全てを得た彼女
どうしてあとがきを書くのは楽しいのだろう( ̄△ ̄)
この結果を得たいとは思っていませんでした。『 』は生涯秘めておくつもりでしたの。
初めてお会いした日は忘れることはありません。
『お前なんか嫌いだっ!』
『何を言うの!』
『すまない、同い年の子になんて酷いことを……。妻が戻って来るまで、こんなおじさんだが私がお相手をしていいかな?』
『……はぃ』
『今は庭園に可愛い花が沢山咲いているんだ。妻が選んで植えたんだが、私が可愛いらしいしか言えなくて呆れられてね。君に見てもらって機嫌を直してもらいたいんだ』
あの日が私の『 』だったのでしょう。
『うわあぁぁんっ! 母上ぇーっ!』
『……』
『ロドニーを今まで任せてすまないマルガレーテ嬢。代わるから君は家に帰りなさい』
『いいえおじさま。わたしはロドニーさまのいるこの部屋におります』
『しかし、息子は暴れたのだろう?』
『今は仕方ありません。それよりも少しお休みください。おじさまもおつらいのですから』
『……すまない。あと少しだけ任せてかまわないだろうか。戻ったら送らせるから』
『はい』
おばさま、バイス侯爵夫人クラーヴァ様が儚く身罷られた時はとても悲しく。そして自分がバイス家で生涯をかけて支えていこうと決めた時でした。
『ふんっ! お前はいつも口うるさいな』
『申し訳ございません。ですが……』
『そんなにうるさいと、いつでもお前を捨ててもいいだぞ』
『っ! どうかそれだけは!』
『ならばこの課題もやっておけ。三日後提出だが明日までにやっておけよ。早い方が僕の評価は上がるからな』
『……わかりました』
ロドニー様の隣しか私には席は用意されていません。
どんな苦しみもその席から降りることに比べれば些細な事でした。
『すまないマルガレーテ。息子が君に誠意に欠けるようなことをしていたとは、これから話を聞いて別れるように告げようと思う。最近のあれは横柄すぎる』
『しかたありませんわ。名を馳せる侯爵様の嫡男の重圧は癒しを求めたくもなると思います。愛妾として候補に考えれば悪い事でもありません』
『……本当にそれでいいのかい?』
『貴族の娘ですから、受け入れるしかありませんわ』
そう貴族としてのしがらみがあるから、私はお傍にいられるのです。
だからそれ以上は求めてはいけないの。
『お前のようなつまらない女とは婚約を破棄するっ!』
『そんなっ! 侯爵様はこの事をご存じで承知しているのですか!』
『後で報告する。父上の手を煩わせるほどの事ではない。母上への愛を貫く父上ならわかるはずだ。家同士の結びつきのための婚約なぞ、真の愛の前ではごみクズのように捨てても構わぬとおっしゃるだろう』
私が唯一座れる席が奪われていきます。
貴族の女の責務も、私の『 』も全てが叩かれて手のひらから零れ落ちていくのを、ただただ眺めるしかありませんでした。
本当に?
まだおじさまは知らないらしい。
今すぐ私が知らせたなら……。
侯爵家も伯爵家も被害を最小限に抑えられるかもしれない。
ああっ貴族としてそのことを考えなければならないのにっ!
零れ落ちたものを拾い上げるのではなく、 あの人に『 』を捧げることができかもしれない想いが溢れてくるのっ!
『バイス侯爵邸へ』
その一言が全てを決定づけることになりました。
『それは事実なのか?』
『はい。つい先ほどロドニー様に連れて行かれたパーティーで婚約を破棄されました』
『……』
『私はローザ伯爵邸に戻らず連絡もせずにここに来ました』
『……感謝する』
おじさまは大体を把握されたのか苦悩の表情を浮かべられます。
『廃嫡する』
おじさまは侯爵として判断なされました。
亡き奥様クラーヴァ様への愛の為に後妻を娶らず、忙しい中でもロドニー様との時間をとる家族愛に溢れたお人だけれど、そのために大勢の侯爵家を支える家臣を領民を家同士の友好関係を壊すほど常識外れなお人ではないの。ずっと見ていたからわかってしまうのです。
そこからはあっという間でした。侯爵家の有力な家臣を呼び現状を説明、廃嫡と認めさせた。それには加担したロドニー様の傍付きの家臣の家には本人たちへの罰を家ごとに任せることで大人しく従わせることもなされている。彼らの子供がロドニー様を止めていればもっと被害は少なかったのだから仕方がないのです。
ローザ伯爵家には私も書いて、おじさまの内情を知らせる手紙と一緒に送らせてもらった。これですぐに二家の間に緊張が走ることはありません。
『マルガレーテ。侯爵家は君に酷いことをしたのに本当に助けてもらった。可能な事ならば何でも望みを叶えたいと考えている』
……ああっ! 待っていたのそのお言葉をっ!
