魔力と属性
セルヴィスの可愛さを延々と語り、セルヴィスを説得する案を強請る私。対する師匠はひたすら聞き流し、質問には否というばかり。心底鬱陶しいといわんばかり。
しまいには心底呆れたという眼差しを向けられて、
「話というのはそれだけですか?そんなくだらない質問をしに来たというのなら……、そこの窓から捨てますよ?」
・・・。顔は笑ってますが、後半は完全に本気の目です。
あの目はまずいです。まだまだ語り足りませんが、さっさと本来の目的を果たすことにしましょう!
『申し訳ありません、本題は別にあります。本当はヴェリアル・スライムについて、他にご存知ないかお聞きしに来たのです。少々気になることが起きたので。』
「それを早く言いなさい! 何があったんです?」
あ、心配させてしまいました。ですが悪いことが起きたわけではないのですよ、多分。
『実はですね。スライムになってから、私は水の魔力しか扱えなかったのです。けれど、なぜか昨日から僅かですが大地の魔力も扱えるようになったんですよ。』
私の申告に、言いたい事を悟って驚く師匠。そうですよね、おかしいですよね。
魔法は地・水・火・風・光・魔の6つに属性が大きく分かれています。そして、それらを操るには適正が必要。僅かな適正では魔法として顕現しない場合もありますが、例え僅かでも適正があるならば魔力にその属性を乗せるぐらいは出来るのです。当然、スライムになった時にきちんと確認したのです。〈適正は水だけ〉だと!
初心者や未熟な者ならば、魔力にその属性を乗せる事が出来ないという場合もあるでしょう。しかし私の場合は、元々は光以外の5属性を持ち、それらを完璧に操る術を手に入れていました。これでも悪魔と呼ばれた竜、出来ない筈がありません。
昨日の朝、昔からの習慣で魔力訓練をしていたら普通に出来てしまって絶句。聞いた事もない現象に、 もしやこの【すらいむぼでぃー】に元から備わっている能力なのかも!?と唯一知ってそうな人に聞きにきたのですが……。
「原因は不明、ですね。そもそもヴェリアル・スライムについても、貴女と出会う遥か前、ある国でたまたま出会った古き精霊に聞いたのですよ。既に伝えた以上の事は、私にもわかりません。」
『古き精霊、ですか。探すのは無理そうですね……。』
精霊とは魔物や魔族、人間といった≪魔力を持つ生物≫と対極の、自然の生気を糧とする魔石など持たない者達の総称。小さい花の妖精から大岩の精霊、金属の精霊と色んなのがいます。特に6大属性を司る精霊は竜族以上に長生きで知識が豊富な場合もあるのです、が。
彼ら、滅多に姿をみせてくれないんですよねぇ。特に魔力が強い者は何故か精霊に避けられるので、私なんか会った事すらありません。一度ぐらい会ってみたいのに。
『操れる魔法が増える分にはありがたいのですし、特に問題もないんですが……、やっぱりこのぼでぃーの特性ですかねぇ。』
「いえ、案外、摂取している魔石の魔力が変な影響を及ぼしたとかの可能性もあるんじゃないですか? 魔石を食べる珍じゅ……イキモノなんて貴女ぐらいですし。」
『私がゲテモノ食いみたいなこと言わないで下さいよ。』
師匠と別れて100年とちょっと。久々に師弟そろって謎の現象についての話題やら、魔石の生成、取り込まれる際のシステムなど。話題は尽きず、ついつい華を咲かせてしまいました。
あまりに遅いからとセルヴィスが迎えに来てしまい、大変申し訳なかったです…。