初恋の行方
忘れ物した…
はぁ、はぁ…疲れたー
3階まで階段を登って、やっと教室だ
早く教科書取って帰るぞ…
ドアに手をかけた瞬間、
♪〜
誰が歌ってるんだ?
綺麗な歌声の邪魔したくなくて
しばらく聴いていたんだ
「え…誰?」
[あ…ごめん せっかく歌ってたのに]
「伊藤くん…」
[その曲、何て曲なの?]
「…好きな歌手の…」
[へぇ!!教えてよ!!]
「え?あ、うん…〇〇っていう…」
[そっか、また聴かせてくれよ!]
「…初めて…」
[え?]
「そんな風に…言われたの」
[そうなのか?綺麗な声だったけど]
「!は、恥ずかしい…」
[あ、ご、ごめん…]
「…あっ そういえば、伊藤くん、どうして?」
[あ!忘れてた 教科書忘れてさ テスト前なのに…これこれ!]
「英語?」
[そうなんだよ 苦手でさ]
「…教えようか?」
[ほんとか!?助かる!次赤点取ったらやべーんだ頼むっ!!]
「…うん!」
…渡辺のこんな笑った顔、初めて見た
「?伊藤くん?」
[あ、なんでもない いつ教えてくれんの?]
「今からでも…大丈夫…」
[そうか!?じゃあ、頼む]
机はたくさんあるしな…
ちょうどいいから、このまま教えてもらうことにした
教科書と、範囲が書かれたプリントを見比べて
渡辺の勉強方法を教えてもらった
あと3日しかないからな…
付け焼き刃だけど、こうして教えてもらいながら
勉強してると 理解できそうな気がしてくるから
不思議だ
早いもので、3日目
[結局毎日教えてもらっちゃったな]
「ううん あの、気になってたんだけど…」
[ん?]
「英語だけで大丈夫なの?」
[ぐっ…]
「あら…」
[1番やべーのが英語なんだ 次が数学、化学、地理…]
「…明日からだよ?テスト」
[やべーかもしんない…俺、お前と進級してーよ…]
「…もうちょっと時間あるから、頑張ろう?
それと、明日から 朝もやろう!」
[朝…?]
「うん!7時に待ち合わせしよう?」
[お、おう…いいのか?]
「うん!」
[ありがとな!頼む!]
朝も会えるんだ…
…ん?朝も…
俺、会いたがってんじゃん
好きじゃん、渡辺のこと
【渡辺point of view】
俺、お前と進級してーよ
そんなこと言われたら…協力しないわけにいかないよ
明日から、朝も勉強することになって
目覚しを5時に合わせた
早く寝よう…
"あかりー電話ー"
え?電話…誰だろう
「はい…?代わりました、渡辺です…」
[あ!渡辺?俺!]
「伊藤くん!?」
[うん、起きてたか?]
「うん、大丈夫だよ どうしたの?」
[明日さ、国語と科学と生物だよな?]
「うん、そうだよ 科学教えればいいよね?」
[うん 明日も頼むな!]
「うん、頑張ろうね じゃあ…」
[あ、渡辺!]
「ん?」
[あの…]
「ん?なに?」
[ありがとな じゃっ]"プーップーッ…"
…切れちゃった
科学ね、あっ、他の教科書も入れとこう…
「まだ、来てないか…」
先に準備しとこ…
10分…来ない… ちょっと、紙にまとめておこうかな
20分…
あっ、足音が聞こえる
[渡辺!ごめんっ起きれなくて]
「ううん、大丈夫?」
[すまん!待たせて…]
すごく悲しそうな顔していて…
反省してます!みたいな…
そんな顔見たら怒れないよ
「大丈夫だよ!やっちゃおう」
[あぁ!えーっと…]
「範囲はここからだからー…これ、少しまとめておいたの 使って」
[助かる!!]
40分くらい経った頃、
〔あれぇー!?なに、2人で勉強してんの!?〕
クラスメイトがぞろぞろと入ってきた
[教えてもらってたんだよ!]
〔付き合ってんだー!?ひゅーひゅー!〕
「え!?え、あの…」
[お前ら!やめろよ!渡辺が困ってんだろ…]
〔だって、お前がこんな早くに起きれるわけねーのに〕
え…?
[ばっ!うるせぇ!渡辺、ありがとな!俺行くから]
「あ、うん…」
移動した伊藤くんは、まだクラスメイトたちにからかわれているようだった…
私のせいだ…
テスト終了後
午前中で終わりだからみんなぞろぞろと帰っていく
私は…伊藤くんがどうするのか、見ていた…
帰っちゃうのかな…
【伊藤point of view】
渡辺…残ってくれてんのかな…
でも、俺が話しかけたら…
また、からかわれたら 渡辺、嫌がるだろうな
あ、みんないなくなったか…
[あっ、]
「あの!」
[え?なんだ?]
「あ、ううん、なに?」
[あ…うち、来ないか?]
「え?」
[ここでやってたら、またからかわれるかもしんねーし]
「いいの?」
[おう!飯も用意してあると思うから、行こうぜ]
「うんっ」
でも、一緒に帰ってるところを人に見られて
またからかわれたんだ…
[ごめんな?]
「大丈夫…」
[俺はいいけど、他で何か嫌なこと言われたら、
俺に言えよ?]
「うん ありがと…あの、伊藤くん」
[なんだ?]
「あの、数学と地理も持ってきてあるから」
[助かる!!食い終わったらやろーぜ]
「うんっ!」
[なぁ、渡辺ー]
「なに?」
[教えるのうまいよな、先生とか向いてるんじゃないか?]
「そ、そうかな…」
[うん、頭いいしさ]
「そんなことないよ…一緒に頑張ろう?」
[おう!]
