~輝かしい未来だと思ってた~
伏線回
お使いのPCは正常です
━━8・━【重%】ゲーム@リアの&祝い━━━━━
―――お#”とう}*います!
&*より『人生』を3;い(=き、誠にあり…と+ございまH?
19W$年5月の出生以’、2S年の長き―わたり数多くFGHをご利?いた_}:した『人+「で0が、2^19年2A24日(&)16:|7をもちま<てクリアを確認#たし<¥た・
クQアに伴い、あな&の『人生#2の実績をす=て世!に還元し、魂を払い戻すこと9可’で)。―――
――――――――
―――――
―――
最初に思ったのは……なにこれこわい。
―――な%、あなたQ魂の~量を鑑”.結果、クリ/特典の配分は~~―――
その謎の文面は、聞こえもしない、見えもしない。ただ、〝わかる〟。
―――あらた|ま¥て、おめでとうございます―――
―――特-を※得し、『強く§ニュ…ゲーム』を始めますか―――
(いや、急に始めますかとか訊かれても……え?ってか私、生きてるの…?あの状況で?)
あの状況―――息継ぎどころか満足に身動きも出来ない苦しみ、走馬灯を見る暇も無く船のスクリューに身体を轢き潰される痛みと恐怖を思い出し、言花は自らの身体を掻き抱いた。……つもりになった。
(……WTF)
確かに動かしたつもりだが、腕を動かした実感がない。
それどころか、そもそも〝腕〟の存在を、延いては自らの身体の存在を実感できない。
何も見えない。何も聞こえない。自分の身体さえ感じられない。ただ……
―――特典・取;し^『強くて7ュー「ーム』を始めますか―――
その言葉だけが、まるで幼少期に刷り込まれでもしたかのように、意識にこびり付いてくる。
(…3分間だけ待ってもらえない?)
今の状況が飲み込めない。とにかく頭を―――在るかどうかは別として―――フル回転させて、状況の整理に努めることにした。
―――40秒で整#しな―――
(こいつ…出来る…!)
言花に顔があったなら、その挑発のような応答に思わず口角を釣り上げただろう。
だが、このおかげで、結果として彼女は3分間も時間を必要としなくなった。
相手がどういうモノであれ、どんな形であれ、応答が有り、それを言花が認識できたということは…。
(会話は可能、か。なら、状況の前に、先に整理すべき情報から欲しいかな。まず、私はあれからどうなったの?)
再びその時の苦痛を思い出しかけ、嘔吐きそうな思いになった。…が。
―――あな-は『人生』をクリアし0した―――
間違いなくトラウマと言えるような記憶なのだが、それを上回る衝撃で、迫り上がってきたものは霧散させられた。それほどに、返ってきた答えは予想の斜め上だった。
(…『人生』を…クリア…?)
思わずオウムのように繰り返す。
―――鮎川%花の死によりその『人生』をクリ-}ました―――
(やっぱり死んだの、私…。っていうか、死によりクリアって…それ、どっちかって言うとゲームオーバーって言わない?)
プレイヤーの死。それは言花が知るゲームに於いては、一部を除き多くの場合でゲームオーバー。即ち、クリアとは正反対のエンディングの迎え方であるはずだ。
だが、その言及に対してもまた、予想だにしない回答が返ってきた。
―――いいえ。何故なら!なたは本*のガ5オべラを知っmいます―――
(ガメオベラて…。何者か知らない相手なのに他人と思えなくなってきた…。いや、そんなことより)
聞き馴染んだ言い回しにやや脱力する。だが、それ以上に聞き逃がせない発言だった。
(私が…本当のゲームオーバーを知ってる…?)
ゲームオーバー。それはもちろん、今まで何度となく経験してきた。
『GAMEOVER』の文字が踊る画面というものを、親の顔より見てきたと言っても過言ではない。
(ゲームオーバーは、ゲームオーバーだよ。本当も嘘も無い)
そう、本当も嘘もない。
少なくとも、そのときに感じる悔しさや遣る瀬無さ、モノによっては却って楽しかったり嬉しかったり。この気持ちに限って言えば、紛れも無く本物だ。誰が何と言おうと、言花はこの持論を譲る気はない。しかし…。
―――そ〆じゃない―――
声無き言葉は、やはりというか、言花の予想を超えてきた。
―――本当のゲーム$ーバーは世界が無く×ること―――
(…―――!)
