星14 贈り物
ステラ「ご、ごめんなさい」
謝って、その場を離れようとするが、そのまま喋っただけでその場を離れるのも失礼かと思い直す。
並べてあるものをざっと眺めた。
ステラ「私のお小遣い、どれくらいあったかしら」
小遣いと言ったが、一般家庭のようにお金をもらっているわけではない。
外に出た時や屋敷に珍しい商人がやって来た時くらいに、好きな物を買う様に与えられた資金全般の事で、実は自分で管理しているわけではないのだ。
お店の品物をもう一度見てみる。
いつも見るものより、明らかに値段が下の物ばかりだ。
血筋が血筋な物だから、目利きはある程度鍛えられている。
眺める分には、そのお店で売っている商品なら、どれもお金がなくて困るなんてことは無さそうだった。
ステラ「先生ごめんなさい、ちょっと見てっていいですか?」
ツヴァイ「あ? 別に俺の許可なんて取る必要ないだろ、お前の為の外出なんだから。お姫様の好きすればいいだろ」
店長「おやおや、お姫様扱いなんて、良いですねー。お客さんは良いお父さんを……お父さん? いや、お兄さん?」
ツヴァイ「こんなでけぇ子供持った覚えはねぇよ」
まだそんなに年はいってないとかツヴァイと店番の女の子が話し込んでいる内に、ステラは並べられている商品を眺めていく。
必要そうなものはそれなりに置いてあった。
ステラ「決まりました」
ツヴァイ「もうか? 早いな」
ステラ「これと、これ下さい」
ツヴァイ「あ? そいつは」
車いすに座っているので、棚に手が届かないので指を刺してほしい商品を告げると、少女は「毎度あり!」と、元気の良さそうな笑顔になって包装にかかる。
ツヴァイ「ステラード、本当にそれでいいのか? もっと他に良いもんあるだろ。お前の選んだもんってどれも地味じゃねぇか」
ステラ「駄目でしたか、一番収納に困らなくて使い勝手が良さそうなものを選んだつもりなんですけど」
ツヴァイ「ああ?」
店長「はいはーい。お待たせー。はいどーぞ」
ステラ「ありがとう」
包装されたそれを、ステラードは目の前にいるツヴァイに差し出した。
ステラ「これ、受け取ってください、今日のお礼です」
ツヴァイ「はぁ? おいおい」
ステラ「先生最近、道具を入れるバッグが痛んできてるって言ってたから、代わりになる様なものを選んだんですけど、どうですか」
ツヴァイ「ガキにプレゼントされるとか、俺が恰好悪ぃだろう」
喜ばれる事を期待して贈ったのだが、ツヴァイは渋い顔をして黙り込んだ。
ひょっとして、良くないものを選んでしまったのではないかと、不安に駆られる。
ステラ「こんなの、要りませんでしたか」
ツヴァイ「いや、いる。物はねぇから、必要だろ。最近は忙しくて好きに買い物なんてできねぇしな。俺が言いたいのは、そうじゃねぇんだ。そうじゃねぇ」
一応プレゼントは受け取ってくれるらしいが、どうしてツヴァイがそんな反応をするのか、ステラにはさっぱり分からなかった。
懸命に考えてもまるで理由が思いつかない。




