あいでんてぃてぃ
───どうしましょう。
うっかりしてました。ボケっとしてました!
あの一角猛虎を倒したのが私だという事をセルヴィスに喋らないよう、ユフィ―に口止めするのをすっかり忘れていましたぁ……っ
当のユフィ―は私がかつてユフィ―の家と行き来するのに敷いた転移魔法陣を使って、魔物の肉と一緒に家に帰ってしまいました。どうしましょう、通訳すらいません!
だ、大丈夫でしょうか。セルヴィス、私の事を凶暴だとか危険だとか思ってないでしょうか。怖いスライムだと思われて捨てられたりしません、よね?
「……、スライム。」
「ピッ!?」
「? お前、その、あー。……そうだ、怪我とかないか?あんなの仕留めたんだろ?」
「ピ?ピュイーィ(え?あ、ハイ大丈夫です)」
あれ?なんか、物凄く躊躇って話しかけられた割には、普通に心配されています、ね。いつもの優しいセルヴィスですよね?怖がられてはいないんでしょうか。
「あー、その……、ハァ。ゴメン、駄目だねオレ。本当ごめんスライム。」
「ピ?」
「ムカつくけどアイツの言う通りだよ。名前を付けてないとか、一緒に暮らしてるのに酷すぎるね。」
「ピピィ!?ピーッピピッピピー!!(そんな事気にしてたんですか!?良いんですよ私は全く気にしていません!)」
「これ、多分『気にするな』とか慰めてくれてるんだろうなぁ。そんな優しいスライムに名前つけないとか、ホント……。」
あぁぁ、そんな事気にしなくていいのに!名前を呼ばれても笑顔の一つも見せてもらえなかった昔に比べたら、優しくしてくれるわ笑顔を見せてくれるわ、今の方がよっぽど幸せですよ私は!伝わらないのが もどかしい!!
「落ち込むのは後にしよう、名前も……。あのね、スライム。話しておかなきゃいけない事があるんだ。」
「ピ?」
「あのね、スライム。小さいスライムは弱い魔物だし人間が連れてる限り、普通は従魔だと思って町に出ても危険視されたりはしない。」
そうですね。大きいスライムならともかく、こんな手の平に乗るようなサイズ、人間の子供でも倒せますもんね。
「けど人間は、魔物の中でも人の会話を理解できるほどに高い知能があって、人の手に負えない程の強さ──魔力を内包する魔物の事を『魔族』と呼んで恐れてるんだ。そういう魔族が町に現れれば、必ず討伐しようとする。」
そうですね。町に行かなくても討伐しようと何度も森に狩人が来ましたもんね。かつてはそれで散々狙われました。
恐れてるのにわざわざ森に来て狩ろうとするなんて、ある意味、人間って恐れ知らずですよね。
「で、今のスライムは、言葉を理解したり魔法を使うところを他の人間に見られたら、下手したらスライムに化けた魔族とか考えられるかもしれない。」
「ピピィ!?(何でですか!?)」
本当に何でです!?
そりゃちょっと珍しいそうですが、たかがスライムですよ!?悪魔でもなくなった私をそんな警戒視する必要なんて、
必要、なんて。
───セルヴィスが、足元に置かれた毛皮を見ています。
一角猛虎の毛皮。人間には一人で太刀打ちするのがちょっぴり難しい、魔族ではないけど強い魔物の、なめらか~な毛皮を。
傷一つない、ピッカピカの毛皮。
狩ったのはスライムの、私、ですね?
「下手したら魔族として討伐対象にされかねないよ。」
ですよね!!
嫌ですよぉ、あんな常に警戒して狩人見つけるたびにコソコソ隠れる日々に戻るのはぁ!
「ピゥゥゥ~…。(やだぁぁ~)」
「しょんぼりして、理解できたみたいで何より。大丈夫、たまに町に行く時とかに気を付ければ良いだけだから!魔法を使ったりしなければ目立たないし、そんなに心配しなくて大丈夫!!」
「ピィ…。(わかりました)」
本当に気を付けましょう。特に、狩りの時。絶対に人間が立ち入れないような場所に狩場を限定して、ユフィ―にも警戒しててもらうようお願いしましょう。そうすればセルヴィスの言う通り、見た目はただのスライムですし、喋れないから人語を理解できる知能がある事も、ましてや魔法が使えることすら気づかれないはずです!
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
「じゃあ、一番大事な話が終わったところで、名前の件なんだけどね?」
「ピ!」
え、何かつけてくれるんですか?え、セルヴィス命名!?うそ嬉しいっ!!
「お前、オスとメス、どっち??」
………………!!? ど、ど、どっち………っ!!??
アイデンティティとは自己と同一化している要素。また、さまざまな立場における自分自身の在り方について、「これがほかならぬ自分なのだ」というまとまりをもった確信のことである。~wikipediaより~




