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星61 任務



 王都 中心部


ステラ「やっぱり本職の騎士って色々と違うのね」


 プロの騎士達の行動を前にしてステラは呟く。

 例によって例のごとく、試験をパスするために騎士団に頼み込んでその任務に突き合わせてもらったステラ達。


 学ぶ事は多く。

 一度だけと言う機会が惜しいくらいだった。


 悪さをした盗賊団の捕縛というのが内容だったが、市民に被害を出すことなく場を収めた手際は見習いたい。


ニオ「盗賊団の人達、あっという間にぼっこぼっこにしちゃったね」

ステラ「本当に、凄いわ。さっきの動き参考にならないかしら」

ニオ「ステラちゃんはいっつも真面目だね」


 出番ないまま終わってしまいそうだ。それでいいのだが、ステラ達の場合はそのままでは困る。


 何もできないと課題の点数に響くからだ。

 学生の身を弁えつつも、どれだけ本職の騎士の行動に貢献できたかが評価のポイントになるからだ。


 できればより多くの情報を得たいと騎士達の一挙一同を見つめ続け、何か力になれる事は無いかと考えるステラだったが、そんな様子を見るニオ達は少々疲れ気味だ。


ニオ「ちょっと緊張しちゃったな」

ライド「お、ニオちゃんでもそういう事あるんだ。へぇ、新鮮な」

ニオ「あったりまえでしょー。いつもと違って、ニオ達が何か変な事しちゃったら、一般市民さん達まで巻き添えになっちゃうんだから」

ライド「ああ、まあそうだよね。そういうとこ真面目なのねニオちゃん」

ニオ「精神的に疲れるって事があるとは思わなかったよー」


 物理的に動く量は大した事なかったが、別の面が大変だったらしい。


ツェルト「あー、ほんとにな。途中のあれとか、俺でもびっくりしたぜ。任務の最中に王族の人が見に来るなんて、そんなこともあるんだな」


 そんな会話に同意を示すのはツェルト。

 本日ステラ達が世話になっている騎士団の任務では少しだけ、特別な事が起こった。


 ステラの兄弟ともいう王族の人間が、抜き打ちの視察に同行してきたのだ。


ステラ「……グラウディスはあっちでも元気にやってるのよね」


 今の所、時代の王最有力候補であるグラウディス・グランシャリオ・ストレイドは一番上の兄だ。


 弱点が見つからないほどの完璧超人で、何事にも動じない鋼の心を持っている。


 あまりにも隙が見つからないせいか、そんじょそこらの悪口を言ってくる人間よりも近寄りがたく感じてしまう存在であった。


ステラ「……」


 グラウディスはステラの事に気が付いていたようだが、一言も言葉をかけてはこなかった。


 元より関わりの薄かった人間だ。それに関してこちらから言う事は無いが、気になる事があった。


ステラ「ヨシュアの事、聞きたかったけど。今の私は平民だし」


 弟であるヨシュアがやっている事を知っているのか、どうかなのか。色々と聞きたい事はあったのだが、ただの平民であるステラが話をするわけにもいかない。


ステラ「身分で困るなんて、またあるとは思わなかったわ」


 王族だった時は王族である事に不満を感じ、平民で会った事は平民である事に不満を感じている自分がいる。


 人間とは、手の届かない所にある物を、本能的に求めてしまう物なのかもしれない。


ニオ「あ、ステラちゃん。騎士団の人が手伝ってほしいって」

ステラ「ええ、分かったわ」


 ともかく今は課題だ。



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