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不思議な事件が起こる学校で【原作版】  作者: 楠木 翡翠
第6章 9月 テレビ撮影で起きた悲劇〜バトルと映像と音声のハーモニー〜
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6話 届けられた予告状

 長い夏休みが終わり、残暑が厳しい9月。

 ついに2学期が始まった。

 3年生の教室を覗いてみると、そこにはもう生徒がちらほらといた。

 さて、どんな話をしているのか耳を傾けてみよう。

 聞いている限りでは夏休みにどこか旅行に行ったのか、何をしたのかという夏休みの定番の話題で持ちきりだった。

 この時期からは進路のことも意識しなければならない時期にさしかかってきている。



 *



 チャイムが校舎に鳴り響いた。

 そのチャイムは夏休み明けにとってはとても懐かしく感じさせるものである。

 チャイムと同時に白衣を着た女性が教室に入ってきた。


「ハーイ。みんな、久しぶり! 教室は重要なニュースがありまーす!」

「なんだろう?」

「えっ!? 転校生がきたの!?」

「何々?」

「春原先生、早く教えてくださいよ!」

「気になっちゃうじゃん」


と生徒達がどことなくそわそわした様子である。


「転校生は残念ながらいないなぁ……。じゃあ、正解を言うよ。この学校の紹介がテレビ放送されることが決まりましたぁ!」


と春原が声を張り上げて言った。


「えっ!?」

「テレビに出られるの?」

「ホント?」

「凄い!」

「うん、そうだよ。あっ、そうそう。夏川は今日の放課後4組にきてって言ってたよ」

「ひょっとして……学校紹介のナレーションとかですか?」

「内容は言ってなかったけど……。とりあえず、行けば分かると思うよ」

「ハーイ」

「で、今日の予定は始業式のあとに実力テストが実施されるよ。えっと、午前中に国語で、お昼を挟んで英語と数学の順で実施されるからね」


 春原は本日の予定を手短に生徒達に伝えた。



 *



 時は流れ……。

 現在は2学期の始業式の真っ最中。

 全校生徒が体育館にイスを持って集まる最も重要な(?)式典である。

 1学期の学級委員である紫苑はいつもの癖で一番前にイスを置いた。

 ところが、2学期になり、違う生徒に学級委員を引き継いだことをすっかり忘れていたため、彼女は普通に出席番号順の列に並ぶ。

 校長先生の話に入った。

 その話は長くありがたいような内容のものを聞かされ、生徒達はあっという間に居眠り状態と化した。



 *



 校長先生の長くありがたい話が中心の始業式が終わり、生徒達はイスを持って教室に戻った。

 教室に戻ると実力テストの勉強にうつる。

 午前中に国語の試験を受け、昼休みを挟み、数学と英語の試験を受け、2学期の初日は終了した。



 *



 その日の放課後。

 始業式と実力テストを終え、紫苑は隣のクラスである3年4組の教室に向かった。

 福山に要件を聞くと、やはり、紫苑が予想していた通りの学校紹介のナレーションであり、渡されたものは約30ページくらいの台本らしきものだった。

 彼女はそれを受け取り、パラパラと見ている最中(さなか)


「じゃあ、この原稿を15日までに最低1回読んできてね。24にリハーサルをやって、25日が本番だから。それと15時から部活を始めるから準備してってみんなに伝えておいてね!」

「ハイ」


 紫苑は隣の教室から出、台本を鞄に入れ、音楽室に向かった。



 *



 部活を終え、スケジュール帳を忘れたことに気づいた紫苑は教室に戻ってきた。

 机の中を覗くと、それは見つかったが、何かが挟まっていた。


「……。手紙……?」


 紫苑はスケジュール帳に挟まっていた手紙を取り、鞄から筆箱を取り出し、その封をハサミで切った。


「えっ、何々!? 私に挑戦状!? それとも予告状とか!?」


 彼女は震える手で手紙を広げた。


『3年5組23番の夏川 紫苑さんへ』


という出だしだった。


「なんだろう……?」


 彼女は小首を傾げながら続きを読む。


『あなたの変身後の姿はニャンニャン刑事(でか)さんですよね?

