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星76 勇者代理



 エルルカは思いつめた様に言う。


エルルカ「これしか、方法はないの」


 エルルカはその場にいる他の者達に指示を出す。

 つまり、彼等だ。


エルルカ「姉さんをお願い。……やって」

ローグ「仕方ないな」


 朝の騎士が動いて、ステラ達の身動きを止めたのだ。

 剣を突きつけられて地面に転がされている。

 気が付いたら、地べただ。

 何をしたのか分からない。

 これが彼の実力なのか。

 気が付いたら、ステラ達は床に倒れていた。


ステラ「どうして」

ローグ「悪いな。でも僕たちは占ってもらった彼女に借りがあるから」


 だからエルルカの言う事を聞いたと言う事か、彼らは最初からそのつもりで自分達をこの場所へ案内したらしい。


 床に仕込まれていたらしい、おそらく時を超える秘術とやらが発動する。


ステラ「エルルカ! 本当にそれで良いの!?」


 見つめる視線の先のエルルカは、悩んでいるようだった。

 迷いがありありと見て取れる。


ステラ「もう、……シェリカに会えないかもしれないのよ」

エルルカ「それでも、良い」

ステラ「どうして」

エルルカ「ステラには分からないわ。私の気持ちなんて、皆に価値が無いって笑われるくらいなら、誰にもできない立派な事をしたいって認められたいっていう、そんな私の気持ちなんて」

ステラ「っ!」


 ステラには剣の才能があって、それを認めてくれる人が周囲にいた。

 価値が無いなんて思いこむ事もあったけれど、それを否定してくれる人がいたのだ。


 だが、エルルカにはそんな人がいなかった。


エルルカ「姉さんはそんな事ないって言ってくれた。でも、駄目。私は私が情けなくて仕方がないの」


 エルルカには占いの才能がある。

 未来の事を知る事も立派な特技の一つだと思う。


 けれど、彼女がいた環境はそんな立派な特技を持っていても意味のない一族だったのだ。


 剣と共に生きる、剣守の一族だから。


ステラ「それで、も……」


 だが、だからと言って彼女の考え方を許容する事なんてできなかった。


ステラ「皆がエルルカの事を認めない方が間違ってるのよ。エルルカは凄いわ、だってこんなところまで私達を助けに来てくれたんだもの。私の言葉じゃ全然貴方の心には届けかないかもしれないけど、私は貴方が凄いと思ってる!」

エルルカ「ステラ……」


 エルルカの表情が揺れる。

 だが、それだけだ。


エルルカ「ごめん、なさい」


 彼女の決意を動かすことなんてできなかった。


 ステラには何もできない。


 だが……。


ツヴァイ「だっ、くそが!」

ステラ「先生!?」


 目に見えない不可視の力で押さえつけられていたと言うのに、

 組み伏せられて倒れた状態から立ち上がったツヴァイがエルルカを突き飛ばした。


エルルカ「きゃ!」

ツヴァイ「人を助けるのに理由なんているか。そいつを助けるのに同意なんて、いるのかよ。そんなもん助けてから考えりゃいいだろうがっ」

エルルカ「待って、駄目。それは私の役目……」


 ツヴァイは、どこからともなく取り出した剣を、朝の勇者が腰に下げているものと同じ剣を手にしていた。


エルルカ「それは……」

ツヴァイ「術の乗っ取りなんざ、勇者代理にすれば朝飯前だ」


 まさか、


ステラ「先生が勇者……?」

ツヴァイ「違ぇ、俺がそんなご立派なもんなわけねぇだろ。あくまで先代のユースの代理だ」


 ツヴァイはこちらを見て言う。


ツヴァイ「答えは出たか、ステラード。おそらく次の勇者はお前だ。お前は強い。強くなった。だから剣、あと何百年かしたらくれてやるよ」

ステラ「まっ……」


 待って。

 だがその制止の声は届かなかった。



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