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4.淑女は弾丸に問いかける

2021/3/13 加筆修正


4話目です。

書いててアリスがスクリロスのことを言う際、

元々はスクちゃんって呼ばせようと思っていたんですが

気付いたらスクで呼んでました。

フォルム自体はリスをGoogleで調べてそこから連想していきましたが

考えながら可愛さと天真爛漫さをイメージした次第です。

ではでは4話目、ご覧ください。

ある男の一生に悔いがあったとすれば自身が

正義の味方になろうとしたことだろう。

そのために何度も知り合った友人に銃口を向けて何度撃ったことか。

だからこそその境遇のなかで知り合った者に足元を

掬われることは当然のことだったと考えている。


男に名はない。

ただ彼自身が持つ銃を自身の名としていた。

銃に撃たれた者の顔はそれぞれ違う。

驚愕か、悲壮か、哀哭か、……どれにせよどれも良い顔はしない。

そうやって死んでいく。

立ち直れずに廃人になった者もいる。

だが彼の放つ銃は必ず事実的に悪いことをやった者にしか当たらない。


撃たれた当人が自分自身が悪いことをやったという自覚が

あれば必中し、そう考えないものには記憶の再現・再演が

行われそうやって男の独断という審判が下される。


―――666の弾丸を持つその銃と男の名はキーム・バレット。


紺色のミディアムヘアーに金色の瞳を持つ彼は

今日もその弾丸で相手を撃つつもりだった。

だが前述の通り、その者が知り合い仲の良くなった者だとは思わず、

撃てず、結果的に手負いとなりこうして逃亡している。

ボロボロになった黒スーツにネクタイを投げ捨てて

相手の受けた弾で赤く滲む腹を抑えながら

彼は建物の影を縫うようにして進んでいく。

だがどうしても日のある方向にしか道はない。

後ろを振り向けばきっともう追っ手がそこまで来ることだろう。

でも彼は逃げようと必死に日のある方向へと目指して手を伸ばす。

そうして伸ばした瞬間後ろで物音と誰かの進む音がして振り向かえった。

そこに立っていたのは彼にとってまさしく死神のような存在。

姿かたちと噂は聞いている存在がそこにいるとは思わず

腰を抜かすようにして壁を背に崩れた。


キーム

「へへっ……まさかこんな……ところで

 お前みたいな死神に遭うとはなァ……

 確かコールド・ペイン……だったよな?

 まさしくその立ち振る舞い、死神だよアンタ」


目だけで見下ろすペインは彼を見るや否や

振り向かえって手を伸ばすようにして構えただ小さく一言"Give"と言うと

悲鳴とともにその奥で誰かが転げるような音が聞こえた。

何をやっているんだという目でペインを見るキームは

暗くなったことに銃を取り出しながら振り向かえる。

だがその銃を止めたのはまさしく後ろに立っていた者だった。


???

「大丈夫よペイン」


キーム

「はぁ……?―――っ!」


とキームが銃をその者に突きつけながら振り向くと

そこにはおぞましいほどの殺気に満ちたペインがキームを見下ろしていた。

さっきまでの無感情ではない完全に殺すという気持ちの目を後ろに

立っていた者が静止させると徐々に戻っていき元の無感情のような状態に戻り、

そのままなおってまた"Give"と呟き始める。


アリス

「さて、ペインが貴方の追っ手に一手をかけている間に自己紹介をしましょうか。

 初めまして、ハードボイルドさん。

 私の名前はアリス・シャルロット、アリスで良いわ。

 良ければ貴方のお名前を聞かせていただけないかしら?」


キーム

「……はっ……ははは……おいおい。

 俺の追っ手、って……嬢ちゃん、お前は何を知っているんだ??

