【セルヴィス視点】過去話・悪魔との出会い~3
悪魔の意図はわからなかったが、住んでいいというなら好都合。
セルヴィスは悪魔を殺す為に、悪魔について回った。
悪魔の生活は基本的に人間と変わりないようだった。
家の前にある畑で野菜や薬草を育て、森で獣や魔物の肉を狩り採取をし、調理して食べる。
違うところといえば豊潤な魔力を使って魔法の水を、火を、風を、生活に便利に取り入れている。
悪魔は当然のようにセルヴィスの食事なども用意してくれたが、素直にそれに手をつけれる筈もない。空腹を訴える腹を、森で見つけた木の実や近くに流れる川の水でどうにか誤魔化していたが、子供の身体では何日も持たない。
密かに悩んでいたら、悪魔が唐突にセルヴィスを見て「畑…、勝手に入っていい。家の物も、勝手にしていい。」と告げてきた。
……見透かされてるようで悔しかったが、畑に植わったままの食物なら毒の心配もない。
その内、家の中に保存されている食物の山を見つけ、そこから食べるようになった。
悪魔の家に来て一週間ほどした頃、悪魔に2階の一室に連れてこられた。
「ここ、客室、セルヴィスの部屋。今日から、こっち。」
それだけ言って扉を開けてくる。
今日からはこっちに住め、ということか?そう思って入ってみたが、中はいたってシンプルな部屋だった。ちゃんとベッドなどの家具も揃っている。
「客室って、客が来たらどうするんだよ。」
「100年、誰も。だから、いらない。」
100年誰も客が来てない、という割には綺麗な部屋だ。まるで掃除したように、と思って気が付いた。この悪魔はセルヴィスが居ついた日から昼間の一定時間だけ、2階でガタガタと大きな音をさせていた。何の音をさせているのかと警戒していたが……、まさか。
己の思考を全力否定していると、一緒に入ってきた悪魔がクローゼットを開ける。そこにはどういう訳か古着だがセルヴィスが着られそうなサイズの服が入っている。
「…これ。」
「古着。見つけてきた。新しいの、買う。それまで、我慢。」
どうやら悪魔か誰かの古着らしい。それをわざわざ探して、更に新しいのを買うつもりか?
「い、いるか、こんなの!!」
「着替え、いる。着ろ。」
用事は済んだとばかりにそれだけ告げると部屋を出ていく悪魔。
……わからない。
……訳がわからないっ!!
なんで父親の仇を討ちに来て、その仇に衣食住を世話されてるんだよ、オレは!!
見てろ、子供だからって馬鹿にしていられるのも今の内だけだ!!
ムキになったセルヴィスはますます悪魔について回るようになった。
悪魔は畑に出ればそこで育つ作物が食物かそうでないかを説明し。
森に出ればどの薬草が何に効くかを教え。
狩りをすればどの獣がどういった攻撃に弱いか。
セルヴィスが嫌でも覚えてしまう程、何度も何度も繰り返し教えた。
そして───人間に出会いそうになれば、襲うどころか必ずその場から離れる悪魔に、セルヴィスはますます混乱することになる。