第2話 原子分解収納銃
前回の続き、第2話では、宇宙人ビビルと多々野の出会いが語られます。果たしてどんな登場シーンなのか?そして、原子分解収納銃とは?新しい登場人物、本間カイナ、妹の本間カナ、そして大学生の田代。都市伝説研究会とは?面白さを満載しました。
よろしくお願いします。
人間関係は複雑である。
高校生となるともっと複雑。
宇宙人との関係となると、見当もつかない。
前回のエスパー・グッズ騒動の1か月前…。
ここは多々野の離れの、1DKの勉強部屋。一階は駐車場になっている。
部屋の中から数人の話声が聞こえる。
「え〜今から月に一度の、都市伝説研究会の集会を始めようと思います」
と3人しかいないのに、かしこまる多々野に…。
「今回はわたしのわがままで、新作のストーリーを、2人に聞いてもらいたいんだけど、どうですか?」
と集会メンバーの1人、本間カイナ。
「おいおい、プライベートなことは禁止のはずだろ、カイナちゃん!」
と気分悪そうな多々野。
彼女は多々野とは別の、近場の高校に通う、ボイッシュ感漂う小麦色した女子高生。同学年である。
女の子には珍しく、SF漫画家を目指し格闘技も大好き。ロングヘアとセーラー服が良く似合う。
「田代さんはどう思います?この会の目的は、都市伝説の意識を高めるために、個人個人が厳選した情報を発表するんじゃないんですか?」
コタツの向かいに座る田代に振ると…
「プライベートって言ったって、漫画の
ストーリーだろ?カイナちゃんの描くのって、SF漫画に決まってるんだから、僕は興味ありますけど…」
「わ、分かりました、田代さんがそう言うのなら…」
田代は近くの大学に通う大学生。
都市伝説に関しては、多々野が一目置いている人物である。
コタツに手を突っ込み、気分悪そうな多々野に…
「ささ、2人とも食べて、今日は話を聞いてもらうから、奮発したんだから…」
どんよりとした空気を元に戻そうと、左右を気にかけて、コタツのテーブルの上にあるクッキーの箱を開けたり、ポテトチップスの袋を破るカイナ。
「へへ、わたしはお煎餅党なんだ!と大袋を破り、1枚ずつ包装されてるのを取り出して、率先して食べ始める。
「ちょっと冷たいけど」
と買ってきた500㎖のペットボトルのお茶もごくごく。
「多々野くんはコーラ、田代さんは紅茶でしたよね。いつものスーパーのセール品じゃないのよ。2人の好きそうなものを買ってきたんだから…」
「それさじゃ遠慮なくいただきます」
多々野はポテトチップスが大好き。
「わたしも、いただきます」
田代も大のクッキー好き。おかげで3か月に1回は歯医者に通うとか…まっ別の理由があるとの噂も…。
「それじゃ始めますよ」
「ピカッ、ゴロゴロゴロ〜」「ザア〜ッ」
「うわ〜降り出しちゃったね…」
と田代がオシャレな丸メガネに手をやり、窓の外に目を向ける。
と同時に、多々野が飼ってる茶トラ猫の母ちゃん(猫の名前)が、一目散にコタツに入る。
雷の音が苦手なようである。
「珍しいよね。4月なのに…昼間暑かったもんね。夏は集中豪雨だし、日本の四季はどこいっちゃったんだか…でも心配ないよ、夕立なんてせいぜい2時間、集会が終わる頃には止んでますって」
と他人事の多々野。
それじゃ話すわね。
「ピカッ、ガラガラガッシャーン‼︎」
どこかに落ちたような、大きな雷の音。
停電になるのか、2〜3回、天井から吊り下がっている丸い蛍光灯が点滅する。
ビビっている猫の気持ちが伝わってくるようだ…。
「多々野くんちってまだLEDじゃないの?」
「ここは元々、亡くなったおじいちゃんが使ってた部屋だから…ああ見えて親父ケチだから、使えるもんは、とことん使うタチだから…」
と自分のことは棚の上に置き、父親の悪口を言う多々野。
血は争えない、多々野も相当なケチである。
真空管の30インチのテレビ、旧式の電気コタツ。壁には「ブレードランナー」「エイリアン」などの昔のポスターが、元の壁が見えないくらい貼ってある。
「へえ〜だから古い漫画本が沢山あるのね」
本棚にはまんだらけに持っていけば、高額になりそうな漫画本がぎっしり。
「古いのは全部おじいちゃんのだよ」
「なんか、怖い話に持って来いの雰囲気だけど、SFですよね」
とクッキーをほうばり、ペットボトルの紅茶をがぶ飲みする田代。
パーカーに2〜3滴たらすが、問題にしない。
「今回はスリラー?コメディも入ってるかな…主人公はわたしなの!」
「えっカイナちゃんが主人公なの?ドキュメンタリータッチって言うこと?」
飲みかけたコーラの手を止めて、学ラン姿の多々野が身を乗り出すと。
「面白そうですね」と田代。
「それじゃ、始めるわね」
「わたし、スーパーの鍵開けのバイトしてるじゃない…」
鍵開けとは、従業員の入り口のシャッターを開けておく仕事である。勿論そのあと搬入の仕事もあるのだが…。
「最近ネズミが出没しちゃって大変なのよ!