 大体……あそこにいるバケモン、お前の仲間かよ」


脅そうと思っているのか目をキリッとさせアリスを睨むキームだが

それにビクともせずただ笑いながら、ええと呟いて


アリス

「あなたがあなた自身の"仕事"のせいで追われる身になっていることも知っているわよ。

 それで……名前聞かせていただけないかしら?この銃は手離すからさ……」


とアリスがその手を離した瞬間ペインの目がこちらに向いたのを見てキームは


キーム

「ああ!!分かったてば!!くそっ……」


と銃を仕舞いアリスとペインに武器がないことを

手を挙げてひらひらとさせるとペインはまたなおり、

また喋りはじめるがアリスがもう良いわよと呟くと喋るのをやめた。

キームの追っ手と思われる複数の人物は既に動かなくなっているのを

確認したキームは驚き引きながら呟く。


キーム

「俺の名前はキーム・バレットだ、嬢ちゃん。

 キームで良い。しかし、さっきのやつはもしかして逝ったのか?」


アリス

「そうなの?ペイン」


ペイン

「し……ん、だ。」


アリス

「そう、ありがとう。頼りになるわね」


じゃあそのまま警戒しておいてと笑い呟くとペインは頷き、

そのままアリスに背を向けるようにして

既に死に動かなくなった追っ手を見つめるようにして警戒を始めた。

その光景に思わずキームは咳をしながらアリスに呟く。


キーム

「やっぱりバケモンじゃねぇか。

 嬢ちゃん、アンタもだぞ……なんで簡単にああやって殺せる?」


アリス

「貴方とは違うの?」


キーム

「俺は悪に銃を向けてる。

 非悪なんては言わねぇがそれに似た悪には記憶を思い起こさせるか

 再起不能にさせて取り敢えず無力化だな。

 だが絶対に正しいやつは殺さない、それが俺の流儀だ。」


するとアリスは笑っていたが一瞬感情がなくなったかと思うと

そのままそうか、と呟いてキームと対面するかのようにして

キームの足の上に乗っかる。壁にもたれかかるようにして

座っていたキームは逃げ道がないこと、そして腹の傷の痛みで

動けないまま、アリスがキームに騎乗するかのようにして

キームのスーツのベルト部分にアリスの体重がかかる。

それにキームは驚き慌てるかのようにして除けようとするが、

力もなく負傷により汗を流しながらアリスとの顔が近くなった。

するとアリスが呟く。


アリス

「こんなこともする私は悪だと思う?」


キーム

「んなっ……てめ、何様のつもr……?!あぐっ?!!」


とキームが慌てる声を荒げた瞬間、アリスがキームの腹を殴った。

負傷していた場所に諸にダメージが入ったキームは悶えながら

銃を取り出そうとしたとき、アリスがそれを掴み、

キームの手に握らせて自分のこめかみに当てる。


アリス

「これでもダメ?これでも撃てない?

 私さ、生まれた時から悪って言われてるから

 何が悪なのかそうじゃないのか分からないんだよね。

 だからさ疑問を一つ解消してみせてよ。

 ペインに追っ手を片付けさせろって命令も私がした。

 じゃあ私はペインの司令塔だから悪ってことになる?

 誰かを殺したら地獄に落ちるなら殺さずに拷問することは悪じゃないの?

 もしくは殺さずにただただ何度も痛めつけて、

 放っておくっていうのも悪じゃないの?」


キーム

「ぐぅ……俺のスキルは事実的に悪に満ちた対象を葬ることのできるものだ。

 スキルによって生み出されたこの銃は悪にのみ引き金が降りる。

 だから言ってやる。今この銃はお前に対して引き金は―――"降りない"。

 お前は悪じゃないのは確かだよ……ぐぅ、うっ……くそっ……」


とキームは眠るようにして倒れ伏した。

生温い血に濡れた右掌をにぎにぎしてアリスは笑いながらペインに声をかける。

キームは薄れゆく意識のなかでそんなアリスの

寂し気な横顔を気にしながら目を閉じた。




・




目が覚めるとそこは大木のある花畑だった。

空は黒に包まれどうして自分がここにいるか分からずにいると、

自身の姿を覗き込む目がぱちくりとさせた。


キーム

「んなっ?!!」


スクリロス

「おーーっと!!!ごしゅじん!おきましたよ!!」


巨大な尻尾を抱えながら走りアリスの元に駆け寄る

スクリロスにキームはガバッと起き上がり自身の身体を確認する。

するとそこに傷跡はなく、他に受けた傷までもが完治していた。


アリス

「あら、それは良かった。

スク、自己紹介しておいて。」


スクリロス

「わかりました!!!んしょっ……は、はじめまして!!!」


尻尾は重いのか声を一々出しながら走る天真爛漫な姿をした獣人に

挨拶されたキームは思わず、おう、と返すとスクリロスが呟いた。


スクリロス

「ごしゅじんがまたつれてきたときは、

 きずつけるひとかなっておもったんですが

 やさしいひとときいてあんしん、ですっ!!!

