第八十三話 入学試験で検証 その五
王族・貴族学科の試験があってから数週間後……今日は冒険者学科の試験日である。
あの日、グリィ殿と再会して、検証しがいのあるキャラクターと出会って、試験やその後の騒動で色々と検証したわけだが……。
現在に至るまでの流れを改めて振り返ってみると、なんというか、もしかしたら初めから王族・貴族学科への入学ルートなど存在しなくて、今いるルートこそストーリーとして定められたイベントなのではないか、と思わずにはいられない。
自分としても、大袈裟に心配していたグリィ殿ほどではないものの、公爵家の跡取りである人物に刃物を突き付けて、おそらく彼と同程度の貴族であろう校長を脅すような真似をしたら、何かしらのペナルティが与えられるだろうと思っていたのだが……結果としては、殆どお咎め無しだ。
いや、それどころか、協力して一緒に彼を拘束したグリィ殿に関しては、自分が無理やりつき合わせたのだと話すと、彼女の罪を免除してくれるどころか、こちらから提案する前に、他の学科へだったら改めて入学試験を受けることを許すと言ってくれた。
後から聞いた話によると、自分がまだ牢屋で大人しくピッキングをしている時に、公爵家の彼が入学試験の開始前に他国とはいえ王族である自分に対して失礼な態度をとっていたという上申があったらしい。
おそらく彼を快く思わない貴族の息子だか娘が同じ試験会場にいて、自分のことを無視してグリィ殿に話し続ける彼の態度を見ていたのだろう。
公爵家の彼もグリィ殿も自分の服装を見て王族だと気づいていなかったようなので、意外と服装だけでは判別できないものなのかと思っていたが、報告してくれた人物の観察眼が優れていたのか、逆に二人の目が節穴過ぎただけなのか……とにかくその報告してくれた同級生には感謝しなくてはな。
とりあえずその見ず知らずの同級生の口添えもあって、国王からは、代わりに公爵家の無礼もお咎め無しとするように言われたものの、自分もグリィ殿も罪に問われることなく、予定通り冒険者学科への入学試験を受けられることになったのだ。
本当はグリィ殿に勧めてくれた別の学科というのは冒険者学科などの平民でも受けられる科目ではなく、将来的に魔法や錬金術の研究者になる、小さい時からそれなりの教育が受けられた貴族や大商人の子供が入学する科目だったのだが……。
本人に話したら「そんなところに行ったら貴族になるのと同じくらい頭を使うじゃないっすか!」と言って嫌がっていたし、自分もこれからより困難になるであろう検証のパートナーが欲しかったのでちょうどいい。
自分に対しても、別にわざわざ他の学科への再試験を受けなくてもこのまま王族・貴族学科へ入学して構わないと言ってくれた優しい国王のことだ、きっと彼女が勧められた学科を受験しないことくらい許してくれるだろう。
しかし、あれが王の貫禄という奴だろうか、国王には本当に頭が上がらないな……腕や足にまるで枷のように大量の騎士が繋がったまま、ろくにアポも取らずに謁見の間に突然訪れた自分に対して、あれほど落ち着いた態度で、こんな提案をしてくれるのだから。
まぁ、前に自分が城に住まわせてもらっていた時も毎日のようにそんなことをしていたので、今更ではあるかもしれないが……それでも彼の寛大さには救われてばかりである。
このイベントの難易度が想像しているよりも易しかったというだけかもしれないが、自分の方もそんなにいい態度ではなかったと思われるにも関わらず、公爵家の息子の態度が悪かったと告げ口してくれたどこかの誰かにも、そんな理由だけで彼に刃物を突き付けていた自分のことを許してくれた国王にも、今度どこかで会ったら改めてお礼を言おう。
「ふむ……やはりメインイベントはこうやって難易度を低く設定して、やりこみ要素の部類に入るイベントの難易度を高くするのが、今のゲームの主流ということだろうな……」
「オースさんが何を言ってるか分からないっすけど、とりあえず優しい世界でよかったってことっすね」
「まぁ、そういうことだ」
自分とグリィ殿はそんな会話をしながら、彼女にとっては二度目の……自分にとっては六度目となる入学試験に歩みを進める。
錬金術研究学科、魔道具研究学科を超え、王族・貴族学科の入学試験を終えた自分は、あれからさらに魔法研究学科と職人学科を受けて、それぞれ無事に不合格という検証結果を持ち帰っている。
それなりにやることも多く、時間がかかった入学試験の検証もこれで最後……冒険者学科では、今までわざと不合格となるであろう回答を提出して落ちてきた経験を活かし、今度は逆に全て完璧な回答を見せることで、順位がつけられるのかどうかは知らないが、つくのであれば最優秀の成績で合格するという検証をする予定だ。
そしてグリィ殿には、合格ギリギリのラインを攻めてもらう予定となっているのだが、離れていた間に受けたEランク昇格試験に合格した時もギリギリのラインだったということなので、特に何も言わないでもその結果を出してくれるだろう。
むしろギリギリ合格するラインを攻めてほしいと言ってしまったら、彼女の判断でわざと正解が分かる答えを不正解の回答で提出するわけだから、ギリギリどころか全然点数が足りない結果になる可能性が大きくなりそうである。
点数が全然足りない検証も、ギリギリ不合格ラインを狙う検証も、すでに自分が他の学科への入学試験で済ませているので、ここで改めて行う必要は特にないのだ。
「確か、この冒険者学科に入学するための試験は、私がこの前受けたEランク昇格試験と同じような内容ってことだったっすよね?」
「うむ、何故そんなことを知っているのかは謎なのだが、自分に勉強を教えてくれたアルダートンのシスターはそうだと言っていた」
「なるほど、よく分からないっすけど、シスターが言うなら間違いないっすね! とりあえず一回合格してるEランク昇格試験と同じ内容ならもう合格したようなもんすよ、どこかに遊びに行っていてまだFランク冒険者のオースさんには負けないっす!」
うーむ……ゲームでこういうセリフがあると、必ず失敗するという前触れであることが多いのだが、果たしてグリィ殿は大丈夫だろうか……少々心配になってきたな。
……まぁ、不合格になったらなったで、その時は次の機会に回そうと思っていた検証項目である『不合格という結果をもらってから何らかの手段で合格に塗り替えることができるかどうか』の検証に移ればいいか。
「……お互い頑張ろう」
「はいっす!」
学校の廊下を歩きながらそう会話を終えた自分たちは、試験会場である教室の扉を開けて、中へと入っていく……。
すると、扉の開いた音で意識がこちらに向いたのであろう、既に試験会場にいた、今の自分の年齢と同じくらいの受験者たちが、入ってきた自分たち二人に視線を向けてきた……。
「ふむ……」
今まで何度も試験を受けてきた自分だが、今回だけ扉が開け放たれておらず閉まっていたからだろうか……何故か今になって、この状況に強烈なデジャブを覚えた。
「……? オースさん、どうかしたっすか?」
思わず立ち止まった自分に、グリィ殿が振り返って話しかけてくる……。
そしてそれが余計に彼らの気を引いたのか、自分たちに集まった視線がしばらく外れなかった……。
うむ……これは……あれだな……。
今思えば、もしかしたらこの時に気配を感知する系のスキルが自動発動していて、何かを読み取っていたのだろうか……。
―― テクテク、スタッ ――
(……?)
教室の前方中央まで歩いて、急に立ち止まってみたり……。
―― テクテクテク、ギィ……バタン ――
(……???)
