五つの角。~其の2
残り4つ。
開始の合図と共にミヤは、金鬼と距離を取った。
「ほな、行くで。炎乃矢!」
「ふん。この程度……」
「誰が、一発やと言うた!」
「なっ!?」
そう、ミヤは炎乃矢を文字通り、連発、いや、打ち続けている。
「ふん。この程度、少々当たった所で……、グッ!?」
実はミヤは炎乃矢を打ち続けながら、本命として、ここぞという所で、見かけそっくりだけど、威力が桁違いの「破邪乃紅炎」を放っていた。
「ふ、ふざけるなー!!」
「止めや! 獄炎乃不死鳥!」
「ガァアアアアアアーーー………………」
ミヤの魔法で焼き尽くされた金鬼は角を残して消滅して、角は社に吸い込まれていった。
「凄かったぞ、ミヤ。」
「セツナはん。上手くいったで。」
「そうか。作戦勝ちか!」
「そうや。」
勝ったからミヤにも頭を撫でた。
基本的には接近戦が得意な鬼だから、普通ならミヤが不利だけど、開始直後に距離を取り、魔法で足止めをしながら、ダメージを蓄積させてから、詠唱破棄で大技を決める。
ミヤは凄いな。
「次を始める。こちらは水鬼だ。」
「なら、こちらからは、セレンだ!」
「頑張るであります。」
「落ち着いてやれば、セレンなら勝てる。」
「行くであります!」
「用意は良いな?……始め!」
「破っ!」
「くっ!」
やり難いだろうな。
こっちは「槍」で、向こうは「短剣」だからな。
家には、もっと強い使い手が居るからなぁ。
「セツナ様。今、何か良からぬ事を考えていませんでしたか?」
「……いいえ。」
「先程の意趣返しだ。」
「何!? であります。」
セレンの足元から水が溢れ出して、セレンを包み込もうとしたが、セレンは魔法で次々に土を発生させて、水を吸収していった。
「何だとー!」
「今であります! 岩槍震擂!」
「ギィャアアアーーー………………」
土属性魔法を武器に付与した上で、超振動を加える事で、当たった対象の水分を強制的に蒸発させるという、ちょっとエグい決めの大技を放ち、セレンが勝利した。
「楽勝だったな。」
「セツナ殿、勝ったであります。」
「正に、『必殺技』だな。」
「ちょっと、恥ずかしいであります。」
セレンにも、勝ったから頭を撫でた。
最近、セレンの頭を撫でていない様な気がしたから、丁寧に優しく撫でた。
「次は、火鬼だ!」
「こちらからは、リンが出る。」
「セツナ様に勝利を捧げます。」
「ああ。待っている。」
「用意は良いな?……始め!」
「おらおらぁ!」
「……」
「どうした? 避けるだけか?」
「……」
「もしかして、お前、弱いのか?」
「……」
「オレがへばるのを待っても無駄だぜ。その前にお前を倒すからなぁ!」
「……弱い者程、よく吠える。」
「何ぃ!?……ちぃ!」
「もう、遅い。凍結零獄葬。」
「ガッ……」
「最後は美しく散りなさい。」
リンが放った氷系魔法で、炎属性の鬼を一瞬で凍結させ、手に握る短刀の一撃で、角を残して煌めきながら霧散した。
そして、角は社に吸い込まれていった。
「リン。読み切った素晴らしい戦いだったな。」
「セツナ様、ありがとうございます。」
リンにも勝利した褒美に頭を撫でた。
先程の凛とした相貌がどんどん惚けていった。
「ふにゅあ~。」
「よ~しよし。」
「ゴロゴロ……」
俺がリンに褒美の頭ナデナデをしていると、残った鬼が言った。
「ここまでよくぞ勝った。残ったオレを倒せば、次の道は開かれるだろう。オレ木鬼の相手は誰だ?」
「最後はランだ!」
「行ってくるー。」
「今まで相手の弱点になる相手を選んで来たけど、ランだけ違うんだ。だから、気を付けてな。」
「分かったー。」
「用意は良いな?……始め!」
「行くぞー。」
「オレは負けん!」
確かに手数で勝るランが押してはいるが、まだ決定打を打てていない。
だが、ランだって皆と同じ鍛練を積んだんだ。
負ける訳が無い。
ん?
幽かに歌が聞こえる。
「……、豊穣の奉りを終え、大地は静かに命の揺り篭を出し、蕾の準備に森は眠る。」
「……何だ!? 身体が動かないだと!?」
「ランの勝ちだよ。狼牙双撃掌!」
「ぐはっ! ……見事!」
木鬼はランに称賛の言葉を告げて、角を残して消滅して、角は社に吸い込まれていった。
そして、社から五色の光が放たれ、地響きが走り、収まる。
「ラン。終わってみれば圧勝だったなあ。」
「皆と同じ様に、ランも頑張ったー。」
「そして、リンとはまた違う美しさがあったぞ。」
「わーい。セツナに褒められたー。」
「ランにもご褒美。」
「やったー!」
ランにも頭を撫でた。
そりゃあもう、ワシャワシャと撫でた。
まるで長毛種の大型犬を相手にするかの様に!
一頻り、ランのナデナデを満喫した後、社に行ってみると中の板の間に階段が出現していた。
「多分、これを降りるとこのダンジョン最後の戦いが有ると思うから、気を引き締めて行こう!」
「はい!」×9
俺達は階段を降りて行くと、光に照らされた出口が見えてきた。
出口を抜けると、インド辺りの寺院内の少林寺拳法の鍛練場を連想する舞台があった。
「よくぞ、『知』と『武』の試練を乗り越えた。」
その舞台に立って居たのは、修験者のお爺さんと明らかに「格」と「桁」が違う「鬼」が2体、威風堂々と立っていた。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