 どーも!!はじめまして!!!スクリロスといいます!!!

 あなたのおなまえはなんですか!!!!」


キーム

「おおっ……キーム・バレットだ。」


スクリロス

「きーむさんですね!!!よろしくおねがいしますぅ!!!!」


するとスクリロスは会釈をしてアリスのいる方へと

駆け寄ったかと思うとそこにいたのペインだった。

それに思わず驚いて引くが、スクリロスが駆け寄ったペインは

少し穏やかな顔つきをしておりさっきまでとは

打って変わったその姿にキームはまた驚く。

するとアリスが近づき喋りはじめた。


アリス

「傷の方はすべて完治させておいたわ。

 手荒な真似をしてすまなかったわね、キーム」


キーム

「……ここまでしてくれるんなら、

 別に構わないがここはどこだ、嬢ちゃん……」


見渡す限り黒く、だが大木と花畑は広がっている。

空という空だけが黒く何も書かれていない。

なのに空間そのものは明るく暗いままではないようだった。


アリス

「ここはどこにでも普遍してる空間、狭間の空間。」


キーム

「は?はざま?」


アリス

「私が作った膨大で広大な世界のこと。

 空間でもあるし世界でもある。

 外部から一切干渉されないけれどこっちからは干渉ができる……

 さて、この世界のことは言ったけれど他に聞きたいことはある?」


外から一切干渉されない、つまりは追っ手は来られない?

と考えに至るとああ、じゃあと言ってキームは呟く。


キーム

「どうして俺をここに呼んだ?あとあそこのコールド・ペインは

 お前の何なんだ?そしてそこのリスの女の子?が

 呟いた"きずつけないひと"ってのは何なんだ??」


アリス

「一つずつ答えましょう。

 まず貴方を呼んだわけ、それは貴方の力が純粋に欲しかったから。

 貴方の罪人を断罪することのできるスキル【罪の銃(キーム・バレット)】

 を持つ貴方が欲しかった……まぁあとは経緯を簡単に調べたら

 貴方結構博識だったみたいだから、その手を借りたかったっていうのが

 正直なところかしら。

 そして二つ目、コールド・ペインは私の計画において

 ちょっと手を貸してほしかったんだけど色々あってどうやら

 私が命の恩人みたいになっちゃって、今は私に仕えている身よ。

 そして最後にスクリロスが呟いた"きずつけないひと"っていうのを

 言うけれど……貴方、"不思議の国"って分かる?」


最後を除いた二つの質問に頷いていたキームは

突然質問されて片眉が上がったが

その言葉にああ、と呟いた。


キーム

「天界に手を出したことで滅ぼされた憐れな国、だっけか。

 手を出したというよりはちょっかいか。

 それで、その不思議の国がどうしたって?」


アリス

「私とスクリロスはそこの生き残りよ。」


キーム

「……詳しく……聞いて良いか?」


アリス

「ええ、長いけれど順を追って話すわ。」


とアリスは自身の生い立ちを語る。

自身のスキルの詳細は言わずに自身の国が滅ぼされたこと、

そしてそのなかでアリス自身が天界の者達に輪姦されたこと、

弟のアリスィアが天界の長により回収されたこと、

落ちていく世界で自身のスキルによりこの世界を作り

世界に入る手前でスクリロスを保護し、

結果不思議の国をアリス自身が終わらせたことを呟き終えると

キームは考え込みながら呟いた。


キーム

「一つ訊こう、どうして事細かに話した?

