星26 呪い
私は孤独だ。
頑張らなければ誰からも必要とされない。
誰からも……。
私に価値なんてないのだ。
だから、もっと頑張って、頑張って、頑張らなくてはいけない。
そうしてずっと頑張って役に立つところを見せて、価値があると言う事を証明し続けなければ。
そうしなければ私は……。
ツヴァイ「おい……、起きられるか」
いつのまに目覚めていたのか分からない。
目の前にツヴァイの顔があって驚いた。
ステラ「せん、せい?」
ツヴァイ「急に倒れやがるから驚いただろうが」
ステラ「すみま、せん……」
体を起こそうとするが、だるくて妙に重かった。
熱でもあるのだろうか。
額に手を当ててみるが、そんな感じはしない。
ぼうっとしてたら、ツヴァイにベッドに押し戻された。
大人しく寝ていろと言う事らしい。
ツヴァイ「じっとしてろ。お前最近頑張り過ぎなんじゃねぇのか?」
ステラ「そんな事」
ツヴァイ「毎日授業後に訓練室に何時間も入り浸ってるらしいな。何でも、あのクソおう……生徒会の奴の息がかかった猛獣と剣の訓練にあけくれてるとか」
今何言いかけたんだろう。
猛獣とは、多分レイダスのことだ。
言われた通りだった。
ステラは最近よく訓練場に赴いている。
ステラ「知ってたんですか?」
ツヴァイ「耳に入って来たんだ」
ツヴァイはこちらの顔を見つめて、そしてはあっとため息をついた。
ツヴァイ「ばぁか」
そしていきなり罵って来る。
ステラ「な、なんですか」
ツヴァイ「お前、何か悩んでんだろ」
ステラ「ど、どうしてそんな事」
一瞬の狼狽を気づかれないように取り繕うのだが、ツヴァイにはそんな演技もお見通しらしかった。
ツヴァイ「ずっと調子悪そうにしてやがるし、いつもより勤勉だった」
ステラ「それって、良い事じゃないんですか」
ツヴァイ「ああ、そうだろうな」
勉強に真面目になったとも言えるんだから、別に悪い事ではないと思うのだが。
ツヴァイ「けど、なんか違うんだよ、お前のそれは」
ステラ「違う?」
ツヴァイ「そうしたいからそうしてるんじゃねぇ。そうしないといられないっつう感じでな」
ステラ「……」
ツヴァイ「図星か」
これ以上隠している事はできなさそうだった。
ステラ「そう、なんです。私、ちょっと変みたいなんです。なんか何かしてないと落ち着かない感じがして。焦ってる……に、近いけど、それよりちょっと違う感じがして。今までこんな事になった事がないのに、どうしてなのか分からないんです。いつの間にか……」
ツヴァイ「それは、あれかこの間のパーティーの後からか」
ステラ「はい……」
ツヴァイは難しげな表情で、黙り込む。
そして、何かを思ったのか不意に立ち上がって、ベッドの脇に置いてあったらしい荷物袋の中から短剣を取り出した。
柄の部分に流線の模様がいくつも入った、波紋の意匠のある短剣だ。
その剣の鞘をぬいて、刃が鈍く光る。
そんなはずはないのに、なぜだかその様子がひどく恐ろしい物に見えて来て、私は、思わず身じろぎした。
ありえない。
一瞬でも先生に切られるかも、なんてそんな事。
ステラ「せ、先生それは……?」
ツヴァイ「俺の剣で遺物だ。とある事を調べるために、持ち歩いてるんだが……さてどうなる事か」
ツヴァイはステラの手を取って、こちらの指の腹にちょんと刃先を押し当てた。
ステラ「っ」
ツヴァイ「痛くしたか? 悪かったな。これで終わりだ」
真っ赤な血の珠が出来上がって、触れた剣の刃に触れる。
その血は、見る見るうちに色を変えて紫に染まっていった。
ステラ「これって……」
どういう事なのかと問いかければ、ツヴァイは答えた。
ツヴァイ「こいつは呪いに掛かった人間の血の色を変える剣だ。お前に呪いがかかってるみたいだな」