結局6時まで付き合ってくれた
暗くなってたから、送っていくことにした
[この道暗いな]
「うん」
[良かった、ついてきて 心配だったから]
「え…ありがとう」
[それに、渡辺の家もどこかわかるしな!]
「うん 遊びに来てね」
「え?い、いいのか?」
[うん!]
「サンキュー」
「ここ…」
[そっか!ありがとな、ほんとに]
「ううん、こちらこそ…」
[明日の朝も…いいのか?]
「うん、大丈夫」
[わかった!明日は遅れないで行くよ]
「あ…」
[なんだ?]
「朝、起きるの苦手なの?」
[そうなんだよーでも、渡辺が待ってるって思えばだいじょ…あ]
[…]
[じゃ、じゃあ、また明日な!]
「あ、うん…またね」
や、やべー…あんなの、告ったみてぇなもんじゃん…
朝になったら、忘れててくれ…
気まずくなったら嫌だぞ…
【渡辺point of view】
………うう
緊張する どうしよう
早く寝よ…って思ったのに…
でも、嫌な感じじゃなくて
わくわくして眠れない みたいな…
でも、ちゃんと起きられた…
今日は遅れずに来るって…言ってたから
「…来てない」
しょうがない…
地理の年表、まとめておこう
…25分
あ、すごい走ってくる音がする
[すまん!!]
「来た…」
[ごめんな、俺…]
「ううん、大丈夫…あっ寝癖、ついてる…」
[え…]
「あっ、…ごめん」
思わず、髪を触っちゃった
[いや、いいよ]
「そういえば…ご飯食べてきた?」
[や、急いでて…]
「これ、昨日のお礼…」
[作ってきてくれたのか!?]
「うん」
[ありがとう!腹減ってやばかったんだ!]
「どうぞ、鮭と梅だよ どのくらい食べるかわからなくて2個ずつあるよ 全部食べていいから」
[渡辺は食べないの?]
「私は食べてきたから」
[そっか!んじゃ遠慮なく…]
「ゆっくり食べてね、お茶もあるから」
[ありがとな うめぇー鮭だけど]
「ふふっ…」
「! 笑ってくれた…」
「え?」
[うめぇーや!うめぇー!]
「もう…伊藤くん…ふふっ」
楽しいなぁ…
「あ、ごはん、ついてる…」
[え?]
「…(ぱくっ)」
[あ…]
「うん、おいしくできてた」
[…な?うめぇーだろ?]
「うん!うめぇー!」
本当におなかすいてたんだ…
全部食べてくれた 作ってきてよかった…
〔あー!また、お前らっ!〕
[げ、早くねぇか!?]
「!!」
〔俺たちも教えてもらおうと思ってよー〕
[だめだ!渡辺は俺の…せ、先生なんだからよ]
「…!」
〔お前渡辺のこと好きなんだー!わーっ!〕
[う、うるせぇ!勉強の邪魔すんな!]
「…い、伊藤くん…」
[あ、ご、ごめんな…]
どうして?悲しそうな顔…
嫌がってないよ
そんな顔、しないで…
[俺、戻るよ 自分の席 ありがとな!おにぎり]
「え?」
そう言うと、本当に戻ってしまった
さっきまで、隣の席にいたのに…
今は端と端の席になっちゃった
もう少し勉強してたかったな…
寂しいな…
【伊藤point of view】
またからかわれた
俺は何言われてもいい
でも渡辺は…嫌だよな 困った顔してた
嫌われたくない
ほんとはまだ時間あんのに…
自分の席に戻ってきた
あー…こんなに遠かったっけ?
さっきまで隣に座ってたのにな
だめだ!
[渡辺]
「え、なに?」
[今日も一緒に帰ろう]
〔おおおぉ!!!〕
[うるせぇ]
「…うん、帰ろう!」
その瞬間、教室がシーーーンとなった
こいつらは まさか、渡辺が帰ろうって言うと思ってなかったんだろう
「あっ、これ…年表まとめたから…」
[サンキュー!!じゃ、あとでな]
「うん!」
少しずつ、ざわざわが戻ってきて
俺の周りもさらにうるさくなった
〔俺も彼女ほしいなー〕
[ほしいなら、人をからかったりすんのやめろよ]
〔ちぇっ 言ってろ!〕
今日のテストはわりと出来た気がする
渡辺が教えてくれたところが何個もでてきた
ちょっと、自信ある
[渡辺 行こうぜ]
「うん」
2人で昇降口へ向かう
俺と渡辺が歩いてるのがそんなにおもしろいのか?
〔落ちこぼれと学年1位が歩いてる…〕
〔釣り合わねぇー〕
[うるせぇーぞ]
「伊藤くん…行こう」
[あ、あぁ…]
[ごめんな…嫌だよな]
「人に言われるのは嫌だけど
伊藤くんのことは好き…」
[…え]
「…」
[俺も好きだ]
「…ほんと?」
[うん 好きだ]
「伊藤くん…」
[もし 俺が赤点取らなかったら付き合ってくれ]
「…絶対に赤点取らないで!勉強しよ?」
[おう!一緒に進級しよーぜ]
「うんっ!」
【4月】
…伊藤くんの名前…は
え?ない?なんで!?
Aも、Bも、Cも…Dも、どうして!?
もう1回…
[おい…どこ見てんだよ]
「えっ?」
[それは2年生のクラスだろ?]
「あ、あれ…?」
[ほら、俺たちはこっち ここに書いてあるだろ?
また同じクラスになれたな]
「ほんとだぁ…よかったぁ…」
[…お前のおかげだよ ぁ、あかり…]
「!…駿介くんっ」
これは"落ちこぼれ"と呼ばれた男が
1年で某有名大学に彼女と進学することになる話
タイトル〘初恋の行方〙
Fin...
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