 詳しくといった俺がこういうこと言うのはあれだが。」


アリス

「貴方の経歴を調べる中でどうしてか貴方が

 天界に関しての情報を漁っていたことかしら。

 それも不思議の国を滅ぼしたっていう大きなニュースがあった後から特に。

 多分おかしいことに気付いたからそれで調べたんでしょうけど。

 まぁそれにもしも私の言ってたことを言いふらしても

 あなたが変な人に思われるだけだから、別にそこは良かったかしらね」


キーム

「経歴を調べるついでに……か。

 ここの世界で覗いて調べたとなると怖いな、ははは……

 確かに俺はちょっと妙だと思って調べたが何も見当たらなかった。

 天界の長、ティフォナス・ホープが不思議の国を消し飛ばすほどの

 能力や魔法、力や武器を持っていたなら……魔界だって警戒して調べる筈だ。

 それも何もねぇのに天界がやったとなれば少し妙ではあったんだ。

 だがしっかしアンタがやっていたとは。

 これは恐れ入った……で、アンタの目的は不思議の国の一件に繋がるのか?」


アリス

「天界に私の弟が連れ去られた。それが大まかな行動の理由よ。」


キーム

「連れ去られた、ってことは直接ここの世界から奪えば良い話だろう?

 なんでできない?なんか条件でもあるのか?」


アリス

「動きたいけどあまり激しくは動けない、が正しいわね。

 身籠っちゃってるし。」


……

刹那の沈黙、キームは目を見開いて叫ぶようにして喋りはじめた。


キーム

「は?!おま、今なんていった?!!」


アリス

「んー?だから今このお腹の中に子供がいるの。

 誰の子かは分からないけどまぁ多分あのとき

 輪姦(まわ)されたことで出来たんだと思うけど……」


キーム

「お……下さないのか……?

 だって見ず知らずの子だぞ?!!

 なっ……それで孕んで子供を……う、産むのか……?」


アリス

「ええ。産むわ。

 だから博識の貴方に助けを乞おうともしたわ。」


あまりのことに茫然としたキームは頭を抑えるようにアリスに問いただす。


キーム

「何か月だ……?というか……

 不思議の国が滅亡した日から何か月経ってる?」


アリス

「外の世界じゃもう3か月かしら。

 でもここの世界はどこにでも普遍するから時が止まっているのよね。

 まぁなんていうかしら、外にいるよりも

 早くなってるって言ったほうが良いかしら。

 だからまぁ……もうプラス3か月進んでるって

 言ったほうが良いかもしれないわね。

 多分この調子で外に出ると一気に成長して大きくなるかも」


計6か月進んでいることにキームは目を見開きながら驚く。

どうしよう、ここにいれば要は2倍もの時間が進んでいると

するならアリス自体の出産もこのままならすぐに来るだろう。

それに誰だか分からない子をこの餓鬼は産もうと決意している。

キームは考えながらここで辞退して外に帰ろうかと思い腰を

上げようとするがアリスがそうだ、と呟いて笑った。


アリス

「私はこの子に罪はないと思っているし、それに下すってなると

 それはそれで貴方の言う悪に引っかかるんじゃないかなって

 思ったんだけれどどう思うかしら。

 あとここまで聞いて"やっぱりやめる、外に帰る"なんて、言う

 貴方自身がもしもいるなら貴方はその人を撃てちゃうのかしら。

 それでも貴方は天界の長ではなく私に銃口を突きつけるのかしら?

 ねぇ、答えて??断罪人さん♡」



 し て や ら れ た 



そうキームは心の中で復唱する。

そして苦しい声を出しながら考えを巡らせる。

するとアリスが呟いた。


アリス

「別に強制はしない。

 それでも貴方が、私が間違っていると思うなら見捨ててくださいな。

 でもここまで聞いて私ではなく天界の長に引き金をかけられるのなら、

 貴方がその引き金を降ろせるのなら、貴方は見捨てずに

 ここにいるべきと思うのだけれど。

 それは貴方に選択権があるわ。」


微笑む彼女にキームは睨みながら溜め息をつく。

どうにしろキームは追われる身であり、

また追っ手を片付け傷を治してもらったものに

こうもせがまれてお願いをされれば断るのは悪なのかもしれない。

そう頭に考えを巡らせた。

凄く簡単にまとめるがキームはそれもしょうがないと

口の中で呟いて分かったと声を上げて、

彼女に片膝をついて手の甲にキスをする。

キームは確か映画で見た中で忠誠を誓うのがそれだったはずだと思いキスをした。

そうやって見上げた先ではポカンとしたが微笑みを返すアリスが


アリス

「では、よろしくね。キーム」


キーム

「分かりましたよ、アリス」







アリス

「そういえばスク、女の子じゃなくて男の子よ。」


キーム

「えっ」


アリスの問いにキームは真顔で驚いた。


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