先週もこんなのが、ネズミ取りにかかってて」と右手と左手の人差し指を20センチ幅くらいに立てて…。
「わたし、ダメなのよね、ネズミ。店長ったら、なんでミッキーは良くて、ネズミはダメなんだと、わたしをからかうのよ、酷いでしょ」
早く話を進めろと、言わんばかりの2人の視線に。
「ごめんごめん」
「それで、搬入口のシャッターの内側に、
夜のうちにネズミ取りを仕掛けて置くのよ。
縦50センチ、横50センチ、鳥黐みたいなのがべっとり付いた四角いやつ」
「そして、シャッターを開けるために電気を点けると…ジャジャ〜ン、なんとそこには………ネズミ取りに掛かった宇宙人が‼︎」
「えっ、宇宙人がネズミ取りに掛かってるって
面白いね」
意外性があると興味深々の多々野。
「宇宙人は焦ってて、ビビってるのが、わたしにはわかったの。小柄で身長150センチくらいだから、見下ろすわたしのことが怖いのよ…わたし170センチあるし…」
「そして、手に持った銃をわたしにむけるの」「最初のクライマックスだね」
と相槌を打つ多々野。
「わたしは格闘技の技をフルに使い、その銃を蹴り上げるの」
「空中に舞った銃から光線が発射され、まだ暗いから、凄く光って見えるの。そしてその光は、近くにあったビールケースに…」
「ビールケースは一瞬で消滅」
「お、恐ろしい武器だね」
「宇宙人は、焦ってて小型UFOが回収に来て、そのまま吸い込んで飛び去ってしまうよ…」
「転送ってやつかな、スタートレックによくあるシーンだよね」
スタートレック、昔アメリカで放映されたSFドラマ、映画にもなっている。
「転送って言うより、吸い込まれたって感じかな…」
「わたしは、残された銃を拾い、引き金に
触れてしまうの、そしたらなんと…今さっき消えなはずのビールケースが、空中に出現するのよ!」
「えっ一体何が起こったのよって…」
「この時のわたしの表情、絵にするの難しいわね…」
「その銃は物体を吸収する装置か何かなのかな…」と、都市伝説好きの多々野が黙っていられない。
「考えたの、原子分解収納銃ってのはどうかなって」
「それいいね、レトロっぽい響きで逆にカッコイイ」
「その日は日曜なので、学校は休み。
すぐに田代さんに相談に行くの」
「えっ僕も登場するの⁉︎」
と少しびっくりした表情の田代。
「何言ってるの、ここであなたが出て来ないと話にならないじゃない」
「そ、そうだな…」
「銃の説明だろ」
「ピンポ〜ン」と乗りの良い多々野に応えるカイナ。
「わたしのアパートの隣に、空き地って言うか、運送会社が車庫や倉庫代わりに使っている場所があるでしょ」
「あそこね、参っちゃうよなぁ〜もしあそこにアパートでも建っちゃったら、物件の値打ちが下がっちゃうよなぁ〜あそこのいいところは、日当たりだけだから…」
とカイナのアパートの心配をする多々野。
実はカイナのアパートの大家さんは多々野の父親。それを任されてる多々野が実質大家さんなのだ。
「4世帯入るから、月に20万くらいは稼いでもらわないと困るんだよなぁ〜」
「ン、ンッ」と咳払いする田代。
「あっごめんごめん、話を続けて下さい…」
と目をつむり、額に手を当てて謝るポーズの多々野。
「…あの場所、荷台のある6トンくらいのトラックが片側に10台くらい止まっていて、重機やパイプみたいなのが積んであるの」
「空いてるところに、サビた古いドラム缶が立ててあって、そのドラム缶の上に色んなものを置いて、検証するのよ」
「ビール缶やブロックや角材、まわり道の矢印のついた立て看板、あと赤い三角のやつ…」
「あ、それはパイロンって言うらしい」
とここで、説明係の本領を発揮する田代。
田代も一度、カイナちゃんちに行ったことがあるので、その場所を知っている。
「使い方は簡単、一度この銃を物体にむけて
発射するの。絵にする場合は、光線がカメレオンの舌みたいに伸びて、吸い込むって感じかな…コマ割りする場合は、分かりやすくスローモーションにして、分解写真みたいに…」とカリナも解説。
「ドラえもんっぽく、スモールライトにしちゃうと、ちょっと現実感が無いよね、先生のアイデアは素晴らしいけど…」
