007―8 7回目の憑依 ~孔伷さん、ついに中華全土を統一する?~
「ふう、それじゃお連れしたわよん! ファイトッ!」
わりと優しく下ろされた。目の前には荀彧がいて、漢文がウインクして出ていった。なんだろ、何か告白でもされるのだろうか。
「我が君、急にお呼びしまして申し訳ございません」
あ、これは漢文が拡大妄想解釈した奴か。荀彧は単に内密な話がしたいから俺に伝えてきてくれとでも言ったのだろう。
人選ミスだぞ荀彧!
「うむ、次回からわしを呼ぶときの人選はしっかりするように……。で、いかがした荀彧よ。そんなに重要な話なのか?」
「はい、我が君は今や大陸の大半を手中に治めその偉業は昨今並ぶ者はございませぬ」
うんうん、途中から孔伷さんはお神輿でワッチョイワッチョイされてるだけだったけど偉業だよね。
「さらに伝国の玉璽を手中に収められ大陸の統一も近いことかと……」
確かに残るは盧陵に追い込んだ孫堅を潰せば中華統一だな。
「荀彧、そなた今日は世辞を言いに来たのか?」
「おたわむれはやめてくだされ、臣は真面目でございます。大陸の大半を平定された今、民衆は新たな指導者を求めております」
ん?
「速やかに帝位にお即きになり、中華統一の軍勢を興されるべきかと存じます」
んええええええええ? 意外だ、一番反対すると思ってた……。
小窓の孔伷さん、偉そうな冠かぶらなくていいから。気が早いよ!
『帝位をお望みになりますか?』
ゲーム的通知が悪魔の囁きに聞こえるけど。
「――そなたの言う通りだな、分かった。帝位に即こう」
「おお! お聞き届けくださり、祝着至極にございます! 早速、吉日を選んで即位の儀を執り行いましょう」
「「「「「おめでとうござるッ!!」」」」」
奥の扉が開かれると、司馬懿や呂布将軍たちが拱手しながら勢ぞろい! ……ついにここまで来たか。
「皆の者、わしはこの地において皇帝となり、中華統一を誓う!!」
「孔伷様ァ! ラブラブサンシャイーン!」
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
なんか漢文に反応したみたいになってる……。
◇◇◇
―― 200年4月 夏 ――
あれから落ちぶれ君主孫堅ちゃんに、お宝を贈りまくって敵対値を0にまで下げることにした。
王者の風格を大事にしたいのと、ぶっちゃけ配下に出来た君主が陶謙以外いないことに気が付いた。ループはないと思いたいが、もしまたループするのであれば次回は孫堅を選びたい。そんなわけで――
「そろそろ孫堅殿に降伏勧告をしてみようと思う。わし自らが会いに行くのだ、きっと承諾するだろう」
最後の仕事ぐらいは、孔伷さん自ら頑張ってもらいたい。うん、小窓の中で『わしに任せろ』とプラカードも出ている。
「……は? 大胆すぎます! 我が君はご自分の立場というものをわかっておられぬようだ。もっとお考えくださいませ!!」
てめ、荀彧こら! 俺は皇帝だぞ! ここ数年、俺頭良い感出して色々と助言くれたのはいいけど、結構外してたからね?
お前のどや顔にどれだけ裏切られてきたか……。
「まあ、とりあえずわしが行く。断れば攻めとるだけだ」
「……これ以上は何も言いますまい。はあ――」
ちょっと頭良いからって遊びがないのはいかんよ。うん、まあ孔伷さんに任せなさい。
◇
「おお、これは孔伷殿、自らお越しとは何か重大なことでも……何なりと申してくだされ!!」
強面のおじさん、孫堅。南東の狭い領地に押し込まれているわりには堂々としているな。
さてと、今『何なりと』って言ったな? では言わせてもらおう。
「孫堅よ、ここで死ぬのは凡夫。英雄は死んでいった者のために生きねばならぬ、そろそろわしに降るのだ。悪いようにはしない」
「…………」
3ヶ月、ずっとお宝や金に米を友好の証に届けてきたし、どうだ? もう戦争なんてやめようぜ。
「お待ちください!! 孫堅様、どうかお断りを……、初めは歓待されましょうが、いつか殺されましょう」
「なんと無礼なッ! 孫堅、そこの者を切れッ! 中華全土をふらふら徘徊する老人の諫言など聞く価値はない」
孔伷さん、思ってても口に出したらダメ! 油断した、かっとなった孔伷さんが主導権握ってぶちかましてくれた。
「黙れ! 今降伏すれば死んでいった者たちに合わす顔がないわ! 下郎、出ていけ!!」
「ふん、命だけは助けてやろうと……なぜわしの心が分からぬ」
孔伷さん、皇帝なんだしもう少し度量をさ。いやまあ、後は攻めるだけか。
◇
―― 盧陵の戦い ――
さて、いよいよ最後の戦いになりました。我ら官軍は10部隊で兵力16万7500、対して逆賊孫堅は8部隊で兵力8万4046。兵力差はほぼ倍以上。
部隊内訳は、孔伷皇帝2万、趙雲2万、呂布将軍1万9000、呂蒙2万、曹操2万、太史慈1万7000、黄蓋1万5500、周泰1万2000、張遼1万3000、関羽1万1000。
天候は――豪雨。最後まで期待を裏切らない雨男。
陸地中央の城に周瑜、他6部隊が孔伷軍を待ち構え、君主の孫堅だけは、一番南の端の城にぼっち待機中。
出陣した場所からだと、実は船で南下するだけで河を挟んだ向こうの陸地の奴らを無視して攻略できそう。
てなわけで、楼船、走舸で南下作戦を決行する。
孫堅が持つ水計だけは注意が必要だけど、南の陸地もないわけではない。
「なんと! あのような大船団を擁していたいたとは……!」
周瑜の悔しそうな顔を尻目に孫堅を囲んでふるぼっこ。
「おのれおのれおのれ孔伷! せめて近くまで出てこい卑怯者め!!」
うん? 孔伷皇帝が動くわけないだろ。スタート地点から激励したあとは兵糧庫をしっかり守ってますよ。
いええええ! ウイニングラン!