 そのニャンニャン刑事さんが特殊な能力を使っているところを見てしまいました』


「えっ、っていうことは……。私がニャンニャン刑事だってことを知ってるということ?」


『今回のゲームは9月25日に実施します。

 その時にあなたを誘拐します』


「ひょっとして……。私、狙われてるの……? それに9月25日は学校紹介のナレーションの録音の日……」


 彼女はその手紙を読んで恐怖を覚えてしまった。

 なぜ、自分の変身後の姿を知っているのかと、自分が何者かに誘拐されなければならないのかと……。



 *



 紫苑が予告状を開けたのは始業式が行われた9月1日だった。

 あれから約3週間が経った9月24日の放課後……。

 学校紹介のリハーサルを終えた彼女は放送室から誰もいない教室に戻ってきた。


「はぁー……。あのゲームは明日かぁ……。私はどうなるんだろう?」


と言い、教室を後にした。



 *



 9月25日。

 ついにゲームの始まりの日の迎えた……。


 その日の朝、職員室では2人の教師が話していた。

 1人は白衣を着た女性で、もう1人は男性だった。


「ところで、秋山先生、こんな手紙が届かなかった? 何人かに聞いてみたけど、届いてないって言ってるけど……」

「あー、うん。届いてたよ。春原先生のところにも届いてたんだ」


 さて、どんなことが書いてあったのだろうか。


『9月25日にあなたのクラスの女子生徒さんを誘拐します。

 返してほしければ、今日これから実施されるゲームに勝っていただくことです。

 もし、負けた場合は彼女を洗脳し、私のスパイになっていただきます。

 ちなみに、彼女にはすでに予告状を届けてあります』


と書かれていた。


「『女子生徒さん』って誰のことだろう? 私達のクラスの女子は31人もいるんだから」

「うーん……。分からんなぁ……」



 *



 同じ頃、教室では……。


「おはよう! 今日、私、テレビカメラに映ったんだ!」

「嘘!? うちも映ったよ!」

「マジで!?」

「マジで」

「凄く嬉しかったなぁ。テレビに映ったこと……」

「採用されてるといいよね?」

「だよね」

「うん!」

「ところで、紫苑、どうしたの? なんか追いつめられた顔をしてるけど……」

「……。今日、学校にくるのが怖かった……」

「ひょっとして、あの手紙……?」

「手紙のこと、知ってたの?」

「うん。ごめん! 言わなかった私達が悪いんだけど……。」

「うちからもごめんね。1学期の最後の方だったかなぁ……? なんか見慣れない男子が紫苑に用があるって言ってたけど……」

「その時に紫苑の机の中に手紙を入れて出て行ったんだよ」

「なるほど……。そうなんだ……。教えてくれてありがとね」

「そうそう。紫苑、学校紹介のナレーション、頑張ってね」

「私達もいっぱい映るようにするからさ!」

「うん。ありがとう。みんながそう言ってくれると心強いよ」

「えへへ」

「行ってらっしゃーい!」

「行ってきまーす!」


 クラスメイトの後押しがあったせいか紫苑は台本を持ち、教室から放送室へ移動した。



 *



 今日は学校紹介のための映像の撮影をしている。

 朝の登校シーンから、授業風景、休み時間の様子や放課後、ちょっとした部活動の紹介らしきものが2日間かけて撮影される。

 紫苑は今日1日、教室にはいなく、昼休みにちょっと戻るくらいだった。

 彼女は1日かけて学校紹介のナレーションの録音が放送室にて行われているからだ。



 *



 昼休みが終わり、紫苑は放送室に戻ってきた。


「じゃあ、残りのナレーションを撮りましょう! 夏川さん、準備はいい?」


 番組ディレクターが紫苑に問いかける。


「ハイ!」


 彼女は返事を返した。


「じゃあ、行きまーす! 5秒前4・3・2・1、スタート!」

「私達の学校の歴史についてを紹介します。昭和○○年4月、××高等学校からこの高校の歴史がスタートしました。……」

「……」


 紫苑はそのシーンを読み上げたが、番組ディレクターからのOKはなかなか出ないようだ。


「あれ……? ディレクターさん……?」


 紫苑は何かおかしいと感じ始めた。

 遠くから誰かに見られているような気がした。

 よく見たら、番組ディレクターが動きを止めていたのだ。


「時間が止まってる……」


 これがゲームの始まりなのである……。

2014/10/13 本投稿

2015/08/13 改稿

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