と藤子先生を敬愛する多々野。
「タイムマシン、どこでもドア、タケコプター、あの先生が幼い頃の俺たちのSF好きに、火をつけてくれたんだから!」
首を縦にふる3人。
「そして、もう一度引き金を引くと銃に吸収されたものが、再生されるってわけ」
「一見銃に見えるけど、これは宇宙人のサンプル回収装置ってわけ、地球人を調べるためのね。スーパーには日用品なら、なんでもあるし…」
「スーパーに忍びこんだところ、ネズミ取りに掛かったってわけ、面白いでしょ」
「最先端の科学力を持った宇宙人が、ネズミ取りに掛かるって言うのが面白いね」と片手にポテトチップスの袋を持ち、パリポリとほうばり目を輝かせる多々野。
「検証後、わたしのアパートで、田代さんと妹のカヨと、目の前のコタツのテーブルの銃を見つめ、どうしたもんかと話合っていると…」
「ドンドンと玄関のドアを叩く音が…」
「わたしがドアを開けて見上げると、さっきの宇宙人が立ってるの」
「うわー、そこ、めちゃめちゃ怖いじゃないですか!」
「小さな宇宙人だったのに、巨大化したのかなと思ったら、丸い掃除機大の大きさの、浮いてる小型UFOの上に乗ってるの」
「そして、上からわたしに手を伸ばして来るの…銃を返せって感じで…」
「こ、怖!ここ最大のクライマックスだよね」
「でもさっきのネズミ取りがまだ、足にくっついていて、思いっきりこけるの」
「えっ!ここがコメディってわけ?」
「身の危険を感じたカヨは、姉さんを救おうと、テーブルの上の銃を取って、宇宙人に向けてその銃をぶっ放すのよ!泣きながらね…」
「小学一年生のカヨちゃんが…
そこのところ、妙にリアルだよね。凄く良いよ。こんなこと言っちゃなんだけど、カイナちゃんが作った話じゃないでしょ」と田代の方を見る多々野。
「い、いやカイナちゃんのオリジナルですよ、誓って僕は協力していません」と、
動揺した感じで、紅茶をぐいっと一飲みする田代。
「…で、その後どうなるの?」
「それでね」
とカイナが話の続きを話そうとすると…。
「ドンドンドン」と、怖いようなタイミングで、多々野の2階の玄関のドアを叩く音が…。
「う、宇宙人ってことはないよね…ははは」っと、冗談っぽく多々野がドアを開けると…」
「こんにちは」
と、片手に濡れた傘を持ち赤い長靴を履いた、ニコニコ顔のカヨちゃんが立っていた。
「なあ〜んだカヨちゃんか、1人で来たの?」
「お友達も一緒なの」
と、カヨちゃんの後ろに、ニット帽を被った、ジャージ姿の身長150センチくらいの子供が…
良く見ると、ジャージには本間の名前が縫い付けてある。
ほとんど人間の子供のようだが、耳の形が、スタートレックの、ミスター・スポックのように尖っている。
そして、ニット帽を脱いで、
「宇宙人のビビルです。暫く厄介になります。よろしくお願いします」と…
つるつるな頭でお辞儀して、丁寧に挨拶。
目が点になるとは、このことだろうか…。
宇宙人の存在を信じてる多々野だが、まさかこんな身近なところで、しかも暫く厄介になりますって、まるで居候…驚きを隠せない…」
「ご、ごめんなさい」カイナの謝る声が多々野の後ろから聞こえる。
多々野はガクっとひざまずく…。
「う、宇宙人が本当にいたなんて…すると、さっきの話は…」
「ごめん、みんな事実なのよ…」
「どうやって説明したらいいか、田代さんと
相談した結果、1番良い方法じゃないかって…
直接本人が来ちゃえば、理解してくれるし、断れないだろうって、わたしが…」
とカイナが言いかけた時、田代が横から
「ゴメン、僕なんだ提案したのは…多々野の性格知ってるから、多々野だったら、きっと受けいれ入れてくれるって…」
「頼むよ…」
手のひらを重ねて、拝むように田代が何度も頭を下げる。
一目置いている田代にこんな風に言われて、
断る理由は、多々野には1ミリもなかった。
外の雨はいつのまにか止んでいた。
暫くして、多々野の部屋からは笑い声がもれる。
「それで、銃の中に吸い込まれたわたしを、助けてくれたのが、カヨちゃんてわけ。
もし、カヨちゃんが2人を説得してくれなかったら、わたしは死んでいました」
