《死神の墓地》:3〜女神との会合〜
「あれ?思ったより暗くない?」
俺達が踏み入った《死神の墓地》は《死者の洞窟》よりも暗くはなかった。
「あっ、壁が吸光石じゃない?これは?」
「これは……なんだ?」
初めて見た迷宮の壁は、これまた初めて見た材質でできていた。
その上、壁はかなり真っ平らなのだ。
鏡のような感じ。
「なんだ?これ?結構硬いんだけど……空洞か?中。」
そう、《死神の墓地》の壁はかなり硬い材質なのだが、中が空洞のような音の響きなのだ。
「それにモンスターもいないし、かなり開けてるし。」
瑞樹がそう呟く。
その通りに内部は地面が灰のようなもので出来ていて、ところどころに墓石みたいなものが散見出来る。
「これは……階層があるダンジョンじゃない?」
紅姫もそう言う。
確かにこの迷宮には階層のある迷宮にある特徴があまりない。
例えば、普通の迷宮は基本入り組んだ構造をしているが、こちらは開けている。
それに、これだけ開いているにも関わらず、モンスターが一体も見受けられない。
「なんか……不気味ぃ……」
碧が青い顔でそう言う。そして、なんかもうこれにギャグ感を感じる俺がいる。
でも、確かに雰囲気も地形も全てを不気味に感じるのは確かだ。
そして、俺達の不安も募りかけてきた頃(恐らく碧は既にピークだが)、前方から場違いな声が聞こえた。
「アハッ、転移は無事、成功したみたいだね。いやーぁ、労力が無駄にならなくてよかったぁ。」
少々生意気なような声と、
「ウリル、それは少々、不謹慎かもじゃないかのぉ?」
少し年寄りじみた声がした。
どちらも女性の声だ。
……しかし、年寄りじみた方は声が幼いような気がするぞ?
俺が前方に目をこらすと、二人の影が見えた。
しかし、二人か?……羽が見えるような気がするんだが……
「誰よ?あなた達?」
見たことの無い二人(?)に対して瑞樹が食ってかかる。
「や、こりゃ失礼。アタシ、ウリル。二代女神の1柱をやってるんだよぉ。」
「こっちはゼウシュ。二代女神のもう1柱じゃ。そなた達を転移させた者じゃ。」
「「は?(え?)」」
聞き捨てならない単語に俺達は驚いたのであった。
その後俺達はウリルとゼウシュに詳しい話を聞いていた。
「要するに、俺達はその堕天使ラフィエルを討伐又は改心させろと?」
「そゆこと〜、物わかりが良くてよろしい!」
二人の性格も何となくわかった。
ウリルは、少々生意気な性格でイタズラ好きな感じ。
ゼウシュはその静止役と、相手をしている感じ。
そして二人とも羽の生えた俺達と同い年位の見た目でババ……
「なぁにを考えているのかなぁ?ア・ズ・ミ君?」
ウリルがなんか笑顔で近づいてくる。
待ってくれ、目が笑ってないし、なんか手元に光が見えるんだが……
「い、いやぁ、なんでもない……と、思いますよ?」
「ふーん、女神ってさぁ……」
待ってなんか光が強くなってるよ?俺があれ食らったら消えるよ?
「人の心読むぐらい簡単なんだよ?」
俺はその言葉を聞いた瞬間に絶望を感じて土下座した。
「すいませんでしたァ!」
それは恐らく、俺史上最高の土下座だった気がする。
その神々しさに流石の女神も慄いてるし。
「う、うん。分かればいいんだよ?うん。」
なんかちょっと引いてるような?
その言葉を聞いて俺は顔を上げたが、皆さん待ってください。
なんでゴミを見るような目、してるの?
なんで、うわぁって聞こえてきそうな雰囲気なの?
あれ?目線は俺じゃ、ない?
後ろ?……ウリルさんじゃないっすか。
「いや、ババアって考えただけで土下座までさせるなんて……」
リイアがそう言って、
「最低?ですよ。」
紅姫がそう続けた。なんか疑問形だけど。
するとウリルが弱腰になって、
「いや、ちょっと待ってね?…………なんで皆アタシをババアって考えてるの?ねぇ、天罰下すよ?泣くよ?」
あっ、やっぱり俺だけじゃなかったんだ。なんか安心したわ。
「何故って、私は年齢に合わせて口調が育ったもんなんじゃが、ウリルはずっとその口調じゃろ?見た目と同じ。だとしても歳が何千、何万歳じゃったら、そう思われても不思議じゃないじゃろ?それでウリルが怒る方が筋違いというものじゃよ?」
ゼウシュさんの言葉がトドメになったのか、ウリルは後ろを向いてしまった。
メンタル弱いのかな?
「あ、あのぉ……ウリルさん、いじけちゃいましたよ?言い過ぎでは……?」
おずおずとルキがそう言った。
すると、その言葉を聞いたウリルはルキに抱きついた。
「君いい子!優しい子!大好き!結婚しよ!」
その勢いでウリルは変なことを言い出した。
やばい!ウリルがアホに見える。
「安曇、その考えは間違ってはおらんぞ?」
するとゼウシュさんが俺の肩に手を置いて、そう言った。
いやあの、天使さん方、いちいち心読むの、やめて貰えません?
「無理じゃ、楽しいからのぉ、あの子は常に能天気で、面倒くさがりで、世話が焼けて……」
そう言っているゼウシュさんにもかなりの愛情が感じられる。
きっとこの人はウリルをなんだかんだ大切に思ってるんだろうな……って思った。
その時のルキは、少し顔を赤くして、何か言っていた。
それ、ウリルにも聞こえないだろってレベルで声が小さかった。
「 」
それが聞こえたのか、はたまた心を読んだのか、ウリルは「ははーん」と言って笑ってルキに何か言った。
「その恋、手伝って差し上げよう。」
それを聞いたルキは傍目から見ても分かるぐらい、いや、それ以上に顔を赤くして俯いていた。
(???何があったんだ?)
俺には全くその理由が分からずに首を傾げていた。
そしてウリルは周りを見渡すと、何を思ったか俺に耳打ちしてきた?
「ははぁ……君も罪作りな男だねぇ。うんうん。」
「はぁ………………?????」
その意味が、俺には全く理解ができなかった。