そのまま何もせずに立ち去ろうとしてみたり……。
―― ガチャ、バンッッ! ――
(ビクッ……っ!)
と見せかけてすぐに勢いよく乱暴にドアを開けて入ってきたり……。
そして、そのままバク転で縦横無尽に動き回って……。
「お前はまたこんなところで何やってんだ」
―― ゴツン ――
みようとしたところで、後頭部を誰かに殴られた……。
……いや、誰かなど、言うまでもないだろう。
「うーむ……フランツ殿こそ、何故いつも自分がこの検証をするときに近くにいるのだ」
「知るか! むしろ何でお前は俺の行く先々で毎回同じようなことをやってんだ」
そう、冒険者パーティー〈爆炎の旋風〉のリーダーである、Cランク冒険者の〈旋風の大斧使い〉フランツ殿である。
ここはアルダートンの冒険者ギルドでもなければ、一般冒険者が参加したくなるような武闘大会が開かれているイベント会場でもない……冒険者学科の試験会場の、王都、王立学校である……。
フランツ殿は何故こんなところにいるのだろうか……。
試験を受けに来た自分は、会場について早々、グリィ殿に続いて二度目の再会イベントに遭遇したのであった……。
▼スキル一覧
【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。
【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる
【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる
【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる
【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる
【身体強化】:様々な身体能力が上昇する
【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる
【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える
【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える
【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る
【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる
【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる
【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる
【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる
【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる
【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る
【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる
【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる
【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる
【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる
【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる
【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる
【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る
【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる
【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる
【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる
【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる
▼称号一覧
【連打を極めし者】
【全てを試みる者】
【世界の理を探究する者】
【動かざる者】
【躊躇いの無い者】
【非道なる者】
【常軌を逸した者】
【仲間を陥れる者】
【仲間を欺く者】
【森林を破壊する者】
【生物を恐怖させる者】
【種の根絶を目論む者】
【悪に味方する者】
【同族を変異させる者】
【覇者】
▼アイテム一覧
〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉
〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉
〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉
〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉
〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉
〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×1005〉〈鶏生肉×245〉
〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉
〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉
〈木刀×1〉〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉
〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉
〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉
〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉
〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉
〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉
〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉
〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉
〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉
〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉
〈大銀貨×2〉〈銀貨×3〉〈大銅貨×9〉〈銅貨×7〉




