星68 過去の世界
ヨルダンの呪術の罠に嵌められた。
そう思ったステラは、その思考を最後に意識を失った。
そして……。
ステラ「ん……」
ツヴァイ「おい、おい。こら、しかりしろステラード」
ステラ「えっ?」
耳に飛び込んできた声。
それはしばらく聞いていなかった人の声で、私は飛び起きた。
目を開けた正面。
そこにいたのは、ツヴァイだった。
どこからどう見ても、ステラの知っている先生だ。
ステラ「うそ、先生。どうして。生きてますよね?」
ツヴァイ「これが生きてないように見えるか? 大丈夫か? 道端で倒れてたから驚いたぞ」
ステラ「え……?」
周囲を見回すと森の中だった。
鬱蒼と生い茂る木々が立ち並んでいる。
ステラ「ここは、王都の外の?」
森なんてどこも同じように思えるのだが何となくそう思った。
雰囲気が何となくあの森に似ているような気がする。
一人で目を覚まさなくて良かった。
パニックになっていたかもしれない。
ツヴァイ「お前も、ヨルダンの奴に呪術で飛ばされてきちまったのか」
ステラ「も……って事はもしかして先生もなんですか」
いや、それよりも前に考える事がある。
ステラ「飛ばされたって一体どういう」
ツヴァイ「聞いて驚くなよ、ここは過去の世界だ」
ステラ「過去!?」
それはさすがに無理な注文だ。
当然の様に耳を疑った。
ツヴァイ「たぶん千年かそれよりもっと前か……。勇者とかが出てくる絵本の中の世界、むかしむかしのおとぎ話の時代って言えば分かんだろ」
ステラ「えええ!」
いくらなんでもそれない、と思いたいがツヴァイの顔は至って真剣だった。
ステラ「本当に? 嘘、じゃないんですか」
ツヴァイ「嘘じゃねーよ。まあ、俺だって最初知った時は、お前みたく驚いたが」
ステラ「本当なんだ……」
証拠が欲しくて周囲を見回すが、生憎とそこは森。
何もそれらしいものは無かった。
そんな風に話していると、誰かの足音が聞こえてくる。
この足音は?
?「あ、起きたんだなその人」
?「良かった。目を覚ましたんですね」
やって来たのは、そっくりな見た目をした双子の兄弟だった。
女の子と、男の子。
雰囲気からして仲が良さそうだ。
エルド「初めまして、俺はエルド。横にいるレシアのお兄さんだ」
レシア「初めまして、私はレシアです、横にいるエルドの妹になります」
ステラ「ええと、はじまして……」
頭をさげられて、こんな状況でも微笑ましい心地になる。
何とも礼儀正しく挨拶されてしまったので、こちらも名乗らないわけにはいかなくなった。
エルド「へぇ、ステラって言うのか」
レシア「こら、エルド。駄目じゃない初対面の人を呼び捨てにするのは駄目って言ったでしょ!」
エルド「あ、つい」
レシア「もうっ」
何だろう。この双子の兄弟のやり取り。
何となく親近感が湧くやり取りだ。
負担同じ様な事をツェルトや先生に対して言っているからだろうか。
ツヴァイ「なんか、似てるよなこいつら、お前とほらツェルトに」
ステラ「先生もそう思いますか。って、私もですか?」
ツヴァイ「当たり前だろ。叱る口調と言い、タイミングといい、間の取り方と言い。案外お前の祖先だったりしてな」
そんな、まさか。
と、思ったがここが過去の世界だとするのなら、あながちありえなくはないのか。