「そして、銃の中にいるわたしが、放出方法を
2人に教えてなんとか…」
コタツに入り、訊き入る4人に勉強机の椅子を逆座りして、流暢な日本語で話すビビル。
椅子の座り方は、まだわからないようである。
「だって、もし宇宙人が死んだら、わたし人殺しになっちゃうでしょ」とカヨちゃん。
「厳密に言うと人殺しには、ならないと思うけど…」と申し訳なさそうに多々野。
「あっそうだ、この銃の原理について説明しておくね」と得意顔のビビル。
「収納時、銃から照射される特殊なビームが、
対象の原子を構成する粒子(陽子・中性子・電子)の結合を瞬時に解き、純粋なエネルギー(光子や電磁波の塊)に変換します」
「それ、アインシュタインのE = mc²ってやつだよね」と田代が言うと。
「その通り、物質は膨大なエネルギーに変換できるため、そのエネルギーを銃内部の「量子バッテリー」に吸収、チャージすることになります。
「チャージってとこは、分かります」
と負けず嫌いなら多々野。
「わたしも…」とカイナ。
「出現時は、逆のプロセスを行います」
「バッテリーに蓄えられたエネルギーを、銃口から放出し、空間の一点に超高密度で集計させることで、エネルギーから再び物質(原子)を創り出すってわけです」
「でも、物質をそのままエネルギーにすると、ほんの小さな物体でも、水爆並みのすさまじい熱量になってしまうんじゃ…」
また田代が声を挟む。
「あなた賢いですね」
「そこは、銃の内部に熱を一切外にもらさず、安全にエネルギーを封じ込める、絶対零度、超磁気フィールドが搭載されているので、安全です」
「なんか、よくわからないけど、凄い性能の銃なんだね」と多々野。
「原子分解収納銃…中々いいネーミングでしょ
と自慢げににカイナ。
「今回の一件、一宿一飯の恩義は返させていただきます」
と、ヤクザ張りの言葉使いで頭をさげるビビル。
「本当にこいつ、宇宙人なのか?やけに慣れ慣れしいし、一宿一飯なんて言葉…」
「あれから毎日のように、テレビを見まくってるのよ。ヤクザ映画か時代劇の影響よ、きっと…」
「それでさ、暫く多々野くんのとこに住まわせてやってくれない?」
「し、暫くって…」
「多々野くんのところ、親父さんが帰ってくるのは、年に数えるほどだし、母屋に1人で住んでる耳の遠いおばあちゃんは、殆どこの部屋には来ないでしょ」
「友達が泊まってるって言えば、誤魔化せるって…以前も長い間居候がいたことあったじゃない」
「それから、彼の飯代賄えるのは、小金持ちの多々野くんくらいだから…」
「えっ宇宙人もご飯食べるの?」
「カレー、ラーメンなんでも…地球人とおんなじ…テイクアウトで持ち帰った牛丼なんか、大盛り3人前をペロリ」
「食費が大変なのよ」と小声で多々野に耳打ちするカイナ。
食費のことを聞いて、ケチな多々野が少し嫌そうなそぶりをするのだが…。
「そして、もう一つ、このことは俺たちだけの秘密だからね‼︎」
と、急に真剣な表情になる田代。
部屋の空気が一変する。
「映画、ETのような展開にはしたくないでしょ」とカイナも真剣な表情。
「子供たちが宇宙人(ET)をかくまうんだけどNASAの人たちがやって来て…映画だからハッピーエンドに終わったけど…」
「現実はそんな展開にはならないだろうな…
」と多々野も真剣な表情。
彼らは都市伝説研究会の一員。
どんな展開になるかは、百も承知である…。
「にゃ〜」
とコタツから這い出て、トコトコと、座っているビビルの足元にスリスリする、茶トラ猫の母ちゃん。
「どうしたんだろ?母ちゃん…」と人見知りの母ちゃんにびっくりするカヨちゃん…。
猫の母ちゃんは大歓迎のようである。
第2話、お読みいただきありがとうございます。さて、次回第3話 今か未来か?では、またエスパーグッズ事件のクラスメイトの話です。高校2年生、大学受験を控えた大切な年、そんな時、一年間だけ彼らがエスパーグッズを使うことが出来ると、宇宙人ビビルから聞かされます。果たして彼らはエスパーグッズを使うのか?使わないのか?迷います。そんなお話です。