ゲームが無くなる。そんな終わり方を、言花は確かに知っている。それも、ごく最近に経験したばかりであった。
『バベル オブ エタニティ』―――小学生の頃から親しんだ、彼女の2つ目の人生とも言うべき世界。その、終焉を。
―――鮎川言花は∀にました。でも√川言花がプレイした世界は終わってない―――
―――鮎川言∬が解除した実績は≧れぞれ世界♫還元され―――
―――それぞれ他プ…イヤーの『人生』でコン‖∽ツを生むリソースとなります―――
―――鮎川言花の死。それ♭えも世界のコンテンツ≒あり、あなたの実績なのだから―――
―――あ∇たは『人生』最後≡実績解⊆―達成し『人生』をクリアし\のです―――
(死さえも実績…か。まるでネトゲみたい)
『リアルなんてクソゲーだ』。ネット上でよく見た言葉を思い出し、そう考えると、いくらか気が楽になるのを感じた。
ある日を境にログインしなくなるプレイヤー。それを1つの死だとすると、それがフレンドであった場合などは寂しいが、確かに一概にゲームオーバーとは言えない。
言花がそうだったような、〝逃げ場〟としての世界を必要としなくなった。それによる引退であるのなら、それはまさしく、祝うべきクエストクリアに他ならないのだろう。
(なるほどね。それで『ザ・人生~鮎川言花~』をクリアした私は、また新しい『人生』をニューゲームで始められる…ってわけ?)
未練、と言う程でもなく、かといって、何も思うところが無いわけでもなかった、鮎川言花としての『人生』。それを少しだけ惜しみつつも、新しいコンテンツが提示されれば、やはり無視できない。
そんな自分のゲーマー思考に、皮肉にも似た感情を懐きながら、それでも彼女の心は躍り始めていた。
―――いいえ。『強くてニュ@ゲーム』を始め〒れます―――
―――『人生』のク:アに伴い世界に還元されたあ・」の実績の量と質は―――
―――クリア後のあなたに払い戻9¥る魂の容量となります―――
―――しかしあなたの場合$払い戻される魂の容量の上限を超&るため―――
―――超過分をクリア特典として別枠で払い戻すことに”!ます―――
『強くてニューゲーム』。払い戻される魂。その容量と超過分の特典。
(なるほど、わからん)
言葉の内容を図り得る物差しを自分が持っていないことを察し、言花は考えることをやめた。
ただ、一点だけ気になった。
(特典…。具体的にはどんなモノなの?)
―――クリア特典の^¥はプレイデータの引き継ぎ―――
―――そしてエクストラオプシ-ンの付与となります―――
データの引き継ぎ。そう聞いて、無いはずの食指が動く。
(それはつまり…いわゆる前世の記憶?)
―――記憶や経験はもちろん’すが物や技術もすべて$き継ぐことが可能です―――
(勝ち組確定コースもろたで工藤!学歴大正義バンザイ!)
思わず言花は歓喜する。彼女は大学こそ国内で最難関の有名大学を卒業しているが、小・中・高では理不尽な苦労を強いられた『人生』だった。しかし、次の『人生』では生まれた時からそれらにアドバンテージが有るという。喜ばずにはいられなかった。なにより…。
(記憶が残ってるんならアカウント関連はそのまま使えるし、技術や経験も残ってるんなら子供のうちから大会とかで賞金稼ぎもワンチャン!?物も引き継げるってことはカードなんかも初期投資0から始められる。上手くいけば今まで勉強に充ててた時間やお金もゲームとかに費やせるむしろ生計も立てられる!?女子力の時代ktkr!!)
夢が広がりウハウハであった。
―――エクス”ラオプションはあなたの場合3つまで自由*割り当て可能な特別スロットと%ります―――
文字通り第二の人生を謳歌する未来予想に浸っていた言花の意識を、声無く語る文が引き戻す。
(前世の記憶だけで十分チートな気もするけど、自由に割り当てって具体的にどんなの?)
『十分チート』と言いつつ、貰う気満々で訊く言花。苦学生だった期間が長い分、わかりやすいメリットがあればいくらでも強かになれるのだった。
―――例=ば『誰にも負けない腕力』を望*ば世界最強の豪腕となれます―――
そして、挙げられた具体例は、この上なくわかりやすかった。…が。
(い…イラネー…)
言花にとってはメリットとは呼べないものだった。
(もっと何か無いの?ほら、こう…無駄無駄無駄無駄ァァ!!って言いながら時間を止める能力とか)
―――無駄無駄無〆無駄・ァ!!と言いながら‖間を止める能力はスロッ≦―1つ消費しますが取得しますか―――
(出来るの!?待って!私吸血鬼にはなりたくない!)
