ヤンデレなんてろくなもんじゃない
ヤンデレの子が書きたかっただけです。こういうの書くの初めてなのでご指摘などがあったらよろしくお願いします
窓から入る日差しが遮断しているカーテンを突き抜けて薄暗い部屋を仄かに照らす。ちゅんちゅん、と外から聞こえてくるすずめの鳴き声とともに俺は目を覚ました。昨夜、遅くまで起きていたせいか頭はまだ朧気で瞼も重い。
(まだ6時30か・・・・・・。もう少しぐらい寝れるな)
どうにか重い瞼をこじ開けて目の前の目覚ましの時計を確認した。脳は最低6時間は寝ないと支障をきたすらしい。昨日寝た時間が夜中の1時頃だったので、その理論に従うと俺はあと最低30分は寝ないといけないわけだ。適当な屁理屈を考え再び微睡みの中に甘んじようと、目を閉じて心の中で小さくおやすみなさいと呟いた。
ふとそこで違和感に気づく。自分の他にもうひとつ、小さな寝息が何処からともなく聞こえてくる。これが夜中だったら怪異や幽霊のせいにでも出来ただろう。だが今は朝だ。妖怪も幽霊も今頃布団の中で仲良く寝入ってるに違いない。
余力を振り絞り音の正体を見破ろうとして起き上がると、またも違和感に気づく。布団の中に自分とは別にもうひとつ分、大きな膨らみが広がっているのだ。膨らみの中からは明らかに女性のものと思わしき寝息が聞こえてくる。
(またか・・・・・・)
目の前に広がる光景に軽い疼痛を覚えつつも、俺は意を決して布団をガバッと捲った。
中から出てきたのは黒髪の眠り姫だった。
透き通るような白い肌と目を奪うかのような美しい黒髪が織り成すコントラストは、まるで本物のグリム童話の眠り姫がそこに実在するかのようだ。世の男子諸君から見たらこれなんてエロゲ?と思うシチュエーションかもしれないが、俺にとってはもはや日常茶飯事に過ぎなかった。
「白露さん、起きてください」
俺はゆっさゆっさと眠り姫の体を揺らして起こそうとすると、件の姫は「ん・・・・・・」と眠たげに目を擦りながらむくりと起きた。
「あ、ヤス君。おはよー」
「・・・・・・おはようございます。それと幾つか質問をしてよろしいですか?」
「んーどうしたのかな? ヤス君の質問になら何でも答えてあげるよ」
寝起きの眼をパチパチとさせて、屈託のない笑顔で少女はそう答えた。
「じゃあまず1つ目です。昨日俺は寝る前に部屋のドアノブにちゃんと鍵を掛けといたはずなんですが」
「あぁ、それね。駄目だよ? こんなちゃちいやつなんかじゃ。プロの人なら10秒で解けちゃうよ」
防犯意識がなってないなぁと呟き、ご自慢のピッキングツールを見せつけ彼女はそう言った。一応ホームセンターで売ってる中でも割かし高めのやつを選んだんだがな・・・・・・。
「はい次、二つ目。白露さんはいつ頃俺の布団に忍び込んでいたんですか?」
「えーとヤス君が格闘ゲームでぼろ負けしてふてくされて寝たのが1時6分頃だから、んーと大体その10分後ぐらいかな」
「・・・・・・三つ目。そもそもなんで忍び込んだんですか?」
「やだなぁヤス君。夫婦が同じ布団に入るのに理由もなにもないでしょ?」
何を今さらとでも言うかのようなトーンで彼女はそう答えた。
「俺はまだ独身でしかも高校生なんですが」
「年齢や身分なんて愛の前では無用なものだよ?」
彼女が質問に答え終わったと同時に、頭に酷い疼痛が走りぐしゃっと俺は床に崩れ落ちた。
――駄目だこいつ早くなんとかしないと
俺が疼痛に悩まされてる間に彼女は鼻唄混じりに髪を梳かしてせっせと身支度をしていた。あぁ・・・・・・というかもうこんな時間か。
「じゃあ先学校行ってるね」
身支度をし終え彼女はそそくさと部屋を後にした。残された俺はというと1人ポツーンとベッドの上に茫然と座っていた。部屋に地震雷火事親父が一度に来たんじゃないかってぐらい彼女のインパクトはとてつもなく大きいものだった。こうして貴重な朝の睡眠時間は彼女のお陰で無事水の泡になりましたとさ。ちゃんちゃん