星29 ステラの苦手
教室内
それからも課題には、他の良さそうな場所を選定して、二回、三回と足を運んだのだったが、全て無駄足に終わってしまった。
そうこうする内に夏の季節が終わろうとしている。
ツヴァイ「お前も大変だな」
教室に残って図書室から借りて来た資料を前に、遺跡の有りそうな場所に検討をつけているとツヴァイに声をかけられた。
ステラ「先生こそ、最近は何だかとても忙しそうですよね」
ツヴァイ「面倒でかなわねぇけどな」
ステラ「何してるんですか?」
ツヴァイ「あれだ、アクリキュールへの交換学生の選定だ。毎回あっちから一名、こっちからも一名選出せにやならんらしいんだが、未だに決まってなくてな」
ステラ「そんなに大変なんですか」
王都に慣れ親しんでいるステラからすれば、地方の学校との交換だなんて珍しくて仕方がないというのに、誰もやりたがらないのだろうか。
ツヴァイ「能力のない奴だしたって、名前が傷付くだけだって考えてんだろうさ。アホらしい。行きたい奴行かせりゃいいじゃねーか」
色々な大人の事情があるのだろう。
ツヴァイ「そういうアレなら、お前の名前を押した方が手っ取り早いんだろうけどな」
ステラ「私ですか?」
押す、と言う事は候補にすでに上がっていると言う事なのだろう。
自分の知らない間に話に上がっていた事に驚いた。
ステラ「先生は、反対する側なんですね」
ツヴァイ「当たり前だろうが。お前、あっちで何かあったらどうすんだよ」
ステラ「そう、ですよね」
ちょっと行ってみたかったので、少し残念だ。
地元しか知らないので、まだ見ぬ遠い地の景色には少し憧れてしまう。
だが、まあ本人の許可も取らず、勝手に候補にされるのは嫌だったのでこれでいいのだろう。
ステラ「王都の外にある町、一度行って見たかったんですけど」
ツヴァイ「お前、ひょっとして王都から出た事ねぇのか?」
ステラ「そんな事はありませんよ。学校の試験だってあるのに」
ツヴァイ「そりゃそうだな。つーことは、それ以外でって事か。行かねぇのかよ」
ステラ「外に出る理由ないじゃないですか。大抵のものは王都の中で手に入りますし、田舎じゃないんですから」
ツヴァイ「それにしたって、お前。あれからどんだけ時間が経ってると思って……」
ツヴァンと会わなくなってからかれこれ七年ほどになる。
それだけの時間があれば、いくらでも機械はあっただろうと、ツヴァイはそう言うのだが……。
ステラ「だって……」
ステラはその理由を言いよどむ。
ステラ「王都の周りには、森があるじゃないですか」
ツヴァイ「……そういう事かよ」
小さい頃に森の中で魔物に襲われてから、森に近寄れなくなってしまったのだ。
それが原因で医者である先生と知り合ったのだから、悪い事ばかりではなかったが、どうにも苦手は治らない。
学校生活の時なら大丈夫だ。
けれど、ただの市民として近寄るのは、無理だった。