慌てて止める。口を衝いて出た冗談で人間を辞めさせられてはたまらない。時間停止の能力自体は非常に魅力的だと思えたが、かと言ってこれまでの人生を思い返してみても、時間が止められず困ったことなど……。
(……あった)
そこまで考えて、言花はたった1つだけ、切実に欲しいものがあったことを思い出す。
(時間を止めるなんて大袈裟なものは要らないけど、そんな規格外なことまで許されるんなら―――)
(―――それなら、私は〝声〟が欲しい。出来れば、綺麗な声だったら良いな)
時間を止めたいと思ったことは、数えられる程しか無い。しかし、声を出したいと思ったことなら数えられない程に有る。
子供の頃に声を失って以来、その願いは、ついに生涯を終えるその瞬間まで叶えられることは無く、代わりに悲痛な悔恨のみを心に残し続けた。
(あのときもね、私が声を出せていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。あれじゃあ、あの子もトラウマになっちゃうよ)
生前の、最後に脳裏に焼き付いた光景。信じられないものを目の当たりにしているような母娘の表情を思い出し、言花の心は改めて、切に願う。
(私は、〝声〟が欲しい。明瞭で、鮮明な…聞こえれば、気の移りやすい子供でも、立ち止まって振り返らずにはいられないような、子供以外も誰もが聞き流せないような、素敵な〝声〟が欲しい)
―――声は+べての『人生』で標準搭#されています―――
(じゃあ、それより良いやつで)
―――どんな内容であれ望めばスロットを消費します。そんな願いで大丈夫か―――
声無き言葉が、初めてノイズの無い文で確認する。
言花も、迷い無く答えた。
(いっっちばん良い〝声〟を頼む)
―――ではエクストラオプションの1つ目を〝女神の美声〟として取得します―――
(おお………特に何も変わんないけど)
―――取得した特-^次の『人生』開始後より有効とな&ます。スロットは2つとなりまMた。何を望みますか―――
再びノイズがチラつき出した無音の文言が、残り2つの願いを促す。
しかし、言花にはもう、これと言って切実に願うものが思い当たらなかった。何しろ、ずっと欲しかった〝声〟が、それも『女神』の名を冠する『美声』として手に入るのだ。先程までの未来予想図とも相俟って、これ以上の贅沢というものが、今一つピンとこない。
(うーん……。あと2つか…。不老不死…とかなって幼児のうちで成長が止まるなんて孔明の罠は避けたいし……。強いて挙げるなら、次の人生では苦しい死に方は嫌だなぁ…)
苦しい死に方。つまり、溺死や圧死、轢死に焼死etc...。全部挙げると逆にスロットが不足である。
(…参考までに訊くけど、環境やオブジェクトが死因に繋がらない身体、とかアリ?)
―――環境・オ✡ジェクト・状態異常による影響を一切受け※い身体はスロットを1つ消費します―――
(出来るの!?…てか状態異常て何?風邪とか?)
確かに、風邪も重症化すれば命に関わる。医学を学んだ経験上、甘く見る訳にはいかない。何よりあれもあれで苦しい。
―――~だし精神テメーはダメだ―――
(どういうことなの…)
―――精神と肉体は別に扱÷ます―――
(まぁ、心と身体は別ってことね…じゃあ良いや、それで)
この期に及んで、1つのスロットを惜しむことなど無い。ゲームの世界じゃあるまいし、精神にまで影響を及ぼすような環境の猛威や状態異常など、そうそう在るとも思えないが、せっかくなら心と身体はセットで考えたい。
(残りの2つは、その環境や状態の変化とオブジェクトの影響を受けない心と身体でFA)
―――ではエクストラオプション〝環境・オブジェクト・状態異常の影響を一切受けない身体〟及び〝環境・オブジェクト・状態異常の影響を一切受けない精神〟の2つを取得します―――
再びノイズが消えた、音の無い通告。これを以て、言花はすべてのクリア特典を取得し、新しい『人生』を―――『強くてニューゲーム』を始める準備が整った。
―――では、あらためて伺います―――
―――以上の特典を取得し、『強くてニューゲーム』を始めますか―――
いよいよ、第二の『人生』への道が開かれる。
今度こそ、悔い無く生きていこう。今度こそ。
今度こそ―――誰かの身代わりじゃない『私』を生きていこう。
決意と共に、言花は答えた。
(『強くてニューゲーム』を、始めます)
その瞬間。何も見えず、聞こえず、認識すら出来なかった身体が急に浮遊感を覚え……。
―――それでは、良い『人生』を―――
明瞭で、鮮明で。涼やかな少女の美声を最後に、言花の意識は漂白された。
次回、いよいよ異世界へ