星36 意外な人物
ツヴァイから聞かされた内容に驚愕する。
ステラ「呪いって、それに不死って……。本当なんですか」
ツヴァイ「間違いねぇよ。俺が以前見たそういう施設とそっくりなんだよ、ここは」
ステラ「こんな事……」
床の上で、いつまでも元気に跳ね続ける魚を見続ける。
許される事ではなかった。
命をそんな風に弄ぶのが呪術なのか。
ステラは知っている、怪我を治すのにどれだけの手間がかかるのか。
命が失われるとどれだけの人が泣く事になるのかを。
呪術は、その生を捻じ曲げさせているように見えた。
ステア「ひどいです。王都の騎士達は、知らないんですよね」
ツヴァイ「だろうな、放置されてんのが良い証拠だ」
ステラは零れ落ちた魚達をすくって、別の水槽へと入れてやる。
見つかっていないというのなら、ステラ達が栄えある第一発見者ということか、全然嬉しくないが。
ステラ「ほら、先生も手当てしてください。怪我してるでしょう」
ツヴァイ「ああ、別にこんなんほっときゃ治んだろ」
ステラ「私にもそう言うつもりですか?」
ツヴァイ「あー、悪かった」
ジト目で指摘してやれば、ツヴァイはさっさと治療に取り掛かっていく。
判明したのは、医者のくせにハンカチも持っていないという駄目っぷり。
ステラ「もう、自分の事になるとどうしてそんなに駄目なんですか先生は」
ツヴァイ「何だよ、お前が怒る事じゃないだろ」
ステラ「怒りますよ、心配しますよ。先生だって私の事心配してくれたでしょう。それと同じです!」
ツヴァイ「お前、ほんと言うようになったな。成長したって事か」
自分をほったらかしにして、どうなっても良いなんて、そう考えるのは好きではない。
それは以前の自分と同じだから。
ツヴァイ「しかし、まいったな。当てが完全にはずれちまった。この施設をどうこうするよりも前に、俺達がここで干上がっちまう」
ステラ「あ」
そうだ、精霊の力が借りられないのではここから出られない。
いつまでも森の中に閉じ込められたままだった。
ステラ「振り出しに戻ってしまいましたね」
これからどうしようと、途方にくれそうになる。
だが……。
?「心配は要りません。僕が責任を持て貴方達を外にお送りしますから」
そこに声をかけてくる者がいた。
ステラ達はとっさに身構える。
声が聞こえてきた方、部屋に利口にいたその人物は、ステラと都市の違わない少年だった。
部屋の外の明りで逆光になって良く見えない。
ステラ「貴方は?」
どこか、聞き覚えのある声に聞こえる。
ヨシュア「ヨシュアです。ヨシュア・グランシャリオ・ストレイド。王位継承者の七番目と言えば、分かるかと思います」
ステラ「まさかヨシュア!?」
それは、王宮の中でも比較的話をした事のある人間。
ステラの弟のヨシュアだった。
ステラ「本当に、貴方なの? どうしてここに?」
ヨシュア「それは後で。とりあえず、ここから出ましょう。この部屋の主が帰ってきてしまいます」
ステラ「主って……」
聞きたい事は色々あった。
話したい事も。
けれど固い表情でそこから出ていくようにうながしてくるヨシュアの迫力には、鬼気迫る様な物も感じていて、ステラ達は従わざるを得なくなった。
遺跡の奥だと思っていた場所から、隠し通路らしき小さな道を案内されてその奥へ。
そしてそこを抜けていくと、どういう仕組みになっているのか分からないが、森の中へといつの間にか出ていたのだ。
ヨシュア「ここから出て行けば、もう大丈夫ですよ。歪みの外へ出られたと思います」
ステラ「あの、ヨシュア。貴方もしかして」
悪い人達の手伝いをしているのではないか、そう思ったのだが、その口は人差し指で閉ざされる。
子供の頃に見た時と変わらない、儚げで優しげな笑みと言葉が返ってきた。
ヨシュア「大丈夫です、姉様、僕は僕です。信じてください。今は理由があって、ここの墓守をしていなくちゃいけない身なんです」
ステラ「墓守……?」
ツヴァイ「一つ聞かせろ」
話に割って来るのは険しい顔をしたツヴァイだ。
ツヴァイ「あの研究を進めていた人間は、どこまでやってんだ。魚相手にチマチマやってるなんて、そんなわけねぇだろ?」
ヨシュア「そうですね。そういうわけにはいかないと思います。僕はそういう場面は見ていませんが」
その会話から分かる事は、他にも呪いの犠牲となった物がいると言う事だ。
それが人間などではなければいい、とそう思う。
ツヴァイ「王宮には報告しない方が良いんだな」
ヨシュア「はい、今はまだ。僕達が動いていますので」
ツヴァイ「ちっ、腹黒狸の秘密主義者どもめ」




