星18 どこか違うありふれた困りごと
カルネがツヴァンに話したのはこうだ。
至極ありふれた話で、どこにでもよくある事。
珍しくもない事だろう。
けれど彼女の場合は、そのありふれた話とは何かが違っていたのだ。
弱い立場の貴族を庇って対立する貴族に目をつけられ、細かな嫌がらせを日常的に受けていたカルネだが、彼女は少々の事では屈しない強い精神を持っていた。
そのはずなのに、そんなカルネが部屋から出なくなってしまったのは、自分では対処しきれない問題に膨れ上がってしまったからだ。
カルネ「その貴族達の意を組んだ者が、暴走し始めたのです」
関係のない第三者が、カルネに嫌がらせをし始めたのだと言う。
それでも、まだ最初の方は何とか、自分で事を収められていた。
それができなくなってしまったのは、襲われたからだ。
ツヴァイ「あぁ? 穏やかじゃねぇな」
ステラ「カルネは、凶器を持った不審者に追いかけられたんです」
ツヴァイ「そりゃまた……」
見世物に使うような着ぐるみを来た不審者に、血まみれの包丁を向けられたカルネは、何とかその場にいた他の者達の尽力もあり、怪我を負う事なく場を離れられたのだが、それからもそんな危ない話が後を絶たなくなったのだ。
ツヴァイ「そりゃ、外に出たくもなくなるな。さっきは悪かったな」
カルネ「いいえ」
何もなくとも視線を感じる様になったりして、命の危険を感じる事が多くなったので、外出を控えざるを得なくなったのだと言う。
ツヴァイ「……で、だから、ステラードが付いてやるってわけか。お前、自分もあれだって事分かってんのか?」
ステラ「わ、私の事は良いんですよ。今はカルネの方が危ないんですから」
ツヴァイ「どうだかな。お前はお前で危なっかしい所があるからな」
ステラ「もう……」
と、カルネはそんな様子を見て不思議そうな表情をする。
カルネ「ステラにも何かあるのですか」
しまったと思う。
そうだ、こちらの事は隠していたんだった。
ただでさえ大変な状況にいるカルネに心配はかけたくなかったから。
ステラ「ええと」
ツヴァイ「こいつはこいつで、変質者に狙われてんだとよ」
カルネ「そんな。そんな大変な時に、我が儘を言ってしまったのですね私は。すみませんステラ」
ツヴァイ「そいつは的外れな心配だな。こいつが馬鹿なだけだ」
取り成してくれたのは良いが、その言い方はないだろう。
どうして素直に言えないのだろう。この人は。
それからはとりあえず三人で固まって行動する事にした。
華やかなパーティーの空気など味わえたものではない。
ステラ「迷惑をかけてしまってますけど、付いてきてくれたのが先生で本当に良かったわ」
カルネ「信頼されているのですね」
ツヴァイ「馬鹿言え、こいつは俺になついてるだけだ」
ステラ「子供みたいな事言わないでください。信じてるんです」
ツヴァイ「そっちこそ、子供みたいな物言いしてんじぇねぇか」
だが、知り合い同士のお喋りは楽しくて、それだけでも来て良かったと思った。
ツヴァイ「腐った貴族連中ばっかじゃなくてちゃんとした仲間もいるみたいだな」
ステラ「いますよ。いるに決まってるじゃないですか」
ツヴァイ「はは、そのセリフ、昔のお前に聞かせてやりてぇくらいだな」
ステラ「――っ、ほんっと、意地悪ばっかりなんだから」




