祖父の心に火が灯る
「ちょっと試して見てもいいか?」
興味深そうな顔でそう聞いてきたじいちゃんに、【hi】の魔導書を渡す。
その切れっ端をしげしげと眺めて……
………ボッ‥‥
「……おおぉ‥‥」
魔力を通したじいちゃんは やっぱり驚いた様子だった。
すると、おもむろに背を向けたかと思うと、さっきの空き箱をこっちに持って来て ひっくり返して置き
「そーいう面白そうな事は 俺もやりたいなぁ」
凄い楽しそうにそう言いながら、箱の上に表紙の硬い本を乗せ
「全く ちょっと前に1単語魔導書なんて出た時は、実入りは悪いわ 面倒くさいわで かなわんと思ったもんだが、まさかこんな面白いことに繋がるとはなぁ」
箱の前に座り込みつつ、目を輝かせてそう続けた。
あ‥じいちゃん 何かのスイッチが入ったみたいだ
しかし 十中八九そうだと思ってたけど、魔導書写すのって 仕事でやってたんだなぁ。
じいちゃんは先ず 置いた本を下敷きにして、
こちらと同じように、切れっ端に【hi】と書いた。
魔力を通せばあっさり成功、流石じいちゃん。
「ん~‥‥何で誰も気付かなかったんだか………」
切れっ端を手に、不思議そうな表情で一人ごちたじいちゃん
‥‥ホントにね。‥‥こっちも聞きたいよ‥‥
「先入観かねぇ………」
‥‥あ~そっかぁ‥‥それはあるかも‥‥
でも実は 他にも一つ、ローマ字のがない理由だろうなぁって事に心当たりがあって‥‥
魔導書が魔法言語に縛られないと解ったじいちゃんは、 次なるステップに足を踏み入れた。
“単語”から“文章”へ
だがそこに、自分がもう一つの理由と 当たりを付けているものがあった。
ろくろく読めない魔法言語なら、ある程度一定に魔力を込め続けるのは さして難しくはない。
が、しっかり読めちゃうローマ字となると話は別、単語ごとに どうしても魔力にムラが出てしまって
名詞や助詞で強くなったり弱くなったり‥‥
特に助詞で弱くなるのが悪さをしてる様で、
切れっ端で実験してるときも、ジッ!!っと音を立てて穴が空いたり、パン!と魔力が弾けて千切れて飛んだり‥‥何枚も何枚も‥‥
………ジッ!!
あっ、じいちゃんも やっちゃったかぁ‥‥
やっぱりなぁ‥‥
「おぉ………これはなかなか難しいな……………ハハハハ」
あれっ?‥‥じいちゃん何か妙な笑いを浮かべてるよ‥‥
二枚三枚と、ジッ!とやるじいちゃん
さて、こっちも何かやろうかと思ったそのとき………
………ボボボッ!!‥‥
炎が三つ現れた………
…………うそ‥もう成功しちゃったよ‥‥
……………凄ぇ‥‥じいちゃんスッゲェ!!!
「しゅごい!!いーちゃん しゅごい しゅごい!!!(凄い!!!じいちゃん 凄い凄い!!!)」
「おぉぉ‥‥そうか?」
「ん!いーちゃん あっき~よ~~!!(うん!じいちゃんカッコイイ~よ~~!!)」
「ハハハ、まぁじいちゃん 元魔法研究者だからなぁ」
「お~~ しょ~あんあ~、しゃすあ~~(お~~ そうなんだ~、流石~~)」
「まぁ、魔導書は専門じゃなかったけどな」
ズコッ
なんか心の中でズッコケた‥‥
イヤ待った‥‥専門じゃないのに、こんなに達者に出来るなんて………
やっぱじいちゃん凄い!!!
にしても じいちゃん研究者やってたんだぁ、 確かにそんな感じするなぁ
‥‥杖無しの魔法、ケガしてでも覚えてたもんなぁ‥‥‥
何か、すっごいしっくりくる‥‥‥‥