 ミサとニャンニャン仮面は管理棟2階の踊り場にいた。

 2人は歌が聞こえないか耳をすませてみる。


「まだ、歌が聞こえてくるね。上から聞こえてこない?」

「そうだな。音楽室の方でも探してみるか?」

「ええ、そうね。こんなところにバトンが落ちてる」


 ミサがバトンを拾い上げる。

 そのバトンはアルファベットの筆記体らしき文字で名前が刻まれているものだった。



 *



 ミサとニャンニャン仮面は音楽室に到着した。

 音楽室のドアを開け、中に入り、黒板を挟んで左右2ヶ所にドアがある。

 時限爆弾が爆発されるまであと25分……。


「どっちだろう? 私は左のドアにする」

「オレは右のドアにするぞ!」


 ミサは左のドアを、ニャンニャン仮面は右のドアノブを掴んだ。


「同時に開けましょ!」

「ああ! せーの!」


 ニャンニャン仮面のかけ声でドアノブを回す。



 *



 カチャ。

 双方のドアが同時に開いた。

 正解はミサが開けた左のドアだった。

「変態仮面、左のドアだったよ!」

「よし、彼女のところに行ってすぐに救ってあげよう!」


 ミサが改めてドアを開ける。

 そこには1人の女子生徒とベルモンドがいた。


「ついに……見つかってしまいましたね……。しかし、任務はまだありますよ」


 時限爆弾が爆発されるまであと20分。


「あっ、あなた達は……。噂の謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン仮面さん! 早く私を助けてください!」


 女子生徒は心の底から叫んでいた。

 ミサとニャンニャン仮面はあるものを見てその理由を探っていた。

 それは彼女が時限爆弾に繋がれており、身動きが取れない状態だからである。


「えっ、オイ! 時限爆弾に繋がれてるぞ!」

「4桁の暗証番号って何!?」

「適当に入れてみよう!」

「そうね!」


 ミサとニャンニャン仮面は電卓式の時限爆弾を止めるため、暗証番号を打ち始めた。


「えーと……。××××は?」

「違うみたいだな。今度は……××××。どうだ!」


 何回やってもなかなか当たらない。

 時限爆弾が爆発されるまであと30秒。


「謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン仮面さん、残り30秒を切ってますよ? このまま彼女がどうなってもいいんですか?」


 ベルモンドが脅すような口調で言った。

 焦るミサ達に祈っている女子生徒……。

 時限爆弾が爆発されるまであと10秒。

「えーっ! あと10秒しかないの!? 変態仮面、なんでもいいから早く打ち込んで!」


 ミサ達はかなり焦っており、ベルモンドは拳銃(注・今、彼が持っているものは洗脳用。)を構えている。


「残り5秒ですよ。3・2・1」


 たーんっ!


「うっ……」


 時限爆弾が爆発し、女子生徒はベルモンドの拳銃によって撃たれてしまった。

 さっきまでは純粋な女子生徒。

 しかし、今は洗脳されてしまったようだ。

 その時、ミサ達はバトンを見つめ、ミサはこう言った。


「このバトン……。彼女のものかもしれない……」


と。



 *



 カタンッ。

 ロープが外れ、洗脳されてしまった女子生徒が立ち上がった。

 彼女は身長160cm前後で意外とスラッとしている。


「さて、貴女は早速任務についていただこう……。ミサさんとニャンニャン仮面の正体を突き止めていただきたい」

「分かったわ、ベル」


 ベルモンドと彼女はこのようなやり取りをしている。


「私達は貴方達の正体を絶対に見破る!」


と言い放つ2人と、


「……」


 驚愕した表情をし、黙ってしまう2人。


「貴女……。なぜ、そんなことをするの?」

「そうだ。どうしてこうなったのか教えてくれ」


 ミサとニャンニャン仮面が彼女に問いかけた。


「それは……ベルからの指令だからよ。それに貴方達には関係ない」


 彼女は何気に冷たい口調で言い放ち、音楽室から姿を消した。


「……」


 ミサ達は再度黙り込み、その後、変身を解いた。


 それはそう、すべてのものが失われた瞬間だったのだ。

2014/11/23 本投稿

2015/08/13 改稿

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