『……婚約破棄された私は、もうまともな縁組も無理でしょう』
『それは……、私がどうにかしよう』
『身内の集まりでの出来事だったならどうにかなったでしょうが、ロドニー様のご友人たちはもう御帰宅なされています。婚約破棄された女という傷の事実は社交の場にすぐにでも広がるでしょう』
おじさまも、集まっていた家臣の皆さんも私を憐れんでいる。それは私の側に立っていることを表していました。
『ですがただ一人。私の事を正しく見てくれる御方がいます』
室内にいる私以外の人が誰だ? と騒ぎ始められました。
『……まさか』
貴族の子女として学んだ淑女の笑みを浮かべる私は、心の中に湧き出る激情を上手く隠せているでしょうか。
私の視線の先には困惑するおじさま一人しかいません。
『いや、それはダメだろう』
『どこがでしょうか?』
『君は息子の婚約者だ』
『元が付きますわ』
『年齢的にも道義的にもおかしい』
『もっとお若い女性と結婚されている方もおられます』
『さらに社交の笑いものになってしまうぞ』
『いまさら傷の一つ増えても大したことはありませんわ。それに他の方のもとに嫁ぐ方が酷い事になると思いますの』
とっさに思いついたその場を切り抜ける為だけの言い訳は通用させません。だって初めて自分で選んだ未来を選び取る為です。
そのためにバイス侯爵家の家臣の皆さんがいる前で、実家よりも嫁ぐはずだった先の家を優先してくれた悲劇の女を演じましたの。
ああ、でも
『……私は亡き妻を愛している』
ごめんなさいクラーヴァ様。
貴方をお義母様とお呼びしたかったのは本当です。貴女が生きていれば、ロドニー様が愚かで私に選択肢を与えなければ……。
『……それでも私には貴方しかいないのです』
私は私の愚かな願いを叶えます。
私は私の『初恋』を叶えたいのです。
おじさまは以前から後妻を娶るのを求めていた家臣の方たちの熱望もあって、私との結婚を承諾してくれました。
『最低一年は空けてくれないか。その間に必ず良縁を見つけてくるから』
あきらめは悪いようですが。
そして翌日屋敷に戻られたロドニー様は追放を告げられました。
「そのよかったのか。息子を子を作れぬようにしなくて」
「この国に戻れぬなら必要な処置ではないかと。それに亡きおばさまの血が続く可能性が無くなるのは嫌ですわ。おじさまもでしょう?」
「君は……本当に昔から気遣い屋さんだな」
ロドニー様にはおじさまとおばさまの子供としての情もありましたし、今回の件での恩もあります。一番の理由はおばさまへの罪の意識ですが。
ただ、私が干渉するのはここまでです。
行動には責任伴うものです。
ロドニー様には親の愛、私の後ろめたさ、侯爵の身内という温情があって絶縁で放逐だけで済んだのです。
婚約破棄をする場を提供した子爵家、止めもしなかった友人と称した者たちは、バイス侯爵家とローザ伯爵家から報復を受けるでしょう。
王家が貴族間の婚約に干渉しても不満が噴き出すのに、貴族の子供が面白半分で行った行為に罰が与えられないはずがありません。
そしてロドニー様のお相手のオルタン男爵令嬢は火刑は免れても、婚約破棄を首謀した一人では間違いないのでそれ以上に悲惨なことになるでしょうね。
それらはロドニー様との約束には含まれていませんから。
私も行動しました。
これから侯爵家と伯爵家の間を取り持ち繁栄させていくのが私の責任です。以前とすることは変わりません。ただ、おばさまへの償いとおじさまへの罪悪感の分、重みがふえました。
私は得たい人を得る機会を逃すことは出来ませんでした。
それは誰にも言えません。
だからこそ覚悟してくださいおじさま。
絶対に逃しませんわ。
数年後、ローザ伯爵家子女マルガレーテはマルガレーテ=バイス侯爵夫人となる。
当初は陰口を叩かれていたが、それをものともせずに夫を支える姿に正反対の賞賛となった。
良縁をと、抵抗していたバイス侯爵も最初の子が出来た頃には妻を愛する夫になった。
三男一女に恵まれた夫婦は年に一度、二人で侯爵家の墓に参っていたようだ。
●伯爵子女マルガレーテ=ローザ 真実の愛 ●亡侯爵夫人クラーヴァ(ラ)約束
●浮気相手シア=オルタン 不貞
バイス侯爵、息子ロドニー
女性陣は花言葉から花を選んで少し崩して名前にしています。男どもは知らん!( ̄△ ̄)
ロドニーは性根が自分本位の屑です。どんなに家庭環境が良くても、どうしてこんな奴が育った典型的パターン。
侯爵結構頑張ってたけど元々の性根は変わりませんでした。
その後
大草原で羊でも飼っているかもしれません。
バイス侯爵は普通に仕事が出来て家族を愛していた優秀な人。最後は情に絆されて心に棚を作りました。それはそれ、これはこれの精神。
マルガレーテは、一途にバイス侯爵を愛してました。そして貴族に生まれた娘という己もわかっていました。だから、侯爵の傍にいられる為にロドニーと婚約してました。
重度のストーカーです(;・д・)
ロドニーがまともだったら、亡侯爵夫人クラーヴァが生きていたら、生涯ストーカーライフを送っていたでしょう。
浮気相手シア=オルタンは愛人、側室狙いならマルガレーテは喜んで迎えていました。子供が生まれたら次代の侯爵に据えていたでしょう。だって愛している人の血が流れているから。夜をロドニーと共にしない分、さらに喜んいたかも(・_・;)
学生が社会に抑圧されていると勘違いして、自由恋愛だ!と叫んでいるのに共感した…のではなく、ただの玉の輿を狙っていただけです。
その後
たぶん最後は海で魚と戯れているでしょう。
ロドニーの周囲、馬鹿な彼をはやし立て、裏で笑いものにしようとした馬鹿野郎たち。
その後
きっちりと後悔して(この世から)いなくなっています。
筆者の物語に興味を持たれた方は
【ハイブルク家三男は小悪魔ショタです】
https://ncode.syosetu.com/n1853hy/
【釣り合う二人はバカップル】
ノクタ版
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カクヨム版
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ノクタ版はエチエチが入ります。ノーマル版はカクヨム版を。
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