星20 標的
遠くから眺める分には、普通に会話しているようにしか見えない。
だか明らかにステラは相手への接し方に戸惑っているようだった。
ツヴァイ「ちっ、あいつ馴れ馴れしくしてんじゃねーよ」
カルネ「ふふ、ステラは良い先生を持ったのですね」
ツヴァイ「俺が良い先生とやらだったら、他の人間はどうなんだよ」
ステラの友人とやら、しっかりはしているが少々目が悪いようだった。
ツヴァンが立派に見えるのは、世も末だろう。
カルネ「ステラからよく聞きますよ。素敵な方だと」
ステラ「あいつは目がおかしいんだよ」
ツヴァンが人に褒められるような人間ではないことぐらい、自分が一番よく分かっている。
カルネ「昔のステラは、今のステラ程人に心を許していませんでした。でも、それを貴方が何とかしたんでしょう?」
ステラードが大変だったその場にたまたまツヴァンがいただけの事だ。マシな人間があの場に居たら、自分と同じ事をしているはず。
賞賛の言葉に居心地が悪くなる。
と、そんな風に会話をしていると不意に会場が暗くなった。
カルネ「停電?」
ツヴァイ「っ、ステラード……!」
慌てて駆けつけようとして、カルネの傍を離れられない事に気が付く。
頼まれている事を投げ出してまで、駆けつけるわけにはいかない。
まだ、そうと決まったわけではないのに。
ツヴァイ「っ……」
歯がゆさに唇を噛みしめているとカルネが動いた。
ステラがいた方向へ向けて動き出していく。
ツヴァイ「おい」
カルネ「私が傍にいれば、貴方は気にせずともよくなるのでしょう」
ツヴァイ「だがお前は」
カルネ「ステラの信じた貴方の腕を信じます。急ぎましょう」
確かにそれなら、二人共目が届く。
危険に晒してしまう事になるという引け目はあるが、義理は果たせる。
ツヴァイ「悪いな。」
急いでステラがいた付近に直行。
だが、それらしい人の気配は無かった。
ツヴァイ「どこだ、ステラード」
移動したのか。
この暗闇の中で、ひょっとして奴が何かをしたのか。
だとしたらどこに……。
ツヴァイ「外か」
会場の外に出る。
扉を開けると、遠くに走り去っていく人影の様な物を見た。
一瞬だったが、確かに見た。
その人物が抱えているのは……。
ステラだ。
追いかけていく。




