過去のお方に泣けてくる
感触を確かめる様に、書き上げた魔導書に繰り返し魔力を通していたじいちゃんが、不意に呟いた。
「………これは 魔導書界が激変するかもしれんな‥‥」
ん??そこまで大ごと?
「お~あの?(そうなの?)」
「多分な。何しろ魔法言語は まだ七割くらいしか解読できてないからな」
へっ??そうなの!!?
‥‥いやいや冗談キツいよ じいちゃ~ん
こんな歴史がありそうで よく使われてそうなもんの研究が、そんなんしか進んでない訳ないじゃないの~~
「うしょ~~(うそ~~)」
「いや本当なんだよ。
一気に進んだのはここ数年だぞ。
昔から生涯賭けて解読してたような学者はいたんだが、いかんせん見つかってる魔導書が似たような文例の数パターンに偏っててな」
あ~なるほどサンプル不足か~、前世でもそういう言語あったなぁ
「しかもな、全然違う文章なのにソックリな効果のもんやら、同じ単語が入ってても全然違う魔法のやらがあって、単語の意味すら掴みきれてなかったんだよ」
‥‥‥ん?………え~~っと‥‥
ん~~‥例えば‥‥前世なら‥外国の人が読んでも、霙・風花・銀世界がみんな雪に関するものとは思わないだろうし、
血ダルマ・火ダルマ・雪ダルマ、同じダルマでも 全然意味が違う感じ‥‥かな?
「でも何年か前に見つかった遺跡から、古い文献が結構出てきたらしくてな。
中には魔法に関係ない 普通の生活に使われていたらしい文章もあったみたいで、それでググッと解読が進んでなぁ。
だから1単語魔導書なんかが作れるようになったんだよ」
なるほどそういう経緯があったんかぁ~~
「出てきたときは あっちこっちの国やらなんやらで奪い合いになったらしくて、凄まじかったって聞いてるぞ。
今は解読競争の真っ只中みたいだな」
‥‥うわぁ 何か血生臭そぅ‥‥
ところで なんやらって何だろ?
そんな感じで相づちを打ちながら聴いていると
「‥‥しかしこんな形で悲願が叶うかも知れんとは‥‥」
じいちゃんがポソリと呟いた
「ひあん?(悲願?)」
「あっ、悲願って言っても魔導書研究者らの悲願な。
過去の模倣じゃないオリジナルの魔導書の作成だよ。
解読競争も殆どそのためにやってるようなもんだ」
えっ‥‥チョット待って、それって
「まさか解読が、要らん努力かも知れんとはなぁ‥‥」
‥‥‥生涯を賭けた学者さんが不憫過ぎる‥‥‥草葉の陰で泣くんじゃないかな‥‥‥
このアプローチが完璧かどうかはまだ分かんないけど、十中八九 大丈夫そうだし‥‥‥
「まったく文献の争奪戦は何だったんだか」
‥あ~~そっちもあったねぇ~‥‥
命賭けの切った張ったが要らん努力じゃ、死んでも死にきれんわなぁ‥‥
‥‥‥この世界に幽霊がいたら、自分 祟られるんじゃないかな‥‥‥
「後、魔導書が安くなるかも知れんな」
些かしょっぱい心模様になっていたところ、じいちゃんは意外な話題の切り替えをした。
「あんで?(何で?)」
「ん?何でだと思う?」
へっ!?いや聞かれても‥‥




