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第3話

彼と休憩室に入る。


この部屋は院長が彼の体調を気遣って休めるように用意した個室らしい。

部屋は6畳くらいで簡易ベッドと事務用デスクがある。

デスクの上に書類が散らばっているところを見ると

休憩中にも書類と格闘していることが伺えて、<思わず苦笑してしまった。

糊付けされているアイロンがかかったシーツと

デスクの上の散乱具合から考えるに彼はほとんど休んでないのだろう。

院長からこの部屋を貰うくらいだから相当具合が悪いだろうに大丈夫か。


 「弓月、俺の勤め先に来るなんて、どうしたんだい?」

“どうしたんだいじゃない!ここのところ薬の量も増えたし、大丈夫なのか?

私じゃ頼りにならない?もう、辛そうにしている馨を見たくないんだ!!

何も出来なくても、何かしたいんだ!”

「何もしなくていいんだ!

弓月が居てくれるだけで支えになっているから。

弓月に出会って俺は救われた。弓月が居るから安心して寝れる。

だから心配しないで」

“私はもっと馨の力になりたい。

支えっていうのなら頼ってくれよ!

馨はギリギリのところで生きていて、

もっと頼っていいのに落ちるんじゃないかと不安になるだろ!

何も言ってくれないほうが不安になるって分かれ、この馬鹿!”

「そんな優しいこと言わないでくれよ…!

そんなこと言われたら君を置いて逝けなくなる。

もう、長くないってわかっているのに…」


“長くないって…どういうことだよ!?”

「俺さ…、進行性骨化異形症っていう病気に罹っているんだ。

筋肉がだんだん骨になっていって最終的には呼吸も出来なくなるんだ。

現代の医学では治せない。

食事することも辛くなってきたからもうもって2ヶ月じゃないかな。」

“なっ…何で…もっと、もっもっと早く…言ってくれなかったんだよ!?”

「…言えるわけないじゃないか!

でも、君と暮らすようになって進行も落ち着いたし、

何よりもっと生きようと思えるようになったんだ!

もう、長くないけど傍にいてくれる?」

“当たり前だろ…”


彼はその3ヶ月後静かに息を引き取った。

死ぬ1ヶ月前まで病院で働き奔走した彼は私にとって太陽だった。

彼のように誰かのために生きたいと、

誰かの役に立ちたいといろいろ奔走した結果、

この力を得、主としてこの森に住まうことになった。


私はもう長くは無い。


だから、君たちに人間全てを憎んでほしくなくて、この話をした。

この森に来る人間は私たちを狩る恐い存在だが、

それ以外にも平穏を求めて

同じように生きている人間がいるということを

知っていてほしかった。全てを憎まないで…




 もう、疲れた…。しばらく寝させてくれ…。

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