勝負もついて、周瑜や孫権たちも俺の配下になった。いよいよ孫堅と最後の……まじで最後のスカウト交渉だ。
「くそ、離せ離せ! このような事で俺の心は屈せぬぞ!!」
「周瑜も孫権もわしに降った、意地をはるのはやめるのだ」
「人の下につくなど耐えられぬ! 孫家の血は消えぬ、ならば悔いはない」
しまった、孫権が配下になったことは伏せておけば良かった……。孫堅、配下にならずか。
「……ではさらばだ」
「ふっ、俺のために逝った奴らが呼んでいる、今いくぞ」
――ザンッ
『世に聞こえし孫堅、今ここに散らん……』
これで中華統一か、あっという間だったな。とりあえず今月は疲れた、何かするにしても来月からだ。
『200年5月、孔伷は中華統一の偉業を成し遂げた……。長きに渡る乱世は終わりを告げた。戦乱を鎮め、中華統一を果たした孔伷は本格的な治世を前に各地の重臣を一堂に集めた』
「みな、よく集まってくれた。ついにこの孔伷が天下を統一することができた。そなたたちにも苦労をかけた改めて礼を言う」
「孔伷様……もったいなきお言葉……」
と趙雲が感極まって泣いている。
「俺様も微力を尽くした甲斐があったな」
呂布将軍、こちらこそお世話になりました。
「されどまだ、天下の人心は定まってはおりませぬ」
司馬懿が少しだけ場を引き締める。そう司馬懿が……? 荀彧先生はどうしたんだ?
「長きに渡る大乱で、民も国土も疲弊しております」
趙雲、真面目か!
「そのとおりだ。わしはこれから天下の復興という大事に挑まねばならぬ。それは天下の統一よりもはるかに難しい事業になることだろう」
「……我ら一同、身命を賭して我が君をお支えいたす」
司馬懿ありがとう。
「不逞な輩を探し出して一網打尽にしてやるぞ」
呂布将軍が一番心配だけどね。
「我が君なれば必ずや民たちの笑顔がたえない桃源郷を築かれることでしょうな」
さらっとハードル上げてくる趙雲、やめて?
「うむ……そなたらの一層の働き期待しておるぞ」
「ははっ!」
「……孔伷様の御心のままに」
「されば孔伷様……、民がお言葉をお待ちしております」
呂布将軍、司馬懿、趙雲の順に発言、こいつら仲良しか。
「さあ、声を高らかに! 新たなる時代の到来を宣言してください!!」
司馬懿がここにきて急に目立ち始めてるけど、軍師軍団筆頭の荀彧はどこだ? 一緒に喜びを分かち合いたかったけど。
「そうだな……、ではゆこうか」
地平線を埋め尽くす……のは言い過ぎか、ひしめく民衆が数十万と城の下から遠い町まで集まっている。
――わあああああ!
――陛下ああああ
――孔伷様ァ! パワーオブラーブッ! アーンッ!
誰かあいつ捕まえろ! ごほん、気を取り直して孔伷さんのご挨拶。
「わしこそ孔伷……この中華に繁栄と安寧をもたらす者である……!」
――陛下ッ! 陛下ッ! 陛下ッ! 陛下ッ!
さあ、我が世の春を謳歌しようか――
『こうして中華を平定した孔伷……、その声望は高く、天下の民はこぞってその治世を歓迎した。旧悪を正し、法を改正し、産業を興し、治安維持に注力する……、孔伷の統治手腕により大陸は急速に活力を取り戻した』
内政チートをやっと発揮できそうだ。
――孔伷様が天下を治めてくださって本当に良かっただ
――あの方についていけばこれからも安心じゃ
巷の噂も問題ない。
『万民の幸せな声が中華全土に満ち溢れ、孔伷の名は、民に愛された中華屈指の名君として史書に記されることになった――』
孔伷さん、50歳で中華統一!! その後、孔伷さんが3年後に急逝し、武の呂布と知の司馬懿の二頭体制となり、やがて司馬懿の孫の司馬炎が国名を晋に変えて今の中国の時代まで変遷していくのだった。と、史書に記されることになるのだけど――
感想お待ちしております。
最後にエピローグ(ちょびっと)を更新します。




