ステキなお土産
「リリアーナ……?」
『へ?』
名前を呼ばれて反射的に振り向いたら、なんだか呆然とした様子のセルヴィスが。うん?どうしました?
「ふふ、成功したようですね。リリィ。その魔道具は、そこの愚かな男でも貴女の言葉を理解できるようにするアイテムなのですよ。」
『え。』
「正確には貴女が伝えようとした言葉を、私の術によって相手の脳に直接つたえます。音として伝えるわけではないので、意識すれば特定の相手にだけ言葉を届けたりも出来ますよ。傍から見たらピィピィ鳴くスライムと会話する変人ですけど。」
これで思う存分に命令し、その男をこき使ってやりなさいね、とニコニコと告げる師匠。えぇと…要は伝思魔法でしょうか。伝思魔法とは脳裏で浮かべた言葉を、相手の脳内に音として直接届けるもの。テレパシーともいうそうです。普通は術者の言葉しか対象に届けられない筈ですが、師匠の使う『術』は魔法と色々違いますし。
────と、いうことは?
『あ、の。セルヴィス? 私の言葉がわかりますか…?』
「っ、あ、あぁ。」
『~~~~~~~っっ!!!』
その瞬間、歓喜で全身がプルプルと震えてしまいました。
なんて素敵なアイテムでしょう! これがあれば、今後は言葉が伝わらなくてもどかしい思いをしなくてすむし、リリアーナだった時のように言葉で交流ができるんですから!
脳裏に浮かぶ『大好きですよセルヴィス』『俺もだよリリィ』と笑い合う私とセルヴィスの姿。
えぇ、昔はそう言おうものなら嫌そうな顔で『何それ気持ち悪い』とか言われたものですが、今は違います! スライムのリリィには甘いセルヴィスですもの、私がリリアーナだとバレなければイケる!!
ペット扱いだとか、悪魔のプライドを投げうってるだなんて些細な問題です。ペット扱い?上等です。セルヴィスと仲良くできるなら、そんなものは投げ売りますよ! ありがとうございます、師匠!
「喜んでもらえたのは良いのですが、浮かれすぎですよ…。いつからこんな阿保の子に……。」
これからのラブラブペットライフにすっかり舞い上がってピョンピョンコロコロ悶える私を、なぜか残念なものを見る目で嘆く師匠。いいじゃないですか、今は悪魔じゃなくてスライムなんですし。
機嫌良く転がってたらヒョイッと誰かが私を抱き上げました。見上げるとちょっと困惑した表情のセルヴィス。なんかジッと見られています。
『どうしました?セルヴィス。』
「あー、その……お前の声、って……、」
「ああ、そこの痴鈍? リリィの声はリリアーナをモデルにしています。私からのちょっとした嫌がらせですよ。毎日リリアーナを思い出して、罪悪感に苦しみなさい。」
「……っ アンタの仕業かよ。性格ワル…。」
『声?』
セルヴィスの様子が変だと思ったら。私の声がリリアーナの声と同じで戸惑っていたんですか。
うーん、師匠が嫌がらせだと言ってますが、たぶん仕方ない事なのでしょうね。
伝思魔法で相手に届く音。あれは正確には術者が無意識に『自分の声』だと認識しているものだと、師匠が昔教えてくれましたもの。私の場合、それは当然『リリアーナ』の時のもの。師匠の使う術でもきっと同じなのでしょう。
嫌がらせでそうしたと言っておかないと、本当に正体がバレてしまいかねません。
「さーて、用事もすみましたし、帰りますか。」
『え、もうですか? 私、師しょ…いえ梛様にご相談したい事が沢山あるんです。もう少しだけ、』
「リリィのお願いは聞いてあげたいですが、これでも色々と忙しいのですよ。今日は貴女にプレゼントを持ってくるのと、ついでにそこの阿呆を試しに来ただけでして。また今度ゆっくりと会いに来ますよ。」
「さっきから愚かだ痴鈍だ阿呆だと…っ、二度と来るな狐!」
「あら、嫌われたようで。じゃあ絶対に来ますからね、リリィ。」
『は、はい。お待ちしてます。』
どうしましょう。セルヴィスがものすっごく師匠の事を嫌ってしまったようです。師匠はセルヴィスの事を良く思ってないようですし、人見知りで警戒心が強いセルヴィスがああなるのも分かるのですが。
出来たらもう少し友好関係を結んで欲しい……というのは無理でしょうか。
悪魔時代から友達と呼べる存在がいなかった(ユーフィードは弟のようなものですし、ディロック達とは知り合い程度です)私には、ちょっとこの問題を解決するのは……、
────うん。無理ですね!




