星70 始まりの森
そんな風に双子達と生活して、一週間。
しかし穏やかな日々は終わってしまう。
豊かな森の恵みを求めて、資源の枯渇した村々から人が殺到し始めたのだ。
周辺の村々では最近作物が不作になっていて、状況が悪くなっているらしい。
だが、ステラ達がその人たちの姿を見る事は無い。
なぜなら……。
エルド「そういう連中は、入ってこれないようにしてるからな」
今は大樹の結界で迷わせて、それとなく外へと追い出しているというらしい。
木がそんな事ができるのか、という疑問はあるが。できるからにはできるのだと思う。
いちどその大樹というのを見に行ったが、本当に頭の中に喋りかけて来たくらいなのだから。
絵本の中の世界だった。
だが、そうやって森を守っている状況もいつまで続けられるか分からないという。
森の中には実りがたくさんある。
豊富な果物や、植物、薬草なども。
みなで平等で分け与えるべきだと双子は考えているが、追い詰められた人々の様子をみるに、どうも説得しようとしても無駄に終わりそうだと言う。
そうして、状況が変化していく中。
双子はとうとう決断した。
森の奥、大きな樹の前で集まる。
彼らはこの状況を解決するすべを知っているからだ。
ステラ「本当に、やるの?」
ステラはエルドとレシアに尋ねる。
レシア「ずっと前から、こういう時が来たらやろうって決めていた事ですから」
エルド「だから悲しむなよステラ。俺達は全然平気だからさ」
この場で一番の大人であるツヴァイに視線を向けるが、けれど彼は何も言わなかった。
エルドとレシアは、手を繋いで聖樹へと祈る。
すると、その体が淡く光って消えてしまった。
宙に、最後の光の粒が消えてしまうまでステラ達はそれを見届ける。
その場に残ったのは、数匹の聖霊と、魔物だけ。
彼ら双子は、そうやって体を変えてこの森を守る事にしたのだ。
エルドは魔物になって人々を森から追い払い、被害が及ばぬようにする役目を。
レシアは精霊になってその力で、間接的に人々の生活を少しでも豊かにするために。
それが、魔物と精霊がこの世界に誕生した瞬間だった。
彼らはそれぞれの役目を果たす為に、その場から立ち去っていく。
ステラ「寂しくなってしまいましたね」
ツヴァイ「ああ、そうだな」
双子が住んでいた家は好きに使っていいといわれたが、そんなものを残されると余計に悲しくなる。
ほんの少しまで四人がいた家は、急に広く感じられて、静かな場所になってしまった。
帰る方法はまだ